1.テーマ:モザンビーク国別評価 |
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2.調査対象国:モザンビーク | |
3.評価チーム: (1) 評価主任:大野泉 (政策研究大学院大学 教授) (2) アドバイザー:矢澤達宏 (敬愛大学 准教授) (3) コンサルタント: 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 |
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4.調査実施期間:2008年6月~2009年3月 | |
5.評価方針 (1)目的 イ.日本の対モザンビーク援助政策を全般的に評価し、国別援助計画策定を含む今後の援助政策立案及び援助の効果的・効率的な実施に資するための教訓・提言を作成すること。 ロ.評価結果を公表することを通じて国民への説明責任を果たすとともに、モザンビーク政府関係者や他ドナーに評価結果をフィードバックすることで、今後の同国開発の参考に供し、かつ日本の援助の広報に資すること。 (2)対象・時期 モザンビークに対する国別援助計画は策定されていないところ、過去2度の日本・モザンビーク政策協議(1994年、2007年)における合意事項を基本政策として分析し、日本の対モザンビーク援助政策ととらえて評価した。対象期間は、「政策の妥当性」は、最初に政策対話が行われた1994年以降の日本の対モザンビーク援助政策を中心に評価を行い、「結果の有効性」と「プロセスの適切性」は、2000年以降に交換公文が締結されたODA事業を分析対象とした。 (3)方法 外務省ODA評価ガイドライン第4版(2008年4月)に準拠し、主に対モザンビーク援助の「政策の妥当性」、「結果の有効性」、「プロセスの適切性」の観点から総合的に分析し、今後のモザンビーク国別援助計画策定に向けて提言を行った。 |
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6.評価結果 (1)「政策の妥当性」に関する評価 日本の対モザンビーク援助は、「国別援助計画」が策定されていない状況下で、過去2回の政策協議(1994及び2007年)で定めた重点分野や実施された援助案件に鑑みて、日本の上位政策やモザンビークの開発ニーズにおおむね合致しているといえる。日本の対アフリカ外交政策と位置づけられる、過去4回のアフリカ開発会議 (TICAD)で打ち出された開発課題と日本の重点分野についても整合性がある。日本が、2008年5月に開催されたTICAD IVで示したアフリカへの支援方針は、モザンビークの開発の現状や今後の課題とも整合的である。また、日本の援助は他ドナーの支援内容とも相互補完性があり、適切である。 (2)「結果の有効性」に関する評価 日本の重点支援セクター(農業・農村開発、教育、保健・医療、給水・衛生、道路・橋梁)における開発目標の進捗・達成状況はセクターによって若干のばらつきがあるものの、社会指標にも改善の傾向が見られ、日本の援助は全体として有効な結果を出している。日本の特徴(無償資金協力インフラにおいては技術力、技術協力においては人を介した援助、青年海外協力隊による草の根レベルでの人的サポート)をいかした援助が実施されており、モザンビーク政府側はこれを日本の強みと指摘している。また、同政府はインフラ、経済セクター、人材育成といった分野での日本の支援を高く評価しており、現場での地に足のついたきめ細かい支援や、質及び確実性の高い日本の援助に対して謝意が示されている。 (3)「プロセスの適切性」に関する評価 2007年の政策協議を契機に日本とモザンビーク政府間の連携・協力関係が飛躍的に強化され、先方のニーズや日本の重点分野に沿った案件を効果的に形成・採択することができるようになった。さらに、2008年以降も要望調査のサイクルに沿った年次政策協議を実施していくことが両国間で合意され、2008年については5月に実施されている。援助形態を越えた事業展開計画(ローリング・プラン)が担当者ベースの執務用資料として試行的に作成され、包括的な観点から開発ニーズに対応した支援が実施できるような仕組みが整ってきている。援助形態間の有機的な連携・協力を念頭に案件形成が行われ、プログラム化が図られた複数の事例が優良案件として先方政府関係者から指摘されている。その一方で、案件採択プロセスでは日本側の調整・意思決定について、より迅速で柔軟な対応を求める指摘があった。援助協調に関しては、現地ODAタスクフォースで分担して数多くのドナー会合に参加しているが、人員の制約や援助協調に伴う業務量の多さを踏まえると、いずれの会合の議長も務めていないが、先方政府及び現地ドナー側から能動的な関与を期待する声が寄せられた。 |
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7.提言 (1)援助の戦略化 イ. 日本の対アフリカ支援におけるモザンビークの位置づけを明確にすべき。 ロ. 日本の外交的観点からもTICADプロセスのモデルとして、TICADIVの成果を実施すべき。 ハ. ODA事業予算を活用して、発信力強化や援助協調に取組む体制づくりをすべき。 (2)重点分野・対象地域についての考え方及びリソース配分の再整理 イ. 経済振興への支援にも取組むことに伴い、開発の負の側面(地域間格差・環境問題等)への配慮を強化すべき。 ロ. 日本の特徴や強みをいかした、メッセージ性のある援助に取組むべき。 ハ. 支援対象地域の検討では、プログラム化や地域開発支援等も意識すべき。 ニ. アジアでの協力経験や現場経験に基づき、政策レベルへの関与を強化すべき。 (3)援助実施プロセス・現地機能の強化 日本は、メッセージ性の強化の観点から人材配置、政府及びドナー政策との対話への参加、案件の優先順位付けや採択を行っていくべきである。 イ. 援助協調へのメリハリある取組を目指すべき。 ロ. モザンビーク政府関係省庁との更なる対話の強化を図るべき。 |
注)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。