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モンゴル・教育セクターに於けるODA評価

1.テーマ:「初等教育施設整備計画」及び「草の根・人間の安全保障無償資金協力(教育施設の改善案件)」に対する評価  
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2.国名:モンゴル
3.評価者他:
 モンゴル大蔵省援助政策調整局ムンフオルギル職員
 モンゴル教育・文化・科学省対外関係課ムンフジン職員
 調査実施コンサルタント:MON-EDUC CO.LTD
4.調査実施期間:18年3月3日~31日

5.評価方針

(1)目的
 日本のモンゴルに対する教育分野への支援を客観的に把握し、総合的かつ包括的に評価し、今後より効果的かつ効率的に実施していくための提言を導き出すとともに援助国及び被援助国の国民に対して説明責任を果たすことを目的とする。

(2)対象
 一般無償資金協力「初等教育施設整備計画」で施設が整備された16校及び「草の根・人間の安全保障無償資金協力」のうち「教育施設の改善案件」が実施された学校及び施設8件

(3)方法

(イ) 第一段階
 評価の枠組みを確定し、それに基づき関係機関へのインタビューを実施する。
・モンゴル国援助受け入れ窓口である大蔵省には、(a)国家開発計画、(b)PRSPの入手、(c)教育省との関係、 (d)案件によるインパクト等
・教育省には、(a)案件選定時の協議、案件実施時の状況及び実施後の維持管理状況、問題点、将来計画、(b)関係役所との関係、(c)案件によるインパクト、(d)他ドナーにおける教育セクター支援の概要等
・関係官庁(UB市教育局、地方教育局)には、(a)案件選定時の協議、案件実施時の状況及び実施後の維持管理状況、問題点、将来計画、(b)関係省庁間の関係、(c)案件によるインパクト
・日本大使館およびJICAには、援助方針等に関して調査を行う。
(ロ) 第二段階
 評価の枠組みを念頭におきつつ、各案件サイトにおける実地調査(一般市民(父兄、生徒等)、学校関係者からインタビュー)
・「初等教育施設改善計画」
 現地のニーズ、実施プロセスの適切性、教育環境の改善状況、効果、インパクト等
・「草の根・人間の安全保障無償資金協力」
 現地のニーズ、実施プロセスの適切性、教育環境の改善状況、効果、インパクト等の聞き取り
(ハ) 第三段階
 収集したデータ・情報を分析し、モンゴル大蔵省及び教育・文化・科学省からの評価をとりまとめ報告書を作成・提出

6.評価結果

(1)目的の妥当性
 モンゴル政府の中期的な主要開発戦略として「政府行動計画」と「人間の安全保障のためのグッドガバナンス」、さらに政府行動計画を実施するための「経済成長と貧困削減政策」(EGSPRS)があり、基本的な目標としての基本方針と部門毎の政策から成り立っている。基本方針では「教育と文化の保護・尊重」が掲げられており、部門毎の政策では「社会政策」の中で、「基礎教育と職業訓練の提供」が掲げられている。また、モンゴル政府は、中期教育開発計画「モンゴル国教育セクター戦略2000~2005年(1999年策定)」において、教育施設不足の解消を主要項目の一つに掲げていることから目標に合致している。
 我が国の政策では、ODA及びODA中期政策で人材育成や基礎教育の重要性が掲げられている他、対モンゴル国別援助計画の4つの重点分野の一つに「市場経済を担う制度整備・人材育成に対する支援」が掲げられており目標に合致している。

(2)策定・実施の適切性
 モンゴル政府(大蔵省、教育・文化・科学省)、関係官庁(ウランバートル市教育局、地方教育局)と日本政府との間で要請と調整に係るプロセスを経て、ニーズの高い場所に新しい校舎が建設、増築・改修工事が行われた。また、他ドナーとの調整が行われた結果、重複はなく事業が実施された。

(3)インパクト
 「初等教育施設整備計画」及び「草の根・人間の安全保障無償資金協力」とも、支援対象となった学校幹部、教員、職員、生徒の父兄等の調査対象者にインタビューを行った結果、約80%は、支援計画は成功裡に実施されており、「良い」(問題なし)と評価した。
(イ)学校に通える生徒数が増加した。
(ロ)教室数が増加し、3交代制の授業が減少した。
(ハ)3交代制の減少による教員の負担軽減から、教育の質が向上した。
(ニ)1教室当たりの生徒数が減少し、劣悪な学習環境が改善された。
(ホ)生徒、教員の学習・勤務意欲が上昇した。
(ヘ)近くに学校ができたこと、3交代制が減少したことにより、通学時における子供の安全性が改善された。
 以上のとおり、生徒や教員等のソフト面に与えたインパクトが大きく、ほとんど全ての学校の調査対象者から、状況は改善されており、計画に対する評価は総合的に高いとの回答を得た。

7.提言

「初等教育施設整備計画」に関する提言
 特に首都であるウランバートル市においては、急激な人口増加による学校施設の不足が問題となっているところ、初等教育施設整備に対する支援は現地の社会的ニーズに沿ったものとして評価できる。支援に対するニーズは引き続き高いところ、今後に向けて都市部への人口流入に関する詳細な調査が必要であると考えられる。

「草の根・人間の安全保障無償資金協力(教育施設の改善案件)」に関する提言
(1) 資金の供与を受けた後、被供与団体が施工業者と契約する際、施工管理や維持管理の体制を充実させる必要がある。
(2) 上記(1)に関連して、建設業者が購入した資材の質、量、金額を該当地域の新聞、掲示板、インターネットなどに公表し、業者が適切な質の資材を適切な価格で購入しているかを地域住民が監視し評価できるように、要請者と建設業者の実行契約書に公表を義務づける項目を設け、建設業者に実行させる必要がある。
(3) 計画の枠内で建設及び改修作業の実施及び機材提供を担当する機関(業者)を選択する際の入札結果等を公表する必要がある。
(4) 計画が実施される学校が、どのような基準で選定されるかを公表し、該当地域住民が納得できるようにすることが必要である。
(注) 資金の供与を受けた後、被供与団体が施工業者と契約する際、施工管理や維持管理の体制を充実させる必要がある。


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