1. 評価対象テーマ:地球温暖化対策関連ODA |
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2. 国名及びプロジェクト:
地球温暖化対策に関連するODA案件を対象とする政策的評価を実施。ケーススタディとして、インドネシア国(グレシック火力発電所1・2号機建設計画)および中国(湖北省鱗木育種計画、漢江上流水土保持林造成機材整備計画、日中友好環境センター)を対象とした。 |
3.評価調査団:
小河 誠 (株)野村総合研究所 上級コンサルタント(団長)
日比 保史(株)野村総合研究所 副主任コンサルタント
皆川 佳代(株)野村総合研究所 副主任コンサルタント
天野 宏欣(株)野村総合研究所 コンサルタント
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4.調査実施期間:2002年2月22日~3月29日 |
5.評価の目的:
我が国は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の理念の下、様々な地球温暖化防止対策を国内外で展開してきており、国際協力分野では、1997年に発表した「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」の枠組みの中で、「京都イニシアティブ」として1998年度から2000年度までの3年間に、計8,670億円規模の地球温暖化対策関連ODA(以下、温暖化対策ODA)を実施している。また、地球温暖化対策推進大綱(2002年3月改正)においては、「優れた技術力と環境保全の蓄積された経験を背景に、国際協力を通じて世界の取組の先導的役割を果たしていく」としており、今後の開発途上国への地球温暖化分野での積極的な貢献を表明している。
本調査では、我が国の今後の温暖化対策ODAのあり方への教訓を導くことを最終目的とし、地球温暖化対策の視点に重点を置いた政策レベルでの評価を、入手可能なデータを利用したインプット分析を中心に実施した。評価項目として、(1)妥当性、(2)有効性、(3)インパクト、 (4)持続性の4項目を採用し、地球温暖化の視点を基軸に、ISDの視点および納税者の視点も含めた形で総合的に評価した。但し、評価対象である温暖化対策ODAは、地球温暖化対策を第一目的と位置付けて実施したものではなく、結果的に地球温暖化対策に貢献している案件がほとんどである。このため、温暖化対策としての目標達成度や有効性を定量的に評価することが困難である点に留意する必要がある。 |
6. 評価結果:
(1)妥当性
・ | 地球温暖化対策は、温室効果ガス(以下GHG)の排出を直接削減する「削減」、GHGを森林などによって吸収させる「吸収源」、そして温暖化による影響に社会を適応させていく「適応」の三種に大別される。我が国の温暖化対策ODAは、これらの分野において幅広く取り組んでおり、概ね妥当であると評価できる。但し、適応事業については、今後どのような事業が求められるかを検討していく必要があるといえる。 |
・ | 温暖化対策ODAの地域配分は、金額ベースで見た場合、中国、インドネシア等アジアの国が際立って多くなっている。これは、我が国のODA政策におけるアジア重視の基本方針を反映した結果であるが、温暖化の視点から見ても当該対策を早期に実施すべき国と概ね合致しており、妥当性があると評価できる。 |
・ | 日本の外務省ODA案件は、「被援助国政府からの要請を基本としていること」、「現地大使館が、JICA/JBIC等の実施機関と協力しつつ、先方政府関係省庁との政策対話を密に実施していること」から、温暖化対策ODAについても、被援助国政府の政策と整合性を保ちながら進められてきていると評価できる。但し、被援助国側での温暖化問題に対する認識・優先度の低さから、温暖化対策ODA事業として明示された要請が出されることは、あまりないという状況になっている。 |
(2)有効性
・ | 我が国の温暖化対策ODAの総額は、(条件等が違うために単純比較はできないものの)他国と比較しても非常に規模が大きく、その規模から全体として、地球温暖化対策としての有効な成果を上げるものと期待される。但し、明確に温暖化対策への貢献度が測定・評価できるような体制になっていない点は、今後の改善点といえる。 |
・ | 温暖化対策ODAの中で、最適電源開発のための電力セクター調査、新エネルギー分野の技術移転、工場等の省エネルギー推進に係る政策支援、林木育種事業等が実施されているが、これらは、我が国の技術/経験を有効活用して実施している事例といえる。 |
(3)インパクト
・ | 温暖化対策ODA事業による正負の社会的、環境的インパクトは、適正に考慮されており、望ましい結果となるような手当てが成されていると見なされる。 |
・ | 現地調査の結果、温暖化対策ODAの広報効果は、事業金額に見合うレベルとは言えない。「顔の見える援助」の視点からは、全般的に被援助国における広報活動を、より強化すべきといえる。 |
(4)持続性
・ | 現地調査の結果、温暖化対策ODAの事業レベルでの維持管理費用の考慮は、かなり実施されているといえる。しかし、予測範囲を超えるような維持管理費用の支出が生じた場合には、有効活用されずに放置される機材が出てきてしまう事例も確認された。 |
・ | 地球温暖化対策の効果を持続させるためには、地球温暖化対策に係る被援助国カウンターパートの人材育成が非常に重要といえる。京都イニシアティブでは、3本柱の一つとして「人づくり」を掲げて途上国の人材育成に積極的に貢献しており(3年間で約4,600名)、我が国の温暖化対策ODA全体の温暖化対策効果を持続させるための配慮がなされていると評価できる。 |
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7. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
以下に、本調査から得られた、今後の温暖化対策ODAのあり方に関しての提言を示す。
・ | 地球温暖化対策推進大綱(2002年3月改正)と連携し、かつクリーン開発メカニズム(CDM)や適応事業への取組のあり方も踏まえた上での、具体的な地球温暖化対策ODA戦略の策定と、それを検討するためのODA総合戦略会議の中に「地球温暖化対策関連ODA戦略部会(仮称)」の設置 |
・ | 途上国の温暖化対策に係るポテンシャルおよびニーズ把握のための詳細データ収集調査の実施、特定国を対象とする温暖化対策に係るプロジェクト形成調査の実施 |
・ | 「地球温暖化対策の視点」を適正に踏まえた電源選択を促進するための、電力セクター・マスタープランに係る開発調査の積極的な実施、もしくは政策アドバイザー専門家の積極的な派遣 |
・ | 「地球温暖化対策への貢献度」の適正な考慮および評価を推進するための、案件選定の早い段階での“地球温暖化対策プロジェクト”としての認証/案件選定/モニタリング体制の確立、および地球温暖化対策に係る報告内容の品質を確保するためのレポーティング・ガイドラインの作成 |
・ | ODAの流用ではないという前提の下での、日本としてのCDM事業のあり方の検討と積極展開およびCDMホスト国のCDM受け入れに関する能力開発支援の推進 |
・ | 温暖化に伴う国別脆弱性に係る詳細な基礎データ収集調査の実施、途上国の適応戦略および行動計画の策定支援、適応事業のあり方を検討するための適応技術・事業の被援助国との共同開発 |
・ | 途上国における地球温暖化対策に係る啓蒙/啓発活動に対する支援を強化するための、我が国の同分野における経験を効果的に活用した、専門家派遣や研修コース、eラーニング等の積極的実施 |
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