(2000年4月、在ネパール大使館)
<プロジェクト概要>
援助形態 |
無償資金協力 |
協力年度 |
94年度、95年度 |
協力金額 |
11.08億円 |
相手国実施機関 |
水資源省灌漑局、公共事業運輸省道路局 |
協力の内容 |
頻発する水害に対し、住民参加によってフトン籠を用いた河川整備等を実施することを支援するため、フトン籠用の鉄線を供与する。 |
<評価要旨>
1.効率性
財政や技術力が不足する現状を踏まえると、住民により実施される本事業は比較的安価で施工性に優れており、現地の技術レベルにみあう最適な手法といえる。また、各実施個所において、一定の成果が得られているとともに、住民参加が、防災教育にも役立っている。
2.目標達成度
供与資材が所定の目的通り使用されており、2年間で総延長約400kmに及ぶ水制、護岸整備が進んだこととなり、水害、土砂災害の軽減、人命・財産の保護に十分機能を果たしている。地域住民からも、地域住民の生活安定に大きく寄与していると評価されている。また、間接的に、防災意識の向上、雇用創出などの効果が見られる。
3.インパクト
GDPの約4割を占める農業生産に多大な損失を与えている水害、土砂災害を防止することにより、農業生産の安定を図り、社会・経済全般に貢献している。また、土地流失に伴う新たな最貧困層の発生を抑制している。各地方事務所に対しても、毎年多数の要請があり、プロジェクトやその効果が十分に認識されていることがわかる。
4.計画の妥当性(プロジェクト選定・形成の適正度)
持続的経済成長、貧困の軽減及び地域間格差の是正を柱とする当国計画に対し、本案件は、農業生産の安定、最貧困層発生の抑制等、主要目標に沿うものであり、被援助国の開発ニーズに合致している。また、本案件は現地調達可能な玉石の活用と住民自らの設置を前提とした資材供与であり、現地の技術水準にも合致する。ただし、住民の要請に基づき実施しているため、規模、範囲、サイト選定、事業効果などの点で改善の余地がある。
5.自立発展性
住民参加方式による河川工事の実施は、本案件及び過去の類似案件により、着実に軌道にのり、灌漑局の主要施策の一つとして定着しており、灌漑局地方機関により自立的に運営されている。
6.環境及びWID(開発における女性)への配慮・影響
本案件では、大規模な地形改変を伴わず、設置する施設も、植生・生態系を維持することが可能なものであり、環境への影響はきわめて少ない。そのため、環境アセスメントを必要としない。また、ジェンダーの問題は見られない。
7.将来ほかのプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされるべき事項
住民の要請に基づく事業実施は、コンセンサスの形成や教育効果の点で有効である一方、規模・範囲、サイト選定などをわが国が直接確認することが困難であり、両者のバランスが重要である。