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漁獲物運搬用トラックを活用した零細女性漁民WID及び貧困対策

1.評価対象プロジェクト名:
 漁獲物運搬用トラックを活用した零細女性漁民WID及び貧困対策
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2.国名:チリ
3.援助形態:
 草の根無償99年度、6.3百万円
4.被供与団体:
 カレタ・ポルタレス零細漁民連盟
5.評価者:
 荒木 光彌 (株)国際開発ジャーナル社編集長
 中畝 義明 (社)世界経営協議会研究調査部長
 幡谷 則子 アジア経済研究所地域研究2部副主任研究員
 橋本 吉之 アイ・シー・ネット(株)企画部プログラム研究員
6.現地調査実施期間:2001年1月20日~2月5日
7.プロジェクトの目的:
 首都サンチャゴ近隣の漁港都市バルパライソにあるカレタ・ポルタレス零細漁民連盟は、水産加工工場や漁網の修理等漁業周辺業務に携わる零細女性漁民の経営活動参加及び生活の向上を目指し「漁業者団体」を設立し、その活動を支援している。
 本案件は、独自の流通手段をもたない「漁業者団体」が従来前浜で販売していた鮮魚・水産加工品を、冷蔵車及び集荷用・出荷用車両2台等を活用することによりサンチャゴ等の消費地で直接販売し、より収益性を高め参加零細女性漁民の生活向上を図ることを目的としている。
8.評価結果:
(1) 本案件は、ポルタレス漁協で技術指導を行うJICA専門家の活動との連携が非常に効果的に成されており、JICA専門家の指導により周辺漁村の零細女性漁民が生産する一時加工品をポルタレス漁協の水産物加工場において付加価値を付け、流通経路に乗せることができたいう点において、草の根無償資金協力の裨益効果が一層大きくなったと言える。
(2) 草の根無償資金協力により供与された集荷用及び出荷用トラック2台は、独自の販路拡大に大きく貢献した。また、水産物加工場は従前の国内市場向けから2000年11月には輸出加工場としての認定を受け、EU向けの水産物輸出が開始されている。
(3) 供与された集荷用及び出荷用トラック2台は、当初計画どおりに利用されているが、チリ国家が見舞われた経済危機の影響、メルルーサの捕獲量制限、水産物加工場の生産能力等の理由により、その稼働率は60%程となっている。
(4) ポルタレス漁協の水産物加工場で働く女性労働者は、収入の安定と社会保障を享受しており、本案件は零細女性漁民の生活水準の向上に貢献している。
(5) 水産物加工場により原料(鮮魚)の定期的な需要が確保され、漁網(延縄)の修理に携わっている女性達にも副次的な便益が認められる。
(6) ポルタレス漁協はコミュニティー全体に本案件の進捗状況を周知徹底しており、コミュニティー住民は本案件が日本の無償援助であることを認識している。
9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) 本案件のような草の根無償とJICA専門家派遣との連携は、チリのような所得格差が大きい国において低所得層の生活水準の向上に対して非常に有効であると言える。
(2) 上記の技術協力専門家を派遣する際には、より目的意識が高く途上国での技術移転能力に優れた人材を確保する上で、技術協力専門家公募制度を一層活用することが望ましい。
(3) 流通過程の強化を必要とする沿岸漁業コミュニティーは多いと考えられ、本案件をモデルプロジェクトとして位置付け、他州の漁業コミュニティー支援を拡充していくことが必要である。
(4) 水産物加工場の処理能力を向上させるため、加工場の拡張及び加工設備の拡充等に係る援助が今後も必要であると思料される。
10.外務省からの一言:
(1) 熱意のあるJICA石田専門家の活躍がこのプロジェクトの成功に大きく貢献した。非常に有効な草の根プロジェクトの例である。
(2) このプロジェクトが、チリの零細漁業組合にとってのモデルになるためにも、引き続き専門家の派遣(現在派遣中の専門家の期限の延長も含めて)を検討するとともに、他の地域でもこのような連携を進めていきたい。
(3) 受入国であるチリ側の漁民たちをはじめとする関係者がJICA専門家が零細漁民へ直接派遣された意味を良く理解し、大きな期待を持って自助努力を行ったことが結果として現れたものと考えている。
(4) このようなモデルプロジェクトによって示されたノウハウをどのように他の地域の零細漁民に啓蒙普及させていくか、また、その際の資金調達をどうするかが今後の課題であると考えている。


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