(1) |
日本側の援助実施体制の現状及び問題点 |
(イ) |
カザフスタン側の開発計画と対カザフスタン援助計画
カザフスタン(今年が独立10周年)は、我が国のエネルギー外交上重要であり、中央アジア・コーカサス諸国に対するシルクロード地域外交の重点国である。現在、カザフスタン側の中長期開発戦略「2030年までのカザフスタンの長期発展戦略」等の文書はあるが、必ずしも明確になっているわけではない。他方、我が国の対カザフスタン国別援助計画は策定中であり、1994年度以降2000年度までの間に有償資金協力約674億円(2000年度まで主として運輸インフラ関連の案件が多い)、無償資金協力約35億円、技術協力約46億円、合計約755億円(年間約125億円)が実施されている。なお、JICA及びJBICは2000年度にそれぞれ国別事業実施計画、国別業務実施方針を策定している。
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(ロ) |
援助に関する政策対話
大使と閣僚レベルの対話は行われているが、1998年11月以来、本省出張者を含む日本側とカザフスタン側の実務レベルの政策対話が必ずしも充分に行われていないように思われるところ、一層強化する必要があろう。
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(ハ) |
日本大使館の体制。
(a) |
在アルマティ日本大使館の体制
日本大使館の経済協力班担当者は2名であり、ODAと直接関係の無い組織からロシア語も専門ではない出向者が担当している現状にある。最近のODAの事業規模に鑑みれば、JICA事務所がないため、相当の業務をこなさなければならないのが現状となっている。この点、ウズベキスタンにはJICA事務所が設置されており(駐在員2名をはじめ常駐者5名)、大使館にはJBICからの出向者も配置されているのと比較すると極めて対照的で、人的体制が手薄である。国際協力銀行(JBIC)との密接な調整が図られることが望ましい。 |
(b) |
首都アスタナにおける日本側の体制
カザフスタン政府機関はアスタナに全て移転(1997年11月)し、国際機関のカントリーオフィスも移転しつつある。日本側、他のドナーに先駆け出張駐在官事務所を設けたものの、書記官1名と経済貿易省にODAアドバイザーとして長期専門家1名がJICAから派遣されているのみである。 |
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(ニ) |
ドナー・コーディネーション(援助供与国間調整)
主要国及び国際機関が非公式な意見交換を定期的に(月1回程度)実施しているが、各ドナー国、国際機関の現状の活動報告にとどまっている。 |
(ホ) |
使用言語の問題
アスタナ市小児病院医療器材整備計画の事例であるが、プロジェクト実施に際し、言語の障壁の問題がある。ロシア語を解する人が多いのにも拘わらず機材に貼付されるODAロゴマークは、英語版を使用していた。また、供与機材の保守連絡先(JICS: Japan International Cooperation System=日本国際協力システム)に関する掲示も英語のみであり、受入側職員に充分理解されていない。さらに研修等においてロシア語専門用語に堪能な通訳の数が限られており、十全な効果があがっていないような例が見られた。 |
(2) |
カザフスタン側援助受入体制の現状と問題点 |
(イ) |
交換公文(E/N)、借款契約(L/A)、討議の記録(R/D)
交換公文(E/N)等がサインされると、援助に係わる国際的なスタンダード(援助プロジェクトに関する機材、専門家などの非課税処置など)に沿って、すぐに援助が実行に移される。
しかしながら、今回、カザフスタン側の説明によれば、交換公文(E/N)に定められている内容や借款契約(L/A)、討議の記録(R/D)が議会承認を必要とするとのことであり、E/N等がサインされても相当の間議会承認が得られないために援助プロジェクトがタイミング良く実施されないケースがある。この遅延問題の背景には、援助受入機関である経済貿易省・外務省などと、国家歳入省との間で、関税、所得税等の免税問題についての対立がある。カザフスタン側は、何らかの「包括的な協定」により個々の交換公文等の議会承認を不要にし、援助がより円滑に行われるようにしたい意向である。(なお、カザフスタンは技術協力に関する協定を米国、ドイツと締結している。) |
(ロ) |
援助窓口関係機関の調整
援助窓口が一本化(一つの役所が窓口となって援助の実施に係わる手続きがすべてその役所と交渉すれば実施できる体制)されていない。形式上は、外務省がまとめ役になり、経済貿易省がこの中心的役割を担っているが、財務省、国家歳入省も援助に関係しており、他省庁との関係で調整が必ずしも充分でない。国連開発計画(UNDP)、世界銀行(WB)からも同様の指摘があった。 |
(ハ) |
運営保守予算
アスタナ小児病院を視察しただけであるが、カザフスタン側の供与機材に対する運営保守予算が充分ではないように感じられた。 |