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エチオピア国別評価

1. 調査対象国:エチオピア
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2. 評価チーム:

(1)評価主任:大野泉
(政策研究大学院大学教授)

(2)アドバイザー:西真如
(京都大学 東南アジア研究所特定研究員)

(3)コンサルタント:
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

 

3. 調査実施期間:2009年6月~2010年3月

4.評価方針:

(1) 目的

 本評価の目的は、日本のエチオピアに対する支援の意義を踏まえ、日本の対エチオピア援助政策全般をレビューし、近年変化しつつあるエチオピア側の開発ニーズを把握し、また平成22年度に予定されている対エチオピア国別援助計画改定を含む今後の対エチオピア援助の政策立案、及び援助のより効果的・効率的な実施に資する教訓・提言を行うことである。同時にその評価結果を広く公表することにより国民への説明責任を果たすとともに、エチオピア政府関係者や他ドナーに評価結果をフィードバックすることで、今後の同国開発の参考に供し、かつ日本の援助の広報に役立てることを目的としている。

(2) 対象・時期

 本評価は、2004年度以降の日本の対エチオピア援助政策を評価対象とした。前回のエチオピア国別評価は2004年度に実施しており、1995年度から2003年度までをその評価対象としていることから、今次評価はそれ以降の期間を対象とした。この期間に実施された日本の二国間援助及び国際機関を通じた援助を評価対象とし、「援助政策の目的」、「政策実施の結果」及び「政策策定・実施プロセス」の各視点から政策評価を行った。

(3)方法

 外務省評価ガイドラインに基づき、主に対エチオピア援助の「政策の妥当性」、「結果の有効性」、「プロセスの適切性」の観点から総合的に検証し、今後のエチオピア国別援助計画策定に向けた提言を行った。

5.評価結果

(1)「政策の妥当性」に関する評価

 日本の対エチオピア援助は、日本の上位政策やエチオピア政府が定めた開発政策・戦略に合致しているといえる。「食料安全保障の確立」を基本目標としたのは、当時のエチオピアを襲った食料危機、2004年のG8サミット行動計画にも呼応しており外交的アピールも意図したもので適切であった。しかし、現行の計画は、2006年度に最終ドラフトを作成した後、政府内承認プロセスに時間を要し、公表が2008年6月まで遅れたことは残念である。日本の援助は、具体的なプロジェクトの実施を通じて連邦や地方政府の行政能力の向上を図っている点において、他ドナーの支援とも相互補完・調和的である。

(2)「結果の有効性」に関する評価

 日本の重点支援セクター(農業・農村開発、生活用水の管理、社会経済インフラ、教育、保健)における開発目標の主要な指標は全般的に改善の傾向がみられ、日本の援助は全体として有効な結果を出している。エチオピア側は、日本の技術力をいかしたインフラ整備、現場志向のきめ細かい支援、無償資金協力と技術協力の連携、支援の高い質と実施の確実性を高く評価している。一方、エチオピア政府が最重要課題として掲げ、日本も基本目標としてきた食料安全保障の達成状況については、まだ半ばである。具体的な成果をあげていくためには、今まで以上に脆弱地域と潜在力の高い地域、民間セクターの連関を意識した開発戦略が必要になっており、日本も諸施策の関連性を意識して援助戦略を策定する必要がある。

(3)「プロセスの適切性」に関する評価

 現行の国別援助計画が公表された時点でエチオピアの開発援助環境が大きく変化していたことを踏まえると、時間短縮のための措置が必要であった。案件の策定・実施プロセスはおおむね適切で、エチオピア政府との政策協議は2009年7月で7回目を迎え、実務レベル協議や、個別案件に関する協議を含め、エチオピア側との連携、コミュニケーションは密接に行われている。一方で、ODA実施プロセスの短縮化を求める声、実施段階での無償資金協力の柔軟性不足を指摘する声があった。現地主導の取組については、現地ODAタスクフォースに加え、日本の民間企業との情報共有・意見交換の場である商工部会が設置されており、民間企業の声も踏まえつつ、今後の活動方針を現場主導で打ち出していることは注目すべきである。援助協調に関しては、日本は財政支援やプールファンドへの資金協力は行っていないが、現地ODAタスクフォースで分担してドナー会合に参加している。しかし、政策レベルの場で日本の存在感が小さいことを指摘するドナーが複数あった。なお、個別案件レベルでは、国際機関との連携のグッド・プラクティス事例がある。

6. 提言

(1)エチオピアの開発援助環境の変化をふまえた目標・重点分野の見直しが必要である。

 エチオピア政府の開発ニーズが変化していることを踏まえて、2010年度に予定されている国別援助計画改定において目標・重点分野の見直しを行うべき(例えば、従来の「食料安全保障の確立」に加えて「持続的な経済成長」を基本目標とする)。

(2)援助インパクトを高めるアプローチを採用することが重要である。

イ.農業・農村開発において、案件相互の相乗効果を高める工夫を行うべき。

ロ.技術協力で確立した「モデル」を普及させるために、資金協力との連携や、政策レベルから草の根レベルに至る支援を組み合わせた取組を推進すべき。

ハ.州全体や郡の開発計画策定、予算管理への技術協力の強化と組み合わせて財政支援への参加を検討すべき。

ニ.案件の効果を高めるためにも草の根・人間の安全保障無償資金協力の経験をいかしてNGOとの連携強化や意見交換を増やすべき。

ホ.個々の案件の外部条件であるリスクを軽減するために、現場で政策レベルへの関与を常時増やすべき。

(3)日本の知見・経験をいかした援助戦略の構築、対外発信の強化が必要である。

 政策対話を活用して援助の現場と政策をつなぎ、援助のインパクトを高め、日本らしい存在感を発揮すべき。

(4)援助政策の策定・実施プロセスの改善を図るべきである。

イ.援助政策の策定プロセスの迅速化を図るべき。

ロ.案件の要望提出から採択に至るプロセスが常時可能となるような仕組みをつくるべき。

(5)無償資金協力の制度の改善を図るべきである。

 一般無償資金協力において日本の技術力をいかせるような制度改善を検討すべき(例えば、単価設定や予備費の確保)。

(6)国際機関を通じた支援の戦略的活用を図るべきである。

イ.国際機関を活用して日本の現地ベースの実践的な支援のスケールアップを図っていくべき。

ロ.国際機関を活用して、二国間援助では手の届かない地域への支援を行っていくべき(特に、辺境州への支援)。

ハ.インフラ整備や産業開発支援を有効にするため、中長期的にはアフリカ開発銀行や世界銀行との連携を通じた借款の可能性について検討を行うべき。

注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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