(2000年3月、現地コンサルタント、オサマ・モサラーム)
<プロジェクト概要>
援助形態 |
プロジェクト方式技術協力
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協力年度 |
89年度―94年度 |
相手国実施機関 |
保健人口省 |
協力の内容 |
エジプトの家族計画・母子保健のモデルとして、産婦人科に関する研修を行い、エジプトにおける家族計画・母子保健サービスの質の向上を図る。 |
<評価要旨>
1.効率性及び目標達成度
プロジェクトの目標達成度は非常に高い。プロジェクトによる活動地域は、1991年時点では3か村であったが、現在では18か村にまで拡大している。家族計画・母子保健サービスの拡大に伴って、10代の妊娠率は、1991年から1994年にかけて、84.7%から76.3%にまで低下した。家族計画については、98%の妊娠可能な女性が現在では認識している。また、乳幼児への予防接種率(対予防可能な6疾患)は、プロジェクト期間に5倍に増加した。更に、1994年の避妊率は、プロジェクトの未活動地域では13.8%であったが、プロジェクト実施地域では24.6%であった。
2.インパクト
プロジェクトのモバイル・クリニック(移動検診車)による回診を中心とした活動が大きな成果を収めた結果、保健人口省は同様のサービスを計画・実施するなどのインパクトがあった。
3.計画の妥当性
本プロジェクトの妥当性は高い。プロジェクトの実施に当たっては、コミュニティーが積極的に関与したが、これはプロジェクトが住民のニーズに即していたこと、住民がモバイル・クリニックを進んで受け入れたことを示すものである。また、プロジェクトにおいて女性の医師を雇用したことも、住民の参加度を高めることに繋がったと示唆される。
4.自立発展性
活動の規模はプロジェクト時点と比較して縮小しているものの、モバイル・クリニックを中心とした活動は、国営のアルミニウム工場の支援により継続されており、ある程度の自立発展性は確保されている。しかしながら、同アルミニウム工場は近々民営化するとの話があり、その場合、財政的な支援を含め、自立発展性に不安を残しているとも言える。また、今後の自立発展性の確保のためには、保健人口省との連携強化も望まれる。
5.ジェンダーヘの配慮・影響
本プロジェクトを通じて、女性のエンパワーメントは非常に強化されたと言える。活動の一環としてビデオを使ったディスカッションでは、女性の地位や女性のエンパワーメントについて活発に意見交換がなされた。また、本プロジェクトの日本人女性専門家の活動も、プロジェクトのカウンターパートへのトレーニングや地域女性のエンパワーメントに大きく貢献した。
6.将来他のプロジェクトを実施する場合に教訓として活かされる事項
本プロジェクトが成功裏に終わった要因としては、強い政策的支援、日本人及びエジプト人スタッフの献身、収入創出活動、着実なプロジェクトの運営管理、住民の高い参加度が挙げられる。また、それらは自立発展性を高めるためにも必要な条件である。