1.テーマ:エイズ・感染症
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2.国名:ザンビア、ケニア
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3.評価者:今里 義和 東京新聞論説委員
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4.現地調査実施期間:2001年2月12日~22日
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5.視察対象プロジェクト:
(1)プライマリ・ヘルス・センター(ザンビア・ルサカ)
(2)ザンビア大学教育病院(UTH)(ザンビア・ルサカ)
(3)HIVハイリスクグループ啓蒙活動(ザンビア・リビングストン)
(4)ケニア中央医学研究所(KEMRI)(ケニア・ナイロビ)
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6.評価結果:
(1) |
多数の人の命や健康が危機に直面しているとき、救いの手を差し延べることは、国際社会にとって人道上の義務である。感染症対策の支援に関する各プロジェクトは、その意味で、最も基本的な途上国支援の一部だ。 |
(2) |
とりわけ、プライマリ・ヘルス・センターにおける低所得層地域住民向けの保健教育、井戸などの衛生環境改善、新生児の成長状態管理といった事業は、人道支援本来の意味を発揮している好例だった。ここではJICAの日本人専門家が直接、地域住民らと交流しながら活動を展開していて、「顔の見える援助」にもつながっている。 |
(3) |
ザンビア大学教育病院(UTH)では、現時点では治療が事実上困難なエイズを扱うだけでなく、日本人医師が地味な結核治療にも力点を置いて活動していて、現実的な成果を挙げているのが印象的だった。 |
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HIVハイリスクグループ啓蒙活動では、NGOを通じ、売春を職業とする若い女性たちにエイズの恐ろしさを語りかけていて、この国のHIV感染率が人口の20%以上であることを考えれば、その意義が高いのはもちろんである。しかし、こうした女性たちにはほかに働き口がないうえ、「客が避妊具の装着を嫌う」という現実がある。そもそも、女性たちはエイズの怖さは既によく理解しているのであって、雇用対策や、男性たちに対するエイズ教育の方が実際上、最大のエイズ対策になるはずだ。 |
(5) |
ケニア中央医学研究所(KEMRI)のエイズ研究は、確かにケニアだけでなく、周辺各国を含む地域全体にとって、将来のエイズ克服などを期待させる事業である。もっとも、同じ額の支援を、マラリアなど既に治療法が確立している感染症の対策に振り向ければ、現時点ではより多数の人命を救えるのも事実であるが、長期的な視野に立てば、HIV/AIDS対策は重要であり 、その配分の判断の是非はなかなか難しい。一部には、KEMRIの幹部ポストが特権階級の既得権化しているという指摘もあり、組織上の問題も見極める必要があると思われる。 |
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7.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
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プライマリ・ヘルス・ケアは、住民に直接援助が行き渡る事業であり、ぜひ他の低所得層地域にも対象を拡大し、継続してほしい。現地人の施設運営者は将来の希望援助品目として患者搬送用の緊急車両などをリストアップしていたが、現実には管理維持する能力に疑問もあるため、自治体当局に対する関連支援との連携、整合性にも留意したい。 |
(2) |
UTH、KEMRIに日本人医師を何年かの周期で入れ替えつつ派遣継続するには、日本に帰国後のポスト確保がネックになっている。一部の医師の善意に頼るだけでなく、幅広く日本人医師が参加できるよう、医学界の体制整備が望まれる。 |
(3) |
エイズ対策は、治療研究よりも学校や社会での教育活動への支援にもっと力点を置くべきではないか。マラリア、結核など、比較的安価な薬で多くの人命を救える感染症対策も忘れるべきではない。 |
(4) |
KEMRIのように多額の研究費用を支援している機関については、研究方法や、幹部人事を含む機関運営のあり方についても、協議できる体制が求められるはずだ。 |
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8.外務省からの一言:
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我が国は、これまでもマラリア対策やポリオ撲滅、基礎教育等の支援を行ってきており、今後も「沖縄感染症対策イニシアティブ」(注:感染症対策分野で5年間で30億ドルの協力を行う)に沿ってHIV/AIDSをはじめとする感染症対策分野での取り組みを積極的に行きたい。 |
(2) |
医師等の専門家については、地方自治体や民間病院等の機関を含め、さらに国際医療協力を円滑に推進できるような措置を今後とも図っていきたい。 |
(3) |
KEMRIについては、現地カウンターパート・スタッフの見直しを行い、また、日本側及びケニア側のリーダーの会合を定期的に開催し、日頃の問題点を改善するよう既に体制を整備した。 |
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