1.評価対象プロジェクト名:
「青年の島」特別区カミロ・シエンフエゴス融資サービス協同組合の農作地の生産性向上計画
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2.国名:キューバ
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3.援助形態:
草の根無償98年度、6.7百万円
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4.被供与団体:
「青年の島」特別区カミロ・シエンフエゴス融資サービス協同組合
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5.評価者:
荒木 光彌 (株)国際開発ジャーナル社編集長
中畝 義明 (社)世界経営協議会研究調査部長
幡谷 則子 アジア経済研究所地域研究2部副主任研究員
橋本 吉之 アイ・シー・ネット(株)企画部プログラム研究員
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6.現地調査実施期間:2001年1月20日~2月5日
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7.プロジェクトの目的:
キューバ本島に次ぐ大きな島である「青年の島(Isla de la Juventud)」で、多くの日系人を擁するカミロ・シエンフエゴス共同組合は、農耕機具の老朽化、部品不足、肥料不足等を背景として、農業生産性が著しく低下していた。本プロジェクトはキューバへの「日本人移住100周年」に実施され、農耕機具を供与する事を通じて、同組合の農業生産性を向上させ、また、劣悪な環境に暮らす日系人コミュニティを支援することを目的とする。
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8.評価結果:
(1) |
トラクター、耕耘機、草刈り機、修理工具、灌漑用水汲みポンプ等が供与され、農機具は十分活用され、農業生産性も向上し、農業の効率化に大きく貢献しており、実施の効率性は非常に高い。 |
(2) |
トラクター等で十分な農地整備が可能となり、化学肥料、農薬の投入量が減り、肥料不足問題、環境問題でも良い効果をあげている。 |
(3) |
組合員の増加、耕地面積の拡大、農作物の多様化、各作物(根菜、野菜、豆類等)の生産量の増大、新規作物としてタバコの導入等、具体的効果が表れており、プロジェクトの裨益効果は高い。 |
(4) |
社会主義国であるキューバでは、組合が年間生産計画を政府へ提出し、生産計画を上回った生産部分が組合員の生活消費、自由マーケットでの販売に回されることになる。生産の拡大は組合員(約300人)に所得向上をもたらし、電機製品を購入する、新しい洋服を購入する、おいしい食事を楽しむ等、生活水準の向上に貢献している。 |
(5) |
トラクター等供与された機材は、オペレータ付きで非組合員へも貸し出されており、周辺地域の農業生産の拡大に貢献している。これは周辺地域社会へ日本の協力が波及することであり、波及効果、日系人の多い同組合が地域社会と融合を深める点で意義あるものと評価される。 |
(6) |
スペイン製のトラクターが供与された。地域で普及した製品が供与されたことにより、部品の組合費による調達、自力での修理(組合には修理技術をもつメンバーがいる)を可能とした。こうした製品の選択は、自力での維持管理を可能とし、持続的発展で好ましい効果をもたらすといえる。 |
(7) |
新聞(ビクトリア紙)、ラジオ等で日本の援助であること報道されており、島民もその効果に注目している。 |
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9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) |
青年の島は、第2次大戦中に邦人男子や日系2世が抑留された島であり、現在も日系人が居住している。日本からの経済協力と疎遠であった日系人農家への経済貢献という点で効果があったプロジェクトである。中南米には日系移民が多くおり、日系人社会周辺へ協力しそれが地域社会へ波及すること、協力が日系人社会の地域社会への融合を助けること等、念頭に置いて草の根無償を今後さらに拡大すべきである。 |
(2) |
組合が行っている農業は粗放的である。組合の参加意欲は高く、営農指導等技術協力によって生産性向上の余地は多い。定期的に農業指導に回る巡回農業指導員のような技術協力の制度があれば効果をさらに高めることが可能と思われる。 |
(3) |
本プロジェクトでは、組合から有機農業、酪農(乳牛・肉牛)等の新しい分野の支援が望まれている。草の根的支援が裨益効果を高めていくためには、継続的に協力を積み上げ、効果を大きなものとしていくことが必要である。 |
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10.外務省からの一言:
このように、日系人だけではなく周辺住民を含めた地域全体に役立つような優良案件を今後も実施していきたいと考えている。 |