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技術協力事業における
マルチ・バイ協力評価

1.評価対象テーマ:技術協力事業におけるマルチ・バイ協力評価
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2.国名:
 アジア地域:ラオス、ベトナム、カンボジア
 アフリカ地域:タンザニア、ザンビア
3.現地調査実施期間:2003年10月26日~11月17日
4.評価調査団:
アジア地域 : 後藤 有右 アースアンドヒューマンコーポレーション取締役
青山 温子 名古屋大学大学院医学系研究科教授
アフリカ地域 : 十津川 淳 (有)アイエムジ- パ-トナ-
西田 良子 (財)ジョイセフ国際事業部長
アドバイザー: 鈴木 良一 (財)ジョイセフ事務局長補
石井 澄江 (財)ジョイセフ事務局次長
5.評価の目的:
 わが国の技術協力事業におけるマルチ・バイ協力(保健医療分野および人口・家族計画分野)の現状を総合的かつ包括的に評価し、これまでの成果・課題を抽出する。評価結果からマルチ・バイ協力の効果を把握し、UNICEF/UNFPAの両国連機関とのマルチ・バイ協力について、今後、より効果的かつ効率的な連携・協力を進めていくための提言・教訓を導き出す。
6.評価結果:
 本評価調査では、「理論」、「プロセス」および「効果」の3点について評価を行った。UNICEF、UNFPAが有する専門性や被援助国での経験・信頼、政治的中立性、資機材調達の比較優位性等の特質を活かした「二国間協力」の効果的・効率的な実施を通じて被援助国の保健医療及び人口・家族計画の状況改善と向上並びに予防接種体制の自立、家族計画実行体制の自立を目指すマルチ・バイ協力は一定の成果を上げている。
(1) プログラムの背景にある"理論"の妥当性
(イ) ミレニアム開発目標をはじめ、WHO予防接種拡大計画(1974年)、国際人口開発会議(1994年)等の世界的潮流に合致。
(ロ) マルチ・バイ協力の目的は、ODA大綱の重点5項目の一つである「地球的規模の問題への取組み」、「基礎生活分野」に合致。
(ハ) 初めてワクチン、避妊具(薬)等の消耗品供与を可能としたこと、国際機関を通じてワクチン等の安定的調達経路の確保、これまで実績の少なかったリプロダクティブ・ヘルス分野における援助の質の向上と量の拡大などが実現し、他のバイスキ-ム、マルチスキ-ムに対して比較優位性を有している。
(2) プログラム実施の"プロセス"の妥当性、効率性
(イ) UNICEF連携マルチ・バイ協力においては、長年の実績を経て、ワクチン投与計画に関する計画策定は、ドナー調整会議等において行われており、現地レベルでの計画策定過程も妥当である。実施体制は、長年の実績の上に各国で策定が義務付けられている予防接種拡大計画5ヵ年計画に沿ってほぼ確立されており、効率性は概ね良好である。ただし、1998年から始まった「母と子供の健康対策」については、2001年度までに8ヵ国で実施されているが、その体制はまだ十分に確立されていない。
(ロ) UNFPA連携マルチ・バイ協力においては、「案件形成時に日本、相手国、UNFPAの協議が十分にされていない」と指摘する声が高い。また、援助限度額(2,000万円)の割に総じて調整や手続きに関わる事務量の膨大さ、各スタッフへの負担が指摘されている。現地調査を実施した5ヵ国のうち4ヵ国で、調達の遅れ(半年~1年半の遅れ)、調達上のミスなども報告されている。
(3) プログラムの"効果"の有効性、インパクト
(イ) UNICEF連携マルチ・バイ協力:現地調査国においては、全体のワクチンの多くが本スキームによって供与されており、特にベトナム、ザンビアにおいては、ワクチン接種率は非常に高いレベルに達しており、マルチ・バイ協力が各国レベルの目標達成に大きく寄与していると判断できる。
(ロ) UNFPAとの連携:定量的な評価は困難であったが、定性的な情報では、タンザニア、ザンビアにおいて、機材供与およびそれに伴う保健サービスの種類の増加によって、人々の保健施設に対する信頼感が増し、妊産婦や乳幼児の保健施設へのアクセス向上につながったという結果を得た。これらは「リプロダクティブ・ヘルスサ-ビスへのアクセスの向上」というアウトプット目標に結びつくことを示唆するもの。
7.提言:
(1) UNICEF/UNFPAの両連携マルチ・バイ協力に共通する事項:日本外務省・各機関の本部レベルでの政策対話のさらなる充実や現場レベルの役割の明確化と実施体制の体系化のほか、日本外務省とUNICEF/UNFPAによる合同評価の実施、裨益国の自立発展にむけたシナリオの策定が必要である。また、セクターワイドアプローチや地方分権化への対応も重要となる。
(2) UNICEFとの連携:他分野におけるモデル的協力の可能性の検討やさらなる選択的、集中的供与の実施などが考えられる。
(3) UNFPAとの連携:カントリープログラムへの位置付けによる効率性の向上、資機材品目や対象国数を絞った選択的・集中的供与への転換およびUNFPA現地事務所のキャパシティ向上に伴う技術的比較優位性の活用などが挙げられる。


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