1.評価対象プロジェクト名:
(1)母子保健センター建設計画、(2)母子保健
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2.国名:カンボジア |
3. 援助形態:
(1)無償資金協力、95年度、17.61億円、
(2)技術協力、95~2000年、長期・短期専門家派遣40名 |
4.評価者:佐藤喜一 黒部温泉病院院長
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5.現地調査実施期間:2000年10月23~26日
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6. プロジェクトの分野:保健・医療(感染症) |
7.プロジェクトの目的:
(1) |
カンボジアにおける母子保健の中核である母子保健センターの産婦人科診療部門、訓練研修部門、宿泊部門、管理部門の移転新築及び関連機材の調達を行う。
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(2) |
母子保健センターの機能改善のため、技術協力を通じて運営管理能力の向上、研修活動の強化、臨床活動の向上、運営指導活動の強化、啓蒙活動強化を図る。 |
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8.評価結果:
(1)母子保健センター建設計画(無償資金協力)
(イ) |
センターの建設は、1997年3月に完了し、同年4月から病院業務を開始し、その機能を十分に発揮している。 |
(ロ) |
センターの規模とその機能は、日本の大病院に相当し、カンボジア人のために大いに役立っている。在留邦人も不安なく受診可能な病院である。 |
(ハ) |
入院ベット数は、150床であるが、稼働率が90%と高い。年間の出産数は9000名に達している。 |
(ニ) |
異常分娩への対応が可能な設備を有しており、帝王切開術は現地医師が行っている。 |
(ホ) |
地方の医師や看護婦の教育と実地研修は院内のホールや各施設を利用して定期的に実施されている。 |
(ヘ) |
宿泊施設も十分に利用されている。 |
(ト) |
これまでに、水漏れ、水道の配管ミス、汚水槽の維持管理不足などの問題が発生した。 |
(2)母子保健(技術協力)
(イ) |
JICA専門家による技術指導は一定の成果を上げており、病院の運営及び医療活動の向上に役立っている。 |
(ロ) |
母子保健センター職員とJICA専門家から構成される病院運営委員会は、病院の運営と医療活動の向上を目指して、順調に運営されている。
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(ハ) |
カンボジアでは公立病院は建前上は無料であることが慣例であるが、同センターは、医療費の有料制を採用し、医療費の透明性の確保、職員の所得の確保、病院の維持管理費の確保等に貢献した。 |
(ニ) |
JICA専門家が病院職員を指導しながら、「母親教室」(妊娠中や分娩前後の保健や栄養などの教育等)が行われており、妊婦の知識向上に役立っている。 |
(ホ) |
エイズを含む感染症の防止に最大の注意が払われている。 |
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9.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点等):
(1) |
JICAの医療専門家も指摘しているとおり、人材の育成と確保が大きな問題となっている。人材育成を行う一方で、既存の大学医学部のスタッフや産婦人科医らと連携により、人材を得ることが必要である。 |
(2) |
援助にあたっては、カンボジアの人材不足に配慮することが必要である。具体的には、施設の建設や機材の供与の際には、(イ)現地の仕様に合わせること(施設及び機材の使用、維持管理の為に新たに必要となる技術や知識を軽減し、スペアパーツの調達も容易となる)、(ロ)建設作業の監督を強化し、問題の発生防止に努めること、(ハ)完成時及び完成後の施主による検査体制の強化、問題の早期発見のための手だてが必要である。なお、医療施設及び機材の維持管理に必要なトレーニングを行う場合には、確実に維持管理が行われるよう、各作業の意義(どうして必要なのか)についても併せて教育するなどの工夫が必要である。 |
(3) |
現在、センターには病理組織検査部門がなく、悪性腫瘍の有無を診断できない。今後、病院機能を向上させるために検査部門を設置し、技術指導を行うことが必要である。 |
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10.外務省からの一言:
母子保健については、2000年よりフェーズ2として技術協力を実施している。指摘されている施設の不具合については、既に施工業者、施設管理の専門家のフォローアップにより、全て使用可能な状態になっている。また、水道の配管ミスについては、カンボジア側のカウンターパートのボルトの締め方等の扱いが適切でなかったことが原因と判明している。今後は、同センターの更なる財政的な自立が重要であり、引き続き人材の育成に取り組む中、カンボジア側の努力が期待される。また、同センターが中核となって地方病院への技術の普及が行われることが期待される。
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