1.現地調査国:タンザニア、ベトナム |
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2. 評価チーム: (1)評価主任 (2)アドバイザー (3)コンサルタント
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3. 調査実施期間:2009年6月~2010年3月 | |
4.評価方針: イ.政策レベルのODA評価における提言を分類化・体系化することによりODA全体の評価及び改善のための指標を導出する。 ロ.提言のフォローアップ状況を確認・点検し、提言の有効性を検証、必要があれば問題点を解明するなどして、実施可能な提言の在り方について掘り下げた検討を行う。 ハ.上記結果をとりまとめた上で、政策レベルのODA評価における提言に関する改善提言を行うとともに、それらの提示の仕方等について方向性を提示する。 (2) 対象 2000年度から2007年度に外務省が実施した48件の政策レベルODA評価(国別評価及び重点課題別評価)。 (3)調査手法 調査は、(a)48レビュー対象評価報告書の分析、(b)対象年度の経済協力評価報告書および外務省内対応方針の分析、(c)外務本省関係各課インタビュー、(d)ケーススタディ国(タンザニア、ベトナム)での現地調査、(e)在外公館対象アンケート調査、(f)外務本省関係各課対象アンケート調査、(g)集団討議の7種の手法を用いて実施した。 |
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5.評価結果 (1)評価報告書の提言の質、提言の実現状況、実現に影響を与える要因 本調査は、2000年度から2007年度までに実施された48件の政策レベルのODA評価(国別評価及び重点課題別評価)を対象に実施した。評価報告書から整理された提言総数は412であった。 提言の実現状況に関しては、「実現した」、「おおむね実現した」、「ある程度実現した」の合計が、提言総数の70%にのぼり、大半の提言が何らかの形で実現していることがわかった。ただし、「ある程度実現した」については、提言の実現に向けて何かしらの行動がなされているものを幅広く含んでいる点に留意して理解する必要がある。 評価報告書のフィードバックの在り方に関しては、政策策定の時期との関連から大半の評価が適切なタイミングで実施されてきたと判断できる(「適切」~「ある程度適切」の合計が75%)。在外公館での評価報告書の利用に関しては、回答率は60%であったが、回答があった範囲ではよく利用されていることが確認された。 評価報告書の活用の好例としては、今回現地調査を実施したタンザニアが挙げられる。タンザニアでは、現地大使館が主導するODAタスクフォース及び外務本省の双方において、国別評価報告書(2005年)を活用することが確認され、最終的に国別援助計画(2008年)に提言がよく反映された。大使館の担当者が代々引継いでいる執務ファイルには、同報告書が“バイブル”とラベルづけされて保存されていた。 また、同様に今回現地調査を実施したベトナムでも、2001年度の国別評価報告書の提言の多くは2004年度の改定版国別援助計画に反映された。2006年度の国別評価報告書の提言についても、2009年度の改定版国別援助計画に反映されたものもあったが、提言の内容が「ODA実施の手法」に関するものが多く、また、それら提言が具体性を欠いていたため、こうした提言については実現したかどうか明確な結論に至らなかった。 提言の実現に影響を与える「内部要因」としては、(a)政策策定とのリンク(評価実施のタイミング)の適切性、(b)提言を実現するための資源の利用可能性、(c)外務省の組織的な対応姿勢(柔軟姿勢は促進要因だが、統一方針が決定されない場合には制約要因となる)、(d)属人的要因(本省・大使館トップのリーダーシップの有無)が大きく影響を与えていることが特定された。一方、「外部要因」としては、(a)援助協調対応への国際的圧力、(b)被援助国の政策立案の動向や政情変化、(c)国際的な合意への対応圧力、(d)日本における環境変化(行財政改革の影響)が特定された。 (2)総合評価 外務省が行う政策レベルのODA評価は、上記のとおり評価報告書でなされた提言がかなりの高率で実現していることもあり、現状はある程度満足できる状況であると結論できる。ただし、評価と提言の質を更に高め、評価結果をより政策に反映し、より効果的に広報・フィードバックを実施していくために、改善すべき点は多数あると言える。 なお、今回のレビュー調査を通じて、「具体的で実現可能性が高い提言」が望ましいという結論に達した。「具体的」とは、(a)何をすべきか明確である(ただし(i)政策・戦略の方向性に関して明確であることと、(ii)援助手法や手続きに関して明確であることはその性格がおのずと違うことに留意)、(b)誰がすべきか明確である(宛先)、(c)いつまでにすべきか明確である(期限あるいは優先順位)の3点である。さらに、「実現性が高い」とは、(a)現地の援助ニーズに基づいている、(b)専門知識に基づいている、(c)利用可能な「資源」(援助資金、援助人材、援助スキーム・体制)を十分に踏まえている、の3点であり、別の言い方をすれば、これらの点に基づいたりあらかじめ検討したりすることにより実現性を高めた提言が望ましいということである。なお、すぐに実現可能な提言だけでなく、現場の援助ニーズや専門知識に基づいてはいるがすぐには実現できない提言(言わば「数歩先を行く提言」)も、あるべき援助を長期的に導くという意味で意義が大きい提言だと言えるので、臆せず提言すべきである。また、事前に策定された政策が実現したかどうかを評価するわけではないが、専門知識を有する専門家としての観点を含め、知見を別途まとめて記載することも考えられる(「団長所感」などの名称で挿入する)。 | |
6. 提言 (1)提言の質を高めるための改善提言 イ.提言は4つの領域(ドメイン)に分けて策定する。 *なお、上記4つの領域以外の提言(相手国政府、国際機関宛など)がある場合は、別途、スペースを設けて記載する。 ロ.提言の「優先順位」及び「宛先」を可能な限り明確に付記する。 ハ.提言は可能な限り、評価結果の根拠、対応の方向性、具体的な対応行動の3段階で記載する。 ニ.提言策定作業は、まず評価者が原案を作り、外務本省担当者・大使館担当者の参加を得て実現可能性を吟味した上で、評価者が最終決定する。 (2)評価結果の質を高めるための改善提言 イ.客観的な評価結果を導出するために、目指すべき成果を一覧にまとめた「目標体系図」の作成を政策策定時に行う。 ロ.わかりやすい評価結果を導出するために、「総合評価制度」(5段階評価等)を導入する。総合評価が困難な場合には各項目の評価結果を一覧表で示すこと(プロファイルという)も考えられる。 ハ.新しい課題に対応した評価の手続きを整備する(ODA評価ガイドラインを改定する)。 (3)提言をより政策に反映させるための改善提言 イ.国別援助計画の策定作業との連携を強める(i)。 ロ.分野別イニシアティブに関して、外務省としての政策として明確に位置付けて策定することとし、評価との連携を強める(ii)。 ハ.複数の評価報告書で見られた共通の提言については、外務省としての統一した対応方針を検討して決定し、今後の評価においてはその実現状況の確認を必ず行う。 (4)評価結果の効果的な広報・フィードバックを実現するための改善提言 イ.1年間に行われた評価結果の概要を一覧にして全公館に周知するとともに、特に関係の深い公館には評価報告書の現物を送付する。 ロ.評価結果を関係者に広報するための各種の工夫を実施する(報告書の構成の工夫、現地報告セミナーの実施など)。 |