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「ソリダリダ・コン・ロス・プエブロス」特別養護学校校舎改修・近代化及び拡充計画

1.評価対象プロジェクト名:
 「ソリダリダ・コン・ロス・プエブロス」特別養護学校校舎改修・近代化及び拡充計画
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2.国名:キューバ
3.援助形態:
 草の根無償98年度、9百万円
4.被供与団体:
 「ソリダリダ・コン・ロス・プエブロス」特別養護学校
5.評価者:
 荒木 光彌 (株)国際開発ジャーナル社編集長
 中畝 義明 (社)世界経営協議会研究調査部長
 幡谷 則子 アジア経済研究所地域研究2部副主任研究員
 橋本 吉之 アイ・シー・ネット(株)企画部プログラム研究員
6.現地調査実施期間:2001年1月20日~2月5日
7.プロジェクトの目的:
 ハバナ首都圏では、各市に一校、特別養護学校が設置されている。最も貧しい地域の一つであるサン・ミゲル・パドロン市で、キューバ政府の優先政策である、弱者層に対する教育の質の向上を支援するプロジェクト。校舎の老朽化により授業の継続が困難になっている特別養護学校に対して、校舎改修工事を行い、また授業内容の充実をはかり、職業訓練に必要な教材を含む、各種機材を供与する。
8.評価結果:
(1) 本案件は、日本の草の根無償とキューバ政府の社会投資(教育省が作業所の建設資金を供出)とが共同で支援した例として注目される。現地側政府の優先政策の一つに教育の質的向上があり、本案件はこの政府方針に合致する。現在教育省では特別養護を必要とする身体・知的障害をもつ学童に対する「総合的対応計画」を旗印に掲げている。これは、雇用対策のみならず、人間教育、社会福祉の両面でも充実させようとする内容である。ソリダリダ・コン・ロス・プエブロス特別養護学校では、卒業生に対し、卒業後の2年間は地域内での就職活動をフォローアップしている。同校の校舎改善と職業訓練機材を支援した本案件は、教育省の総合的教育計画の骨子にも沿うものである。
(2) 草の根無償供与によって、具体的には次のような効果があがった。まず、校舎の改善である。教室をはじめ、校長室や食堂等、窓の新たな設置、扉の改修が行われ、特に教室内の換気が改善された。公衆衛生面も、トイレの男女別増設によって改善があった。新しく容量十分な用水タンクおよび給水ポンプが設置されたことも、飲料水の常時確保、食堂の調理用水、トイレ・洗面における水の確保など、衛生条件の向上に効果的であった。
(3) 安全管理面の改善も看過できない。同校は、市内でも最も治安状況の悪いとされている地区内に位置するため、以前は盗難などの被害があった。今回、学校敷地全体を囲む柵および安全格子が設置され、父兄の安全面での心配も緩和された。
(4) 本案件は、地域的なインパクトも大であった。ハバナ首都圏は19の行政都市から構成されており、各市に一校は必ず特別養護学校が設立されている。ハバナ首都圏政府は、特に教育分野における質の向上をめざしているが、同校は特別養護学校のモデル校として、首都圏の他の地域からも教育者の視察を受けているという。
9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
 本案件は草の根無償としては、特に問題点は指摘されなかった。ただ、同校の近代化・拡充計画としては、日本政府の草の根無償供与とキューバ政府(教育省)側との共同出資の形をとっており、その難しさもみられた。具体的には、教育省が請け負った職業訓練工房建設は、草の根無償供与実施期間と併行して開始されたにもかかわらず、3年目の今日でも依然完成をみておらず、計画全体の達成率はおよそ8割である。むろん草の根無償によって日本政府が担当した支援内容は完了したわけであるが、相手方政府と折半で開始されたプロジェクトへの支援という案件では、プロジェクト全体の進捗、効果を考慮して、現地側の実施状況にもなんらかの形で助言ができる方法を今後は検討すべきではないだろうか。
10.外務省からの一言:
 教職員の意識が非常に高く、また子供たちの歌声と笑顔が印象的だった。他校からも成功例として多数見学に来るので、日本からの援助であることが広く知られている。今後、この地域の教育環境を造っていくときのモデルとなれば良い。


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