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マレーシア・クアラ・ルンプール新国際空港建設事業

1.評価対象プロジェクト名:クアラ・ルンプール新国際空港建設事業
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2.国名: マレーシア
  実施機関名:マレーシア国際空港公団
3:援助形態: 有償資金協力 94年度、615.18億円
4.評価実施機関名: 在マレーシア日本国大使館
5.現地調査実施期間:2001年4月
6.プロジェクトの分野:運輸・交通
7.政策目的又は政策の方向性:
 経済基盤整備、不足している経済インフラの整備
8.当該プロジェクトの目的:
 スバン国際空港が1997年中にその容量の限界(1,450万人)に到達する見込みであったことから、クアラ・ルンプール中心部から南方約50Kmに位置するセパンに、2003年から2005年の旅客需要(予測値2,500万人)に対応する目的で新国際空港を建設した。なお、当該プロジェクトは、国家開発計画である第6次及び第7次マレーシア計画(1991~1995、1996~2000)の中で最重要計画と位置づけられていた。
9.評価結果:
 当初の計画通り、10Km四方の敷地に滑走路2本、管制塔、エプロン、旅客ターミナルビル等の空港主要設備、更にその他道路などの周辺インフラ整備からなる新国際空港(KLIA)が建設され、現在、順調に運営がなされている。
 需要予測は、1991年までのデータ(1991年880万人)を基に、1995年1,290万人、2000年2,010万人とされた(BAA(英国空港公団)の予測手法を参考に、旧OECFが予測)。しかし、実際の旅客数は、1995年1,254万人、1997年1,582万人、1998年638万人(新空港)+813万人(旧空港)、1999年1,278万人(新空港)+200万人(旧空港)であり、予測値を下回っている。これは、1997年に始まるアジア経済危機の影響により、需要が予測ほど伸びなかったことが原因である。
 事業の効果に関しては、実際の利用数が予測を大きく下回ったものの、1997年時点で既に旧空港の限界容量(1,450万人)を上回っており、1998年に経済危機の影響で一旦需要は減少したが、その後、旧空港と新空港を併せた利用客数は再び増加に転じている。今後の経済の回復とともに、更に利用客の増加が期待されることから、効果は十分にあったと言える。
 ちなみに、新空港ターミナル・ビルは、日本人建設デザイナー黒川紀章氏の設計によるもので、国際航空運輸協会(IATA)が1999年に実施した調査によると、世界57の主要空港中、ビジネス客の満足度で4位、全旅行客の満足度では3位に位置づけられ、高い評価を受けている。また、2001年4月に公表された英国の航空業界調査機関スカイトラックス・リサーチの調査で、KLIAは、「世界で最も良い空港」の2位に選ばれた。
10.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点、政策的な観点からの提言):
 近年、マレーシアにおいては、KLIAの他、港湾についてもクラン港やタンジョン・プラパス港のように地域のハブを目指す大型インフラの整備が続いている。マレーシア国内においては、このような巨大インフラが「点」として整備されており、現在、これらを結ぶ「線」すなわち、道路、鉄道の整備に力点が置かれつつある。
 また、マレーシアでは観光産業が製造業に次ぎ、外貨獲得のための重要な産業となっている。今後は、新空港の整備を足がかりとして観光産業の育成も支援していくことがマレーシアの経済発展には有効であると考えられる。


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