1.テーマ:エルサルバドル東部開発への日本の協力の評価 |
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2.調査対象国:エルサルバドル | |
3.評価チーム: エルサルバドル経済社会開発財団(FUSADES)経済社会調査部(DEES) ラファエル・プレイテス博士(社会開発、調査チーム代表) エルガ・クエジャル・マルチェリ博士(教育) レオポルド・ディマス(農業・環境) カルロス・オレジャナ・メルロス(国際経済) カロリナ・アラス・デ・フランコ(国際経済) アミリ・アンヘル博士(農業・環境) |
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4.調査実施期間:2007年12月~2008年3月 | |
5.評価方針 (1)目的 本評価調査の目的は、エルサルバドル東部地域開発に対する、日本の協力のビジョンの妥当性を評価することにある。また、エルサルバドルが直面する主要な社会経済的課題の観点をふまえつつ、日本の協力政策を評価する。エルサルバドルの競争力、人間開発への取り組み、そしてエルサルバドル政府の戦略的プログラムの観点から、日本の協力のビジョンと各プロジェクトとの整合性を評価する。DEESによる調査は、インフラ整備、競争力強化、地方部貧困削減、教育、飲料水供給、中小企業支援のテーマについて実施され、それらは日本の協力の妥当性を評価する上で、中心的なフレームワークの役割を果たしている。 (2)対象・時期 日本、及びエルサルバドル両国政府により合意された日本の協力政策を踏まえ、DEESは、人間・社会開発、インフラ整備及び流通、生産セクター開発支援の3つのテーマにおいて、日本の協力の妥当性を評価する目的で、東部地域において実施中の具体的プロジェクトの分析を行った。 (3)方法 東部地域における日本の協力は、以下の主要分野について実施されている。人間・社会開発、基礎インフラ整備及び流通、生産セクター開発。DEES調査チームは、いくつかの主要なプロジェクトを視察し、協力の妥当性について評価を行った。人間・社会開発の分野では、ラ・ウニオン市のMEGATEC(高等職業機構ラ・ウニオン校)整備計画、ラ・ウニオン県北部で実施されている地方自治体廃棄物総合管理計画、ウスルタン県サンタ・エレナ市にて実施された飲料水供給計画が調査された。基礎インフラ整備及び流通の分野では、ラ・ウニオン港再活性化計画、エルサルバドル及びホンジュラス国境にて建設が進められている日本・中米友好橋建設計画、生産セクター開発の分野では、ウスルタン県ヒキリスコ港での貝類増養殖計画、ラ・ウニオン県サンタ・ロサ・デ・リマ市における牛牧畜支援について調査が行われた。各プロジェクトにおける特定の裨益者を対象としたインタビュー調査、例えば、MEGATECの教員及び生徒へのインタビュー調査なども実施された。更に、各プロジェクトへのフィールド視察の他、多くのインタビュー、関係者への聞き取り調査が実施された。 |
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6.評価結果 (1)「目的の妥当性」に関する評価 本評価調査は、とりわけ当国東部地域が抱える主要な課題、例えば、教育、廃棄物管理、飲料水供給、基礎インフラ整備、中小企業支援などの分野におけるこれまでの経緯、及び現状の分析について議論を深めている。東部地域開発に対し、エルサルバドル政府が重点的に取り組んできた分野、及び方向性について、日本政府は、東部開発調査、及び援助による活動を通じて推進してきている。したがって、日本の協力は、当国政府が当国東部地域において推進する人間開発、及び持続的な開発のための政策への妥当性が認められる。 (2)「結果の有効性」に関する評価 当国東部地域における広範な開発課題への日本の貢献は、例えば、巨大インフラ整備、教育への投資、中小企業への技術移転など、これまでに多くの資金が投入されてこなかった分野において目覚ましい。日本による投入は、東部地域のみならず、エルサルバドル全国規模において、競争力が強化されることを通じて、地域レベルの開発、及び総合的な開発において大きなインパクトをもたらすことが期待される。一連のプロジェクトは、高いレベルの有効性、及び成果を達成してきている。 (3)「プロセスの適切性」に関する評価 東部開発計画は、ラ・ウニオン港の再活性化の他、農産業促進への複合的な支援、廃棄物管理のためのプロジェクト、ラ・ウニオンにおける高等技術教育機関の創設などを含んでいる。エルサルバドル政府もまた、長期的な戦略ビジョンを採用している。とりわけエルサルバドル東部地域は、民間企業の生産性を向上するために、更に多くの努力を必要としている。しかし歴史的に、エルサルバドルは生産性の向上においては大きな成果を上げていない。したがって、日本の協力により段階的に導入されるイノベーションは、総合的な開発、そして民間企業の競争力を強化するためのカギとなる概念である。日本の協力が、エルサルバドルの生産性向上、及び競争力強化に適切であり、有益であることには疑いの余地はない。 |
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7.提言 日本の協力は、エルサルバドル東部地域開発プロセスにおいて、間違いなくカギとなる貢献を果たしている。日本による投入から更に大きなインパクトを得るために、以下の提言を述べる。 (1)MEGATECに関しては、日本は、教育分野での新たな協力形態を決定するために、教育省及び他のエルサルバドル国内の公的・私的機関との継続的対話を実施すべきである。 (2)地方自治体廃棄物総合管理計画では、日本の協力を最大限活用するためには、裨益者による安定した資金負担を確保することが重要である。効率的なゴミ収集、及び移送や最終処分に必要となるコストを踏まえ、適切な料金体系を設定することが重要である。 (3)飲料水供給計画に関しては、日本の協力による裨益効果を適切に分配する必要がある。地方自治体にとっては、飲料水供給サービスの料金徴収システムを適切に実施し、そして最もニーズの高い世帯に対しては補助金を適用することが、重要な戦略となる。これら措置を通じて、基金が創設され、更に効率的な水資源の利用が可能となり、水資源の保護、システムの有効な維持管理が可能となる。 (4)ラ・ウニオン港建設、及び日本・中米友好橋建設の2件の巨大インフラ整備計画のインパクトは、それ以外のインフラ整備、関連する組織の強化、経済課題、及び社会課題への取組など、それ以外への課題に対するイニシアティブに依存している。したがって、資金に加え、特に政治的意志と東部地域の公共団体の連携した取組が必要である。 (5)牛牧畜支援の実施を通じて、日本の協力は、持続性をより確実にし、またプロジェクトから生じた利益、及び結果を広範に分配するための措置を講じるべきである。 (6)貝類増養殖計画に関しては、個別プロジェクトが開始される以前からの日本人専門家の参加、エルサルバドル政府による追加的予算措置、エルサルバドル政府による移転技術の普及へのコミットメント、及び、生産者間の連携の促進、が求められる。 一義的には、エルサルバドル政府が、日本の支援を得つつ、東部開発マスタープランを促進する責任を負う。同政府は、ラ・ウニオン港が東部開発の中心となるよう、必要とされる計画や具体策を推進すべきである。 |
注)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。