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「エジプトの上水道管理運営能力向上に対する日本のODA」評価

1. テーマ: 「エジプトの上水道管理運営能力向上に対する日本のODA」評価
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2. 国: エジプト・アラブ共和国
3. 評価者他: 国際協力省プロジェクト評価・マクロ経済研究所(PEMA)評価チーム(ライラ・シャハド(チームリーダー)、ナビル・マフルーフ(サブリーダー)ーアブデルーアジズ・ナッサル(サブリーダー)、他6名)
4. 調査実施期間: 2008年9月~2009年2月

5. 評価方針:

(1) 目的:

 評価対象プロジェクトは2006年11月に開始され、2009年10月に終了を予定している。本中間評価は、本プロジェクトの与える様々な影響を分析し、その実施にかかる改善点をプロジェクト終了前に提言することを目的とする。従って、特にプロジェクト実施中に取り組むべき課題に焦点を当てる。

(2) 対象:

 本件評価は、対象地域内の上水施設の維持管理能力を向上するプロジェクトを対象とする。
本プロジェクトは大きく二つの活動により構成されている。
 (a)無収水の削減
 (b)標準業務手順(SOP)の導入による上水道施設の維持管理能力の向上

また、それぞれについて以下の成果が期待されている。
 (a)プロジェクトエリア内の無収水率の減少
 (b)上水道施設の運営維持管理能力の強化

(3)方法:

 本件評価は、主に無収水率の減少、管理能力の向上、パイロット施設の維持管理能力の向上にかかる本プロジェクトのインパクトに焦点を当てた定量的アプローチを採用している。文章、集団討論、面接、現場視察などの内容評価も行われた。

6. 評価結果:

(1)妥当性 :

 SHAPWASCO(シャルキーヤ県上下水道公社:県から上下水道の管理を委託されている) は、低い給与水準、低い料金体系、低い集金率、過剰要員による過大な人件費、水の生産供給に関する知識の欠落に伴う非効率な運営及び高い無収水率による低業績に悩まされていた。
 本プロジェクトは、このような状況の中で、エジプト政府が日本政府に対しSHAPWASCOの運営維持管理能力の改善を支援する技術協力プロジェクトの実施を要請したものであり、その実施は妥当である。

(2)インパクト:

 本プロジェクトは未だ継続中であるが、現在のところそのインパクトは十分である。このプロジェクトによる能力開発の結果、SHAPWASCOは、無収水率の削減において先導的な水道公社となった。また、無収水削減活動の結果、無収水率は著しく低下した(例えば、ザガジグ郡においては24ポイント、ザガジグ市においては17ポイントの削減を達成した)。

(3)持続性:

 SOP活動の目的は、上水道施設の維持管理能力の向上を実現することである。故に、このプロジェクトにおける主な課題の一つは成果の持続性である。しかし、上水道施設の維持管理能力の持続性は、脆弱な組織構造やSOP活動のモニタリングシステムの不十分さのため確立されていない。さらにSOPの効果に懐疑的な職員も存在するという更なる課題も存在する。

7. 提言:

a. 無収水対策

  • プロジェクト終了前にプロジェクトエリア内の無収水対策を確実に実施すること
  • 施設保全のため、配水管交換の長期的な計画を策定すること
  • プロジェクトエリアの漏水探査の実施のため漏水対策チームに探査機器を提供すること
  • 配水管ネットワークの修繕のための職員および技術者を採用すること
  • シャルキーヤ県における家庭用メーターの検査と旧式メーターの交換を行うこと
  • 低い無収水率を維持するため、無収水率が低下した地域での調査を継続的に行うこと
  • 節水の重要性についての意識向上キャンペーンを増加させること
  • シャルキーヤ県で新設された無収水対策研修センターで必要とされる技術的・経済的支援を行うこと、また無収水対策訓練のための優秀な専門家を採用すること

b. 上水道施設の維持管理能力向上

  • SOPを適正に適用するため、対象となる各水施設の基準を見直すこと
  • 上水道各施設における維持管理能力向上活動を今後も監視するため、SHAPWASCOと同じレベルの適切な組織と仕組みを確立すること
  • 上水道施設の管理指導能力の向上を図ること
  • 長期運用している上水道施設の機能を回復すること(古くなった機器の入れ替えを含む)
  • 上水道施設の管理運営職員、技術者及び監督者を増やすこと
  • 水質管理プログラムの実施に対し、明確な目標と計画を置くこと
  • 検査結果の正確性の確保及び上水道施設の検査の促進のため、水質分析における技術および使用薬品の標準化を図ること
  • 管網解析のための計画を立案すること
注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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