1.評価対象プロジェクト名:
ソロラ県ロス・エンクエントロス村エル・パライソ地区上水道整備計画
|
(クリックすると画像が変わります)
|
2.国名:グアテマラ
|
3.援助形態:
草の根無償99年度、1.5百万円
|
4.被供与団体:
エル・パライソ地区生活向上委員会
|
5.評価者:
荒木 光彌 (株)国際開発ジャーナル社編集長
中畝 義明 (社)世界経営協議会研究調査部長
幡谷 則子 アジア経済研究所地域研究2部副主任研究員
橋本 吉之 アイ・シー・ネット(株)企画部プログラム研究員
|
6.現地調査実施期間:2001年1月20日~2月5日
|
7.プロジェクトの目的:
首都グアテマラ市より西方約140キロメートルに位置するソロラ県ロス・エンクエントロス村エル・パライソ地区(住民約750人)への上水道設置計画である。山の湧き水をポンプにより高台に設置するタンクに貯水し、高低差を利用して各戸に給水、上水道を整備することにより、過酷な水汲み労働からの解放、保健環境の改善を図ることを目的としている。
|
8.評価結果:
(1) |
供与額150万円(ポンプ1台と導水管等)と少額であるが、住民の評価、参加意欲、自助努力が高く、草の根無償の模範となる裨益効果の非常に大きいプロジェクトである。 |
(2) |
プロジェクトが実施される以前は、各家庭の女性は400~500メートル離れた谷間の川へ朝6時から1往復約30分の重労働である水汲みを1日10回しなければならなかった。プロジェクトにより対象地区のほとんどの家庭に蛇口が設置され、水が供給されたことにより、女性、子供を水汲み労働から解放し、女性の地位向上に非常に大きな効果をもたらした。 |
(3) |
水汲み労働から解放された時間を、女性は夫の野菜栽培の手伝い、織物、育児に生かし、子供は勉強、家事手伝いに生かす等、生活の質の向上が見られる。 |
(4) |
以前使用していた川の水は水質にも問題があり、住民の胃腸関連疾病が多かった。現在では、胃腸関連疾病は非常に減少し、保健衛生面でも効果をあげている。また、薬代も減り、家計に経済的効果ももたらしている。 |
(5) |
小学校にも共同栓が設けられ、児童は清潔な水を常時使用することができるようになり、衛生面等効果をあげている。 |
(6) |
プロジェクトに際し、住民は住民委員会を設立、市役所・県開発審議会・住民の拠出金により約7割の資金を自ら確保し、かつ工事に伴う役務作業も住民が無償で行うなど、自助努力、参加意欲は高く評価される。上水道使用者は、現在も、ポンプの燃料費、潤滑油代を負担しており、自立発展性は非常に高い。 |
|
9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) |
上水道等基礎的インフラ整備ニーズを抱えた村落は多いが、グアテマラ政府には十分な経済力がないことが住民から指摘された。この結果、地方部は放置され、地域格差が助長される原因ともなっている。住民は本プロジェクトの成果を十分評価しており、周辺地域へ成果を伝えたいとしている。受益者自らが成果を周辺地域へ伝播する広報的意味は大きく、草の根無償への地域住民の評価を飛躍的に高めるものと期待される。こうした少額であっても裨益効果の大きいプロジェクトは、数多く実施し、全国的に展開することを検討すべきである。 |
(2) |
コミュニティではポンプの燃料代の値上がりが重荷となってきている。今後、ポンプ設置場所への電気の引き込み、ポンプ(電気仕様)供給を希望している。今後、他地域へ同種プロジェクトを展開する場合、ポンプの仕様は現地状況を十分勘案する必要がある。 |
|
10.外務省からの一言:
150万円の小さな援助で、お母さんや小さな子どもが一日に何度も水汲み場と家を往復する作業から解放され、勉強や他の仕事のための時間ができた。こうした草の根無償案件を地道に発掘し最も支援を必要としている人達のニーズに直接応えていくことは重要である。 |