6.評価結果
(1)「政策の妥当性」に関する評価
ミレニアム開発目標との関連に着目した日本の平和構築支援の目的設定は妥当と考えられる。また,国際的な平和構築の潮流を受身でとらえるのではなく,積極的に関与する姿勢が見出されること,国際的な優先課題,国内の上位政策,途上国の優先課題との間に,基本的な整合性が認められること,支援対象国の実情,紛争の特徴,平和の定着度や復興期への移行の進度などが,妥当な形で考慮されてきたことなどは積極的に評価できる。
(2)「結果の有効性」に関する評価
平和構築に貢献する支援には,DACのODA統計に「紛争,平和及び治安 (conflict, peace and security)」として計上される6分野(これを本報告書では「狭義の平和構築支援」と定義)だけでなく,インフラ整備や教育・保健分野への支援を含めた「広義の平和構築支援」がある。近年の日本では,2006年以降,狭義の平和構築支援の規模が急速に拡大おり,特に「治安制度運営・改革」や「文民平和構築・紛争予防活動」の増加が著しい。
また,本件評価では,途上国の「紛争リスク」に注目しつつ,計量的手法を用いて平和構築支援のインパクトの把握を試みた。「(日本からの)一人当たりODA支援の増分」と「紛争リスク」との間の関係を分析した結果,両者の間に負の相関関係(ODAの増加と紛争リスクの低下)が確認された。この結果は,限定条件付きではあるが,ODAが平和構築に一定の効果を持ちうることを示唆している。
(3)「プロセスの適切性」に関する評価
平和構築支援に関する政策プロセスには,改善が見出される反面,課題も残ることが確認された。評価できる点としては,(ア)外務省国際協力局がスキーム別の編成から国別・地域別に再編され,一つの国別担当課で多様な支援手段を総合的に運営できるようになったこと,(イ) NGOとの連携の進展,(ウ)二国間援助と多国間援助の連携の進展,などがある。重要な課題として残されるのは,(ア)多くの対象国について国別援助計画が策定されていないこと,(イ)多様な支援方式の連携・調整機能の整備に改善の余地が大きいこと,などである。
(4)東ティモールに対する支援
東ティモールに対する平和構築支援は,緊急人道支援と復興開発支援について,相手国のニーズと状況の変化に応じて,柔軟な形で実施されたと評価できる。同国の関係者や一般国民,現地の援助関係者から,日本の平和構築支援に対して,総じて高い評価が与えられていることを確認した。事業間の重複の排除や相互補完などの調整にも,大きな問題が見られなかった。予算制度や開発計画策定などの専門家を送り,東ティモール政府の開発政策策定の核心部分に貢献しようとする積極的な姿勢も評価できる。
同時に,なお大きな課題が残っていることも否定できず,それは明確で一貫性のある政策指針の策定,調整システムの効率性などであり,例えば,PKOとODAの連携や治安部門等を含めた支援において課題が見られる。また,今後の自立をになうべき人材の育成の面で,改善の余地がなお大きい。 |