7.次期国別援助計画に対する提言
(1)NSDPとのアラインメント
次期国別援助計画はカンボジアの国家開発計画であるNSDPにアラインしたものを策定する必要がある。次期国別援助計画では、NSDPの目標、具体的には「CMDGs達成への貢献」を上位目標とする体系図の策定の可能性も検討すべきであろう。
(2)国別援助計画の明確化と迅速な援助計画の見直し
次期国別援助計画の際には、援助の効果をより明確にするために、より体系的かつ論理的な構成を重視するのも一案であろう。また、開発目標や中間目標には曖昧さを可能な限り排除するため、指標を明記することも検討すべきであろう。同時に、カンボジアの経済社会状況の変化に応じ、必要な場合にはタイムリーかつ迅速な計画の見直しや修正が望まれる。
(3)支援分野の優先順位づけ
現在、日本はほぼすべての分野をカバーして支援を行っているが、今後よりメリハリのある援助を実施するためには、支援分野間、または支援分野におけるサブセクターでの優先順位づけの検討も念頭に入れる必要があるだろう。優先順位づけの基準は、例えば、経験や知識面での日本の比較優位、他ドナーとの連携により相乗効果を生み得る活動、現状ではCMDGsの達成が難しいと予想されるサブセクター等の情報などが考えられる。
(4)ガバナンスの向上および行財政改革への日本の貢献分野
ガバナンス向上へは、これまでも支援を行ってきた司法改革、そして国税、関税、ジェンダー主流化の分野の取り組み強化により、貢献が出来ると思われる。特に今後財政支援も見据えた上、重要となってくる歳入面で、現在も行っている会計や税務調査などの歳入面での人材育成を更に強化することが考えられる。
(5)プノンペン-シハヌークヴィル間の援助の集中の効果
プノンペン-シハヌークヴィル間は、現在カンボジア経済成長の原動力となる成長回廊と見込まれており、わが国の支援は、シハヌークヴィル港拡張や、光ファイバー敷設、経済特区整備など、民間セクター開発に繋がる「集中」効果が期待でき、今後の援助の在り方への参考となる。また、これらのプロジェクトはほとんどすべてメコン地域開発に繋がるものである。わが国は、ASEAN諸国内の格差是正を促すため、地域協力に関するイニシアティブを打ち立てており、カンボジアを支援する際の横断的視点または留意点として念頭に置かなければならない課題であろう。
(6)「オールジャパン」としてのスキーム間の連携・協力による援助の効果・効率の向上
多くの案件でスキーム間の連携が見られ、持続性、維持管理などの面で効果的な成果が発現されていた。更に、今後「オールジャパン」として一体感を強化するために、外務省・JICA・JBIC間でより連携した形で「国別援助計画」の策定も検討されてもよいであろう。その際には、カンボジアの開発ニーズに応えるためにも、現地ODAタスクフォースが実質的にも中心的な役割を担い策定するべきであろう。
(7)援助協調における現地ODAタスクフォースの役割の整理
援助計画の策定、実施、モニタリングにおける現地ODAタスクフォースの重要性が増加し、援助協調の動きが早いカンボジアでは、現在の人員体制ではかなり負担がかかっている。援助協調に対しては、要員の増加・力強化が必要とされる。同時に、様々な援助協調における会合に対し、目的を区分しながら、大使館、JICA、JBICがどのように対応するか、役割分担を含めての整理が必要であろう。
(8)東京サイドからの支援体制構築
援助協調などの議論は常に動いており、世界的な動きに関する情報や他国でのグッドプラクティスの共用、各種ノウハウの提供などが大いに有用であり、東京サイドから現地を支援するような体制(重要イシューに関するヘルプデスクの設置、有識者の照会システムなどのバックアップ体制)が必要であろう。
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