(1) |
草の根無償援助は2000年度で85億円、2001年度で100億円を超える見込みである。一般無償資金協力に比べると1件当たり援助金額も上限5,000万円で、通常は1千万円以下が一般的で非常に小さな金額である。しかし、「日本の顔が見える援助」として相手国国民のなかに広く浸透し、日本への信頼感を醸成するという点でその費用対効果はずば抜けて高い。したがって、日本政府は今後、戦略的な観点から草の根無償援助を大いに活用すべきである。 |
(2) |
対象分野と援助対象団体を含めたガイドラインの明確化 |
(イ) |
草の根無償プログラムやプロジェクトを発掘する時の基本コンセプトの明確化。たとえば持続的な発展が見込まれること、自立、自助努力の顕在、政府政策の恩恵が及ばないもの、「貧困救済」、「社会的公平」に寄与できるもの、社会的な裨益効果の高いもの、「人間重視」の精神を充足できるもの--といった基本的な援助コンセプトの提示が求められる。 |
(ロ) |
対象分野の具体的な明示。案件発掘は必ずしもプロの専門家とは限らない。現地採用の人に委託することもあるので、でき得る限り分野別に対象分野を具体的に明示したほうが効率的で効果的である。 |
(ハ) |
対象団体の性格の明示。外務省は対象団体を途上国のNGO(国籍問わない)、地方自治体、教育・医療機関など草の根レベルの社会経済開発プロジェクトを実施している団体であることとしているが、あまりにも漠然としている。たとえば、民間の学校法人、医療法人、協同組合などの対象範囲を具体的に提示すべきである。また、NGOについても、その資格を厳格に提示してほしい。 |
(3) |
在外公館の対応能力の強化-人材確保 |
(イ) |
案件の発掘形成能力を引き上げるために在外公館と専門家派遣、青年海外協力隊やシニア海外ボランティア派遣業務を所掌する在外JICA事務所との連携強化を図ること。特に青年海外協力隊員には案件の発掘形成を義務づけることを提案したい。それは、また青年海外協力隊員の現地での存在感を一層高めることにもなる。 |
(ロ) |
案件発掘形成の外部委託制度の確立。現地の社会事情に精通する現地の人を採用して案件発掘等を委託する制度が存在するが、それは人件費の節約にもつながるので、こうした制度をさらに拡充するとともに東京からの専門家の派遣等を含めた改善策を検討すべきである。 |
(ハ) |
草の根無償援助専門員制の導入。わが国の大学院で国際開発や地域研究を専攻した卒業生にキャリアパスを付加する意味もあって、在外公館で発掘形成の補助スタッフとして採用することも期待される。別名「草の根無償協力隊」と呼ばれるような制度を確立してもらいたい。 |
(ニ) |
在外公館で草の根無償援助を効率的・効果的に処理していくために、手続きの簡素化とともに本省の権限を在外公館に大幅に委譲すべきである。 |
(4) |
草の根無償援助を補完する技術協力の必要性
草の根無償援助は基本的に草の根レベルで裨益効果のある経済社会開発プロジェクトの施設建設や機材供与が支援の中心になっているが、多くの被援助国では案件を持続的に発展させていくために、小さな草の根的アドバイスや技術協力を求め始めている。特に、単発のプロジェクトでなく、各プロジェクトを統合したプログラム型の草の根無償援助の場合、その必要性はますます高まるものとみられる。 |
(5) |
草の根無償援助とわが国NGOとの連携
草の根無償援助は本来、途上国で草の根的なプロジェクトを展開しているNGO活動を支援することであるが、途上国では残念ながらまだ良質のNGOが育っていない。そこで、専門性を有するわが国NGOと連携して、案件発掘形成から案件の維持運営、人材育成までの役割を託す仕組みをつくる考え方もある。わが国のNGOを採用すると案件への担保性が高まる一方で、わが国の国際NGOの育成にも役立つ。わが国と現地NGOとの連携案件を一定期間、パイロット的に支援する草の根無償援助も考えられる。 |