1.評価対象プロジェクト・プログラム名:
医療特別機材供与
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2. |
国名: |
ハンガリー |
実施機関名: |
デブレツェン大学医学・保健科学センター(旧デブレツェン医科大学)
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3.援助形態:機材供与、1994年、2000年度、6.1千万円
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4.評価実施機関名:ハンガリー大使館
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5.現地調査実施期間:2001年4月5~6日 |
6.プロジェクト・プログラムの分野:保健・医療
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7.政策目標又は政策の方向性: 解剖学、神経解剖学、細胞生物学、遺伝子学、免疫学等の医療研究及び臨床診療技術の向上 |
8.当該プロジェクト・プログラムの目的:
当国は先進国との医療分野の人的交流が活発であり、人的な医療技術水準は高いレベル
にあると言われている。しかしながら、体制転換後の厳しい財政事情から医療機器整備が大きく立ち後れ、医療関係者の技術レベルに見合う研究・診断ができない状態にあった。本案件は、こうした当国の医療事情を背景として、当国医療研究の中心にあるデブレツェン大学に対して、電子顕微鏡及び質量分析計等の機材を供与、幅広く医療研究の進展及び臨床診断の充実に役立てることを目的とした。
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9.評価結果:
(1) |
1994年の電子顕微鏡等の機材供与を契機として、同大学は「ハンガリー・日本電子顕微鏡センター」を設立、構内に約130平米のオフィス(実験室の他、暗室、調整室、コンピューター室、会議室)を設置した。ピーター・モルナール教授を同センターの主任(その他、機材操作・研究補助員として2名を配置)として、一元的な同機材の運用・維持管理を図っているほか、大学のコンピューターネットワークと接続するなどして、構内における利用体制を整えている。 |
(2) |
機材の利用状況について見ると、年間200~350件の診療・研究に利用されており、年間を通じてフル稼働の状況にある。診療では、神経科、神経外科、小児科、内科、呼吸器科及び心臓外科の病理分析で頻繁に利用されている。研究分野では、各種基礎・応用医学研究論文の公表に多大な寄与をしている。電子顕微鏡の利用状況に見る、診療・研究の割合は2:1で、診療における利用回数が多い。診療・研究合わせて年約7200枚の顕微鏡写真が撮られている。 |
(3) |
2000年の液体クロマトグラフ質量分析計等の機材供与を踏まえ、上記センターを「ハンガリー・日本電子顕微鏡・微量分析研究センター」と改名、微量分析部門にラースロー・ムズベック教授を配置(その他、機材操作・研究補助員として1名配置)して、機材の運用・維持管理を図っている。これら機材は、医学、生物医学、生命科学の微量分析実験、また診療面では先天性新陳代謝障害の診療において利用されている。
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(4) |
液体クロマトグラフィ質量分光計等、一部の機材に全面稼働と言えない利用状況も見られるが、これら機材は設置されてから日が浅いため、使用経験を積むことにより、将来的には稼働率の向上が期待される。 |
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10.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点、政策的な観点からの提言):
医療機材は、その保守、維持管理、必要な周辺機器及び係る消耗品に至るまで他の機材とは比較にならない高額な経費を必要とする。長期にわたる機材の有効利用を確保するためには、供与先にかなりの財政的裏付けが必要となる。
現行供与システム(運用・保守は供与先の責任)では、いかに人材が充実していようと財源的ゆとりがない組織(国)は、必要とする研究等機材の供与資格が不的確と判断されるという状況を生み出す恐れがある。医療機材の供与については、各種医療機材の運用実態等の研究を深め、必要に応じ、保守契約や消耗品の支援等将来に渡っての我が国からの支援枠を新たに設ける等の検討が必要である。 |
11.外務省からの一言:
供与先であるデブレツェン大学では、殆どの供与機材が年間を通じて診療活動・生体組織検査等に利用されているなど、本件は、ハンガリーの医療分野において大変有効に活用されている。機材の管理についても、機材管理責任者が指名され、機材操作や研究補助員が配置されるなど、ハンガリー側の体制は評価できるものである。
機材の保守契約や消耗品の補充については、今後とも診療報酬や研究費等から予算を確保し、ハンガリー側で手当てされることを原則としていくが、保守契約の支援枠組みなどの措置については、今後検討していきたい。
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