1.テーマ: エクアドル国別評価 | |
2.調査対象国:エクアドル 現地調査国:エクアドル |
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3.評価チーム: (1) 評価主任:今里 義和 (東京新聞前論説委員/ODA評価有識者会議メンバー) (2) アドバイザー:清水 達也 (日本貿易振興機構アジア経済研究所副主任研究員) (3)コンサルタント: 株式会社三菱総合研究所 |
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4.調査実施期間:2008年6月~2009年3月 | |
5.評価方針 (1)目的 本件調査は、日本の対エクアドル支援の意義を踏まえ、エクアドルの政治・経済・社会状況及び開発政策を分析した上で、日本の対エクアドル援助政策を全般的に評価し、今後の対エクアドル援助の政策立案、及び援助の効果的・効率的な実施に資するための教訓や提言を得ることを目的として実施した。また、評価結果を公表することで国民への説明責任を果たすと共に、関係国政府・機関関係者や他ドナーに評価結果をフィードバックすることで、日本のODAの広報に役立てること等を目指している。 (2)対象・時期 本評価では、2005年7月に策定された日本の対エクアドル援助方針を評価対象となる政策と見なした。一方、評価対象とする一連の援助活動については、2005年7月以降とすると評価対象期間が短くなってしまうため、国別評価の一般的な慣行と照らして、原則として、評価対象年度の前年度からさかのぼり5ヵ年、すなわち、2003年度から2007年度までに実施された援助活動を対象とし、その結果とプロセスを評価することとした。 (3)方法 本評価を行うにあたり、まず、評価の視点、評価項目、評価指標を示す評価の枠組みを作成した。この枠組みに基づき、主として目的の妥当性、結果の有効性、プロセスの適切性・効率性」の3つの側面から評価を行った。本評価のため、日本国内における文献調査・インタビュー調査に加え、2008年9月から10月にかけてエクアドルにおいて現地調査を行った。 |
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6.評価結果 (1)目的の妥当性に関する評価 「貧困対策」、「環境保全」、「防災」という日本援助の3重点分野は相手国政府との政策協議を経て決定され、エクアドル政府側で当時有効であった開発計画や同国の抱える開発課題を踏まえたもの。ただし、2007年1月のコレア現大統領就任以前は、エクアドル政府の政権交代が相次いだことから、厳密な意味で各政権の開発計画との整合性を確保することができてきたかどうかは必ずしも明確でない。日本の上位政策との関係では、ODA大綱・中期政策との整合性が確認されたが、外交方針との関係では、エクアドルという個別の国に対する日本の外交方針は必ずしも明確でなく、それと日本の対エクアドル援助方針との整合性を丹念に検討することは困難であった。他ドナーとの関係では、日本の重点分野のうち、貧困対策、環境保全は、エクアドルの主要開発課題として、多くの他ドナーも共通して重点分野に据えている。「防災」を大きな柱にしているドナーは日本以外に見当たらないが、フランス、ドイツ等が同分野で援助を実施してきている。欧米ドナーや国際機関がガバナンス強化を重要課題に掲げる一方で、日本は同分野を重点課題に掲げていない。 (2)結果の有効性に関する評価 結果の有効性について主に貧困対策、環境保全、防災の3つの重点分野から評価した。 (3)プロセスの適切性に関する評価 日本の対エクアドル援助重点分野は、エクアドル政府との政策協議を経て決定されたが、その後、同国の政権交代で十分な政策協議が行われない状況が続いている。2007年成立のコレア政権は安定政権となる可能性があり、同政権との政策協議が可能な状況が整う可能性。現地ODAタスクフォースは月1回の頻度で開催。ドナー会合は、現政権発足後自然消滅していたが、新設のエクアドル国際協力庁(AGECI)が主体的にドナー協調に取り組みつつある。 |
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7.提言 (1)対エクアドル外交政策及び同国への援助との連携の明確化 エクアドルという一人当たり国民総所得2,840ドルともう少しでいわゆる中進国と呼ばれる高中所得国入りする低中所得国(以下、準中進国と呼ぶ)であり、日本と地理的に遠く政治・経済的結ぶつきが強いとは言えない同国に対して援助を行うことについて広く日本国民の理解を得るためには、日本外交における同国の意義、同国に対して援助を行うことの意義を明確にする必要がある。 (2)日・エクアドル間の政策対話の強化 主としてエクアドル側の頻繁な政権交代とそれに伴う各省幹部の頻繁な交代に起因し、近年、日本と同国との政策対話が不十分な状況が続いている。2007年に発足したコレア政権は、今後の動向を見守る必要があるとは言え、比較的安定した政権となる兆しを見せており、同政権の動向や同政権下の体制整備を見守りながら、政策対話強化を図ることが可能である。 (3)貧困削減のための産業基盤強化支援の実施 エクアドルは見かけは準中進国だが、実態としてエクアドル経済は石油収入に大きく依存している一方で、産業基盤は脆弱であり、自立可能な状況とはほど遠い。これまで日本は「貧困対策」のために、職業訓練や農村開発等を通じて直接的な裨益(ひえき)効果を持つ援助を実施してきた。このようなアプローチは引き続き妥当性を持つ一方で、今後は、産業基盤強化に資する援助を実施することで、同国全体としての経済自立性を高めもって貧困削減を促していくことも必要である。 (4)周辺地域や地域外への波及効果を考慮した費用対効果の高い援助実施 同国の一人当たりGNIのレベルや、同国と日本との政治・経済的な結びつきの程度を考えた場合、同国のみに貢献する援助を多額に実施していくことについて日本国民の理解を得ていくことは難しい。このため、同国のみならず、同国の周辺地域であるアンデス地域、ひいては中南米全体、更には環太平洋地域への波及を考慮した費用対効果の高い援助を実施していくことが必要である。 (5)外務本省や近隣公館との連携による現地ODA広報の強化 エクアドルにおけるODA広報活動とその成果について確認したところ、日本大使館として種々のODA広報活動に取り組んでいるにもかかわらず、現地報道機関関係者や一般市民の間で、日本のODAの活動内容やその成果について必ずしも十分に認知・理解されていないことが分かった。現在の在エクアドル日本大使館の体制を考えた場合、同大使館が単独でそれだけの情報発信をしていくことは困難である。このような状況の中で、現地大使館からの情報発信を強化するためには、外務本省や近隣大使館と連携することにより、現場での負担を軽減する工夫が必要である。 |
注)ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。