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ガーナ国別評価

1. 調査対象国:ガーナ
写真

2. 評価チーム:

1)評価主任:望月克哉
(アジア経済研究所研究支援部研究支援部長)

(2)アドバイザー:山田肖子
(名古屋大学国際開発研究科准教授)

(3)コンサルタント:
グローバルリンクマネージメント株式会社

3. 調査実施期間:2009年6月~2010年3月

4.評価方針:

(1) 目的

 日本は、2000年6月に「対ガーナ国別援助計画」(以下、「国別援助計画」)を策定し、その後の援助環境の変化に伴い、ガーナに対する援助の戦略性を一層高め、政府全体として一体性と一貫性を持って効果的・効率的な援助を実施するため、2006年9月に改訂した。改訂後の「国別援助計画」は、次の3つの目標を掲げている。

  • ガーナ側のオーナーシップに基づいた開発政策を支えるための援助方針の策定
  • ガーナ側の自助努力を前提とした援助実施
  • 長期的視野に立った目標達成型の援助実施

 本調査は、これら目標の達成状況を、「援助政策の妥当性(援助方針の戦略的な枠組み)」、「プロセスの適切性(援助目標を達成するために適切な実施体制)」、及び「結果の有効性(援助手法の有効活用に拠る援助目標の達成)」の3つの視点から検証し、今後の「国別援助計画」の改訂と実施体制の改善に向けた提言、及び日本のODAの効果的・効率的実現に向けた提言を得ること、さらに評価結果の公表により説明責任を果たすことを目的に行われた。

(2) 対象・時期

 本評価調査では、「国別援助計画」をはじめとする日本のガーナに対する援助政策全般を評価対象とし、2000年度から2009年8月までに実施された無償・有償資金協力事業、技術協力事業のすべてを対象とした。また、ガーナに対しては、二国間協力に加え国際機関を通じた協力も行っていることから、国際機関を通じた援助も対象に含めた。

(3)方法

 「ODA評価ガイドライン第5版」(2009年2月)に基づき、「政策の妥当性」、「プロセスの適切性」、「結果の有効性」の3つの視点から総合的に検証し、評価を行った。具体的には、外務省及び国際協力機構(JICA)の関係各課と評価チームで構成される検討会を開催し、評価チームが作成した目標体系図*にのっとり、関係者へのインタビュー、文献調査、さらに現地調査(2009年8月15~30日)を行い、援助政策とその実施プロセスを検証し、最終報告書にとりまとめた。

*目標体系図=評価の対象範囲を定めるため、国別援助計画の内容から判断し、政策目標を体系的に整理した図。可能な範囲で個々のプロジェクトまで記載する。

5.評価結果

(1)「政策の妥当性」に関する評価

 日本の「国別援助計画」は、ガーナ政府の国家開発戦略(GPRS II:Growth and Poverty Reduction Strategy II)と同様の“目標達成型”アプローチを採用し、GPRS IIが目指す「貧困削減を伴った経済成長」の実現に向けた戦略プログラムを立案するなどガーナの国家政策と高い整合性を有している。また、日本のODA政策に加え、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスやミレニアム開発目標(MDGs)との整合性も高い。

(2)「プロセスの適切性」に関する評価

 2006年の「国別援助計画」改訂後、現地ODAタスクフォースの整備、セクター・チーム体制の導入、及び現地ODAタスクフォースが考案したセクターごとのポジション・ペーパーの活用により、現地実施体制は格段に強化された。一方、セクター・チームの活動はセクター内の個別事業の形成・実施に傾注しやすく、セクターを超えた協力プログラム及び戦略プログラムの実施管理は十分に行われていないことが確認された。

(3)「結果の有効性」に関する評価

 各セクターにおいて事業間・スキーム間連携の努力がなされており、特に長期にわたる支援である「技術職業訓練」や「現職教員研修支援」においては、政策の策定から実施促進に係る一連の支援が成果を挙げている。ただし、プログラムとしての成果及び目標の達成見込みについての指標設定が不十分なために、客観的な評価は困難であった。

(4)本評価調査から得られた主な教訓

イ.「国別援助計画」が示す援助政策について

(イ)「国別援助計画」と、日本の上位政策、ガーナの開発戦略及び国際的な取組との整合性は極めて高く、案件形成時に支援の妥当性を示す基本文書として、「国別援助計画」は重要な役割を果たしている。

ロ.「国別援助計画」の実施体制について

(イ)現地機能は、セクター・チーム体制の導入やポジション・ペーパーの考案などガーナにおける現地ODAタスクフォース独自の取組により拡充・強化され、案件形成の効率性は大幅に向上した。一方で、ガーナ政府の政策実現のためのより効果的な将来の事業形成や政策づくりに有用なフィードバックを得るため、戦略プログラムや協力プログラムの目標や目指す成果を明確にし、「国別援助計画」の進捗や達成状況を確認する取組を進める必要がある。

(ロ)目標達成に向けた効果的・効率的な援助の実施のためには、「協力プログラム」の具体的な内容について、外務省本省、JICA本部、及び現地ODAタスクフォースの間に共通理解を形成することが急務である。

(ハ)ガーナ政府との政策対話について、要望調査にかかわる協議プロセスの円滑化・効率化に対するガーナ政府の評価は高い。ただし、上位の二国間政策協議に参加しない省庁や実施機関からは、情報共有や政策対話を望む声も出されており、政策対話の一層の向上・改善が必要である。

ハ.日本の比較優位性について

(イ)他ドナーの支援が及ばない分野(現職教員研修、技術教育、北部の地域保健)への、現場主義という日本の優位性をいかした長期にわたる継続的な支援が、ガーナの開発戦略達成プロセスに貢献している。

ニ.援助協調への関与について

(イ)開発パートナー及びガーナ政府双方において援助協調体制の整備が進み、協調・調和化への関与の必要性は増している。一般財政支援、セクター財政支援及びプロジェクト型支援等の援助手法を戦略的に使い分け、効果的な援助を進めることが求められているが、日本が得意とするプロジェクト型支援と援助協調への積極的・効率的な関与の両立には、人材確保など体制の拡充が必要である。

6. 提言

(1)対ガーナ国別援助計画の改訂に向けた提言

イ. 目標達成型の国別援助計画における、重点協力領域設置の目的と位置付けについて再確認する。

ロ. 援助環境の変化を踏まえ、より能動的に援助協調に関与する。

ハ. 協力プログラムについて、ガーナの現地ODAタスクフォースが培ってきた経験と知見に根ざした実行指針(案件形成、進捗管理)を、「国別援助計画」に盛り込む。

(2)ガーナのODA実施体制の改善に向けた提言

イ.総合戦略・企画チームの活用により、セクター・チームの活動やポジション・ペーパーのスコープを協力プログラムや戦略プログラムの実施管理にまで広げた“目標達成型の実施体制整備”を進める。

ロ.政策対話の一層の向上・改善に向け、セクター担当者レベルの実務協議に留まらず、援助全般について政策対話を行う。

ハ.現地ODAタスクフォース、JICA本部、外務省本省内での情報・知見の蓄積・共有・活用を促進する組織能力を強化する。

(3)ODAの効果的・効率的実現に向けた提言

イ.国別援助計画の進捗管理の指針を開発し、支援分野やアプローチについて現地でレビューし、柔軟に見直すことのできる仕組を整備する(「国別援助計画」の現地中間レビューの導入)。

ロ.協力プログラムの戦略性向上に向けて、外務省、JICA本部・現地事務所、在外公館など関係者の協力プログラムに対する理解の共通化を進める。 

注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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