1.テーマ:インド国別評価 |
2.国名:インド |
3.評価者他:
(評価者)
黒田 康之(財)国際開発センター 主任研究員
長谷川祐輔(財)国際開発センター 研究員
片瀬 葉香(財)国際開発センター 研究員
(監修)
正木 朋也 東京大学大学院医学系研究科 国際保健計画学 客員研究員
近藤 則夫 アジア経済研究所 地域研究第1部 副主任研究員 |
4.調査実施期間:2003年7月~2004年3月 |
5.評価方針:
(1) |
目的
a. 今後の我が国の対インド援助政策の策定・実施改善に向けた教訓・提言を得ること。
b. 当該評価結果を公表して説明責任を果たすこと。 |
(2) |
評価の実施要領
本評価において評価対象となる援助政策は、1997~2001年度に策定された日本の対インド援助政策全般とする。評価基準として、対インド援助政策の (i)内容の妥当性、 (ii)結果の有効性、 (iii)策定及び実施プロセスの適切性という観点から評価する。
本評価の限界として、援助政策の策定段階において重点分野別・サブ重点分野別アウトプット目標値(ターゲット)や測定指標の設定を行っていないため、ターゲットへの達成度測定が不可能であったことが挙げられる。また、本評価の対象期間のうち、1998年5月から2001年10月までの3年半の間については、インドの地下核実験実施に対応した新規円借款の停止等の経済措置が実施されていた期間にあたり、結果の有効性の評価に際しては、この特殊要因からの影響は排除できない。 |
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6.評価結果:
(1) |
対インド国別方針の内容の妥当性
イ) |
対インド国別援助方針はODA大綱、中期政策等の上位政策、またインド開発ニーズと関連はあった。同方針の「援助対象国としての位置づけ」、「重点分野」は、ODA大綱の「基本理念」、「重点項目」の項目に対応している。さらに同方針はODA中期政策に関しては、「地域別援助(南西アジア地域)のあり方」の「重点項目」に対応している。 |
ロ) |
インドの開発ニーズとの整合性に関し、同方針はインド第9次5カ年計画の「基本理念」、「重点目標」(含む開発戦略)の項目に対応している。一方、1997~2001年度におけるインドからの要請案件は、重点分野に掲げられているセクター間でも、要請案件数の多い分野と少ない(あるいは全くない)分野があった。要請の多かった分野は、「電力」(有償21件、無償1件)、「保健医療」(無償7件)、「農業・農村開発」(有償1件、無償4件、プロ技1件)などであり、「人口・エイズ」については要請がなされなかった。尚、1998年5月から2001年10月までインドの核実験に伴い新規案件が停止されていたため、特に有償資金協力については、その間は既存案件の継続のための要請のみが行われていた。 |
ハ) |
こうした重要分野間での要請案件数の傾向は、1998~2001年度の、インド核実験に伴う日印政府間の協議の停止期間も、日印政府協議再開後(2002年)も大きく変化していない。2002年度に要請の行われた分野は「電力」(7件)、「運輸」(道路・鉄道・港湾[観光基盤整備含む]等)(6件)、「保健医療」(8件)、「植林」(4件)等である。 |
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(2) |
対インド国別方針の結果の有効性
イ) |
一部アウトプット実績を検証できなかった分野を除いて、全ての分野においてインプット及びアウトプット実績があった。
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ロ) |
分野間の投入金額、人数、件数を比較すると、明確な傾向が見られる。「経済インフラ整備」、特に「電力」、「運輸」の規模が大きく、「人口・エイズ」、「公害防止対策」、「都市環境改善」への投入は小さい。「電力」には、5,870億円、研修員受入19人、実施案件36件、「運輸」への投入に関しては、1,290億円、研修員受入79人、専門家派遣32人であった。一方、「人口・エイズ」分野は、研修員受入15人と草の根無償2件(0.04億円)、「都市環境改善」では研修員受入13人、専門家派遣1人、草の根無償4件(0.39億円)、「公害防止対策」分野では、研修員受入18人の投入があるのみであり、これらの分野は相対的に少ない投入量になっている。
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(3) |
対インド国別方針のプロセスの適切性
(3.1) |
連携・協議の有無について
イ) |
策定プロセスにおいては、公式ベース、非公式ベースで関係部署及び実施期間の間で協議が行われていた。また、JICA国別事業実施計画、JBIC国別業務実施方針は共に国別援助方針の重点分野に概ね整合しており、政府と実施機関で連携が取られている。 |
ロ) |
インド政府との協議については、1999年度以降は、インド核実験に伴う新規案件停止措置の期間(1998年5月から2001年10月まで)にあたり、インド政府との対話がストップしていたため、インド政府との公式な協議はほとんど行われていなかった。ただし、実施機関ではインド政府のニーズを把握するために、インド政府と情報交換・協議を行っていた。また、2002年3月に「対インド経済協力にかかる政策対話ミッション」が派遣され、インド側との対話が再開された。インド政府との公式協議では、国別援助方針が活用されていたが、インド側援助関係者に幅広く認知されているわけではないことが確認された。 |
ハ) |
NGOを含む民間との連携・情報交換については、個別案件の実施段階において、JBICが灌漑、養蚕、電力等の分野でNGOとの積極的な連携のもと円借款事業を行っていることが確認された。また、最近では案件形成段階において、大学やローカルNGOも含めてセミナーを開催するなどの試みもなされている。他ドナーとの連携については、現地での他ドナーとの定期的な全体協調は開催されていないものの、セクター別会合及び非公式な会合等において他ドナーとの情報交換・協議が行われている。 |
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(3.2) |
検証システムの有無
イ) |
ODA中期政策では、評価システムの構築が言及されているが、策定、実施プロセスで、検証システムが設定されていなかった。 |
ロ) |
対インド国別援助方針という政策の実行を定期的に評価する仕組みが欠如している。 |
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7.提言:
(1) |
インド政府との公式協議において国別援助方針(今後は国別援助計画)を活用し、日本の援助政策・方針を周知する。 |
(2) |
特に、電力分野への支援を強化する。例えば、電力分野における、事業効率性改善、組織改革、経営改革、及び人材育成・キャパシティビルディングを充実させていく。電力分野への支援においては、ハードとソフトを組合わせることによる相乗効果の創出を目的とした取り組みを実施しつつあり、そのようなニーズへの一層の対応を図る。 |
(3) |
我が国援助の重点分野については、我が国の上位政策、これまでのインドへの協力実績、インド側からの要請、インドの社会・経済及び開発動向、他ドナーの協力分野と動向等を総合的に勘案した上で、重点分野の再検討を行う。 |
(4) |
国別援助政策の検証体制を整備するために、今後策定予定の国別援助計画に評価の実施を明記する。 |
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