1.評価対象プロジェクト名:
「青年の島」特別区クロコダイル・タウンの持続的経済発展計画
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2.国名:キューバ
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3.援助形態:
草の根無償99年度、9.7百万円
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4.被供与団体:
パス・イ・テルセル・ムンド「平和と第三世界」
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5.評価者:
荒木 光彌 (株)国際開発ジャーナル社編集長
中畝 義明 (社)世界経営協議会研究調査部長
幡谷 則子 アジア経済研究所地域研究2部副主任研究員
橋本 吉之 アイ・シー・ネット(株)企画部プログラム研究員
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6.現地調査実施期間:2001年1月20日~2月5日
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7.プロジェクトの目的:
「青年の島」南西部の国立自然保護区に隣接しているクロコダイル・タウンは、島内の開発から大きく遅れた陸の孤島となっている。隣接する国立公園がクルーズ船の寄港地に指定されたことから、同地区が環境に配慮したかたちで、街の総合的社会開発計画の中でも特に重要性の高い農業促進、漁業拡大、養産場建設、手工芸工場の充実、食品産業促進等を行い、同街内での一層の雇用創出と自給自足を図ることで経済的自立を促すことを目的としている。
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8.評価結果:
(1) |
本案件は、立地条件により政府の開発行政から取り残されている地域の住民のエンパワーメント(能力形成)を目的にしており、女性の地位向上及び地域住民の貧困削減の観点から案件の選定及び実施の妥当性は非常に高いと言える。 |
(2) |
発電機、給水ポンプ、手工芸工場建設資機材、トラクター部品、車両、食品産業用資機材、養産場建設資機材、自然教育センター用機材及び漁獲用ボート等が計画通り供与され、コミュニティーの住民が開発事業・産業振興の実施のため、積極的に事業に参加していることからも、案件目標に照らし極めて効率的に案件が実施されたと言える。 |
(3) |
発電機及び給水ポンプは適切に設置・維持管理されており、電力の安定供給による村内の産業振興及び女性及び子供の水汲み労働の低減、飲料水の質及び量の改善等をもたらし、ベーシック・ヒューマン・ニーズの充足及び住民の生活水準の向上に貢献している。 |
(4) |
トラクターを有効活用し、化学肥料をあまり使用しない有機農法を導入したことは、クルーズ船の寄港地として指定されたキューバ初の自然保護区に隣接している案件対象地区において、環境保護及び経済発展の均衡という当初目標を達成していると言える。 |
(5) |
本案件の農業事業から収穫された無農薬野菜を供するエコロジー・レストランの開業は、雇用促進のみならず地域住民の連携促進に貢献している。 |
(6) |
本案件はラジオ放送上でのインタビュー、および「青年の島」地方テレビなどで日本の援助であることが報道されており、島民もその効果に注目している。 |
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9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) |
草の根無償は、本案件で対象となっているような社会的弱者等の経済的自立及びエンパワーメント(能力形成)を支援することに役立っていることから、近隣の村の開発ニーズを支援するためにも草の根無償資金協力を一層推進すべきである。 |
(2) |
本案件は、地域の開発ニーズを踏まえたコミュニティー開発及び産業振興といった複合的なアプローチの中に草の根無償が合致しており、本案件で達成された効果を一層発展させ、且つ、効率的な事業運営を実施するためにも特に農業及び漁業振興事業分野における継続支援の必要性が高いと言える。 |
(3) |
村の住民及は日本の援助であることを十分に認識しているが、他地域住民に対する広報の観点からも本案件で供与された資機材にODAマークを付けるべきである。 |
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10.外務省からの一言:
パン焼き釜、発電機、漁船など、一つ一つは小さな機材でも地域の開発ニーズを木目細かく支援し成功している例である。村長を始め、村民の人たちが「自分たちで村をこういう風にしたい」という自助努力の意識を持っているのが印象的だった。 |