7. 評価結果
7-1.目的
本件プログラムの目的は、道路網の復旧のための工事の実施及びハリケーン・ミッチが当国にもたらした負の要因の解消に係る国家の再建と変革のためのマスタープランの実施に貢献するものである。道路網の機能を復旧し、社会・経済活動を促進するため、ハリケーンで被害を受けた主要幹線上の橋梁の復旧を実施し、永久橋を建設することがその主たる目的となっている。日本政府がホンジュラス政府に供与したかかる無償資金協力は、ホンジュラスの殆どの交通及び生産インフラを破壊したハリケーンの負の要因に対処する高い必要性と緊急性からみて正当化されるものである。同無償資金協力は全国・地方・コミュニティー・レベルにおいて重要な利益を生み出している。かかる意味において、本件プログラムは国家の再建と変革にかかるマスタープランにおいてホンジュラス政府が決定したプライオリティーに応えるものであり、かつ、政府計画及び貧困削減戦略における優先事項に貢献するものである。
7-2.結果
本件評価結果について言えば、本件プログラムの目的は十分に達成されたものと考える。その理由としては、本件プログラム(プロジェクト)により建設された橋梁は、自然災害が引き起こした深刻な問題を克服し、かつ、インフラの復旧及びホンンジュラス国内における生産能力の再活性化に寄与したことが挙げられる。
(1) |
有効性
本件橋梁建設は2000年10月に開始され、2003年4月に終了したが、この7橋の建設に係るプロジェクトではその有効性と建設工事の質の高さが認められた。
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(2) |
インパクト
本件評価において関係省庁、関係団体、ユーザー、橋梁建設による直接影響を受けた地方コミュニティー関係者に対する聞き取り調査により収集された情報の分析を行った結果、すべての橋梁において同様のインパクトが確認されたところ、主要点は以下のとおり。
(イ) |
技術的インパクト
本件橋梁の建設で使用された設計図は、構造物の安全性と持続性を保証する極めて近代的なものであり、自然災害に耐えうるものとなっている。本件建設に携わった日本の業者が活用した技術及び手法は、ホンジュラスのそれを遙かに上回る先端を行くものであり、これら橋梁は洪水等の自然災害からの被害を最小限に押さえることを可能とする高い質と機能が聞き取り調査対象者より確認された。かかる技術は当国における交通インフラの開発のための重要かつ革新的なものと言える。 |
(ロ) |
制度上のインパクト
本件橋梁建設は、ホンジュラスの交通網改善に係る戦略の導入に大きく貢献した。また、交通インフラ開発関連の国内機関・企業の技能強化及びその建設プロセスにおいて効果的な技術移転が行われた。 |
(ハ) |
経済的インパクト
本件橋梁建設は、国内の生産、特に農牧部門、観光開発及びサービス産業の再活性化に係るプロセスに好影響を与え、その結果として雇用創出、各家庭の収入増をもたらした。 |
(ニ) |
政治的インパクト
本件プロジェクトの実施は地域統合のメカニズムの強化、及び国内及び外国との交易政策に大きく貢献した。同様に、国の交通インフラに係る政策及び国家再建のためのマスタープランの実施に貢献した。 |
(ホ) |
社会的・文化的インパクト
規律、能率及び安全な労働に係る原則の下での橋梁建設プロセスは、ホンジュラス人労働者、関連企業関係者、地域コミュニティー関係者に好影響を与えた。建設された橋梁は、人と物の安全な移動と、交通事故の削減を可能にし、かつ、住民の教育・医療サービスへのアクセスを容易にした。 |
(ヘ) |
環境的インパクト
聞き取り調査対象者より、環境面での裨益に関し、アクセス面での改善が挙げられた。また、いくつかの都市においては交通渋滞の改善の結果、大気汚染が削減され、住民の生活水準の向上が図られた。
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7-3.プロセス
ホンジュラス政府と日本政府との間のすべての要請及び調整に係るプロセスが適切に行われた結果、プログラムとしての3つのプロジェクトの策定及び実施が容易となった。この3つのプロジェクトよりなる本件プログラムは、ノンプロ無償見返り資金という日本政府の別のスキームを通じた支援によりうまく補完され、かつ、ハリケーン・ミッチの緊急時においてホンジュラスを支援した他のドナーのプロジェクトとの適切な協調とアライメントが図られた。
ホンジュラス政府が高いプライオリティーを置いていた交通インフラ(橋梁)支援に関し、日本以外で協力を行ったドナー国・機関として、スウェーデン、英国、米国、中米経済統合銀行(CABEI)、米州開発銀行(IDB)が挙げられる。これらのプロジェクトの実施プロセスにおいては、日本側の要請により、ホンジュラスを支援した他のドナーとの恒常的な協議が行われ、特にスウェーデン、英国、米国等とは適切な援助協調が行われた。右は本件プログラムの実施において、日本政府の別の援助スキーム及び他のドナーの援助スキームとのアラインメントが図られたことを意味するものである。本件プロセスにおいては、ドナー・コミュニティー間及びドナー・ホンンジュラス政府間の協調が図られ、右はホンジュラスの協力の歴史の上で重要な出来事となった。
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