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対インドネシア国別評価調査

1. テーマ:インドネシア国別評価
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2. 国名:インドネシア
3.評価実施者
(1)評価実施者:
  盛  信博((株)コーエイ総合研究所)
  三島 一夫((株)コーエイ総合研究所)
  石井 徹弥((株)コーエイ総合研究所)
  小暮 孝範((株)コーエイ総合研究所)
(2)監修者:
  長田 博(名古屋大学大学院国際開発研究科教授)
  高千穂 安長(玉川大学経営学部国際経営学科教授)
4.調査実施期間:2003年7月22日~2004年3月31日
5.評価の目的
 第一の目的は、インドネシアに対するわが国の援助政策全般を総合的にレビューし、わが国援助政策を、(1)目的、(2)プロセス、(3)結果の3つの視点で分析・評価することにより、今後のより具体的な案件実施の指針となる対インドネシア国別援助計画の策定及び効率的・効果的な援助の実施に資する教訓・提言を得ることにある。
 第二の目的は、上述の評価結果を外務省ホームページへの掲載も含めて国民に開示することで、説明責任を果たすことにある。
6.評価結果
 評価対象期間中(1996年度-2002年度)、スハルト大統領からワヒッド大統領へ、さらにメガワティ大統領への政権交代にみられるようにインドネシアの政情は不安定化した。経済面では、1997年のアジア経済危機が波及し、インドネシアは深刻な経済危機に直面した。インドネシア政府は、IMFの指導のもと経済・金融構造改革に着手した。1999年以降、インドネシア経済は穏やかな回復傾向を示しているが、インドネシアでは、第6次5ヵ年開発計画(1994~1999年)の後、新国家開発計画(2000~2004年)が実施されている。
 わが国の「対インドネシア国別援助方針」は、(1)公平性の確保、(2)人造り・教育、(3)環境保全、(4)産業構造の再編成、(5)産業基盤整備、を援助の重点分野(重点5分野)としている。また、経済危機を受けて2001年には、(1)マクロ経済の安定のための支援、(2)各種改革の推進に対する支援、(3)経済ボトルネックの解消等緊急ニーズへの対応、が新たな重点課題(3本柱)として定められた。
 1996~2002年度におけるわが国のインドネシアに対する援助額は、累計で11,278.8億円であった。その内訳を見ると、有償資金協力が9,866.3億円、無償資金協力648.7億円、技術協力763.9億円となっている。インドネシアにとってわが国は、世界銀行、ADBと共に最大の借款供与国となっており、2001年度ベースでインドネシアはわが国二国間ODAの第1位の受取国となっている。
 本評価では、わが国の対インドネシア援助政策を、外務省の「ODA評価ガイドライン」に則り、(1)目的、(2)プロセス、(3)結果の3つの視点で評価した。

(1)目的の評価結果
 対インドネシア国別援助方針(重点5分野及び3本柱)の目的が、上位政策にあたる「(旧)ODA大綱」及び「ODA中期政策」に示された指針に合致したものであると確認された。また、対インドネシア国別援助方針がインドネシアの開発計画を踏まえたうえでインドネシア政府との協議を通じて策定されたものであり、その支援内容も開発計画と整合していることから、開発ニーズを適切に反映したものであると評価できる。その他、JICA・JBICによる相手国省庁との対話を通じて開発ニーズの把握に努めており、総じてインドネシア側の開発ニーズはわが国の援助方針に反映されていると評価できる。
 但し、目的の妥当性に関しては、(1)対インドネシア国別援助方針では対インドネシア援助の目的が明示されていないこと、(2)1994年にインドネシア側と合意された重点5分野と2001年に追加された3本柱との関係が明確でないこと、(3)重点5分野に含まれているサブセクターのなかには結果として重要性が低いものが含まれていたこと、などの課題が指摘できる。

(2)プロセスの評価結果
 対インドネシア国別援助方針は、わが国援助実施機関の国別事業実施計画(JICA)、国別業務実施方針(JBIC)に反映されており、案件形成プロセスの中でも案件採択の基準として同方針が参照されていることが確認された。また、経済協力政策協議の場において重点分野の妥当性に係わる議論が行われるなど、インドネシアの開発ニーズの変化に対応するプロセスも採られたことが確認された。但し、いつどのような形で援助の重点分野を見直すのかの基準が予め定められていなかったことは課題として指摘できる。
 無償資金協力のうち約4割が技術協力との連携がなされているなど援助スキーム間の連携がみられる。但し、計画当初から複数の援助スキームを組み合わせたセクター単位の包括的な援助協力は農業分野以外では行なわれておらず、各スキーム間の連携によって得られる効率的・効果的な援助のメリットを考慮すると、今後更に各スキーム間の連携は促進される余地があると考えられる。他ドナー・国際機関との調整・協調に関しては、わが国はインドネシア支援国会合(CGI)の場において調整を行なっている。対インドネシア援助政策の基本方針については、わが国と他ドナー・国際機関との間で一定の調整が行われているものと考えられるが、案件実施レベルでの協調については限定的となっている。より効率的・効果的な援助を実施するためには、今後のさらなる調整・協調を他ドナー・国際機関と図っていくことが必要であると考えられる。

(3)結果の評価結果
 わが国のインドネシアに対する援助政策の効果については、分野ごとに効果を評価するための代表的な開発指標を設定し、その指標の推移から分野ごとに対して供与されたわが国の援助全体の効果を評価することを試みた。インドネシアは1997年に経済危機に直面し、マクロ指標は押しなべて急激な悪化をみせたが、その後インドネシア経済の回復に伴ってマクロ経済も改善傾向を示している。対インドネシア国別援助方針に従って供与されたわが国の援助の動向を検討すると、定性的にみればこうしたインドネシア経済の回復及び指標の改善に貢献したものと考えることができる。但し、わが国援助の貢献度を指標に基づいて定量的に把握することは困難であった。
7.提言
 インドネシアは日本にとって最も重要な援助対象国の一つである。このインドネシアの安定と発展(繁栄)に効率的かつ効果的に貢献していくためには、重点分野を選定し、効率的・効果的に目標が達成できるような最適アプローチによって援助を実施していくことが求められる。
 今回の政策評価を通じて確認された援助政策上の課題を解消するためには、1)開発ニーズの変化に柔軟に対応できるように開発ニーズをくみ上げる体制を強化する、2)援助政策をより体系的なものにし、重要分野ごとの目的を明確にして開発目標・指標を設定する、3)効率的・効果的な援助が可能となる場合には援助スキーム間の有機的な連携や他ドナー・国際機関との連携によりフレキシブルな案件の形成・実施を行う、の3点が重要であると考えられる。
 以上の観点から、わが国の対インドネシア援助政策に対して以下の5点が重要であると考える。
 (1)開発ニーズをくみ上げる体制の強化
 (2)具体性のある「目的」と「目標」の設定
 (3)包括的援助計画の策定
 (4)有機的な援助スキームの組み合わせ
 (5)わが国援助のプレゼンスと影響力の確保
注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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