6.評価結果
(1)「妥当性」に関する評価
絶対的貧困率が51.0%(絶対的極貧率を含む),絶対的極貧率が15.2%であり,ベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)の充足が,恒常的に国家政策の主要課題として位置付けられているグアテマラにおいては,保健・水セクターに対する支援は,教育セクター及び農業セクターに対する支援と並んで,極めてニーズが高い。
保健・水セクターに対する日本のODAプロジェクトが設定している各プロジェクト目標は,受益者のニーズと合致しており,問題や課題の解決策としてプロジェクトのアプローチは適切であり,日本政府のODA政策及び対グアテマラ援助重点分野との整合性の観点からも妥当性は高い。
(2)「効率性」に関する評価
何れのプロジェクトについても,計画段階で設定されたプロジェクト目標は概ね達成されており,プロジェクトで投入された資源(水道施設,病院施設及び機材,技術移転等)が効果的に活用されていることが確認され,効率性は高い。
(3)「効果及びインパクト」に関する評価
(イ)ケツァルテナンゴ市給水施設改善計画は,プロジェクト目標が十分に達成され,10万人以上に上る裨益住民も日本からの本件協力に深く感謝している。また,ケツァルテナンゴ市営水道公社(EMAX)に対しても適切な技術移転がなされ,ネガティブな要素は確認されなかった。
(ロ)首都圏主要国立病院整備計画は,首都圏における2大国立病院であるルーズベルト病院及びサン・フアン・デ・ディオス総合病院の機材整備,並びに結核を含む感染症専門病院である国立サン・ビセンテ病院の施設改善・機材整備からなる。日本の協力により迅速かつ適切な診療が可能となり,患者の受入れ能力が向上し,高いレベルの有効性及び成果が確認された。
(ハ)草の根・人間の安全保障無償資金協力については,NGOや地方自治体等が実施するプロジェクトを対象とした草の根レベルに直接裨益する機動的な援助スキームとして有効である。特にグアテマラは全体的に山がちな地形であり,とりわけ山岳農村地域においては飲料水の供給のためのインフラ事情が悪く,また,特に先住民居住率の高い西部高原地域においては乳幼児及び妊産婦死亡率が高いことを考慮すると,保健・水セクターに対する草の根レベルの援助ニーズは極めて高い。また,ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けても,両セクターに対する取組の強化が優先的課題として取り上げられていることに鑑み,本スキームを活用した地方農村地域の保健・水セクターを対象とした日本の協力は,極めて有効である。
(ニ)技術協力プロジェクトについては,日本側より「機材の供与」及び「研修員の受入れ」のみならず,実際に現地に専門家及び青年海外協力隊員が派遣され,現場の状況に応じた柔軟な支援がなされ,非常に有効である。プロジェクト対象地域においては,本件協力の上位目標として設定された「乳幼児死亡率の減少」が極めて高いレベルで達成され,高い効果及びインパクトが確認された。
(4)「持続性」に関する評価
(イ)ケツァルテナンゴ市給水施設改善計画については,ケツァルテナンゴ市営水道公社(EMAX)は,移転された技術を活用し水道施設の適切な運転・維持管理を行っている。また,給水メーターの整備,水道料金の改定等の水道経営改善努力も確認され,プロジェクトで発現した効果は,協力終了後においても持続して発展している。
(ロ)首都圏主要国立病院整備計画については,供与された医療機材の一部については,既に部品の修理・交換が必要となったものがあるところ,各病院は,本件協力に関わったコンサルタントより引き渡された各機材のメーカー・代理店リストをもとに独自で調達に努めている。当該国立病院の施設の運営及び機材の維持管理にかかる経費は必ずしも潤沢ではないが,限度内での自助努力が認められる。日本政府は,本件協力後も「病院管理」,「医療機材管理・保守」等のJICA研修員受入コースを通じて,本件ハード面の協力のみならずソフト面での協力も実施しており,持続性は十分に確保されている。
(ハ)草の根・人間の安全保障無償資金協力については,在グアテマラ日本大使館は,各プロジェクト終了後,原則2年後にモニタリングを行い,プロジェクトの持続性確保に向けた努力が確認された。
(ニ)技術協力プロジェクトについては,協力終了後,グアテマラ側政府機関によるカウンター・パート経費等の手当ての若干の遅れなどから,プロジェクトで発現した効果が,協力終了後に一部で短期的に低減するといった財政面での課題は見受けられたものの,本協力により移転された小児医療に関する「5つの基本ケア」等の技術は保健医療施設で定着し,特に技術面での持続性・自立発展性は顕著である。
(5)「プロセスの適切性」に関する評価
(イ)一般プロジェクト無償資金協力及び技術協力プロジェクトについては,日本のODA政策及びグアテマラ国内のニーズとの整合性につき,現地ODA政策協議,その他実務レベルでの協議を経て実施されており,プロセスは適切である。
(ロ)草の根・人間の安全保障無償資金協力については,一部プロジェクトにつき被供与団体と地域住民との間の連携・調整の不足により効果が低減しているケースが見受けられたものの,全体としてはプロジェクト形成プロセスにおいて各コミュニティー・レベルの優先的ニーズが考慮された上で,被供与団体及び地域住民が一体となって案件実施に取り組んでいることが確認された。なお,在グアテマラ日本大使館によるプロジェクト実現可能性及び被供与団体の実施能力の有無にかかる判断が概ね適正なものであることは,何れの被供与団体も,グアテマラ政府機関及び(または)他ドナーによる各種開発プロジェクトにおける優良な活動実績を有していることからも明らかである。 |