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ボリビア国別評価

1. テーマ:国別評価 写真

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2.調査対象国: ボリビア
  現地調査国: ボリビア
3.評価チーム:
(1)評価主任:柳原 透
  (拓殖大学国際学部/国際協力学研究科 教授)
(2)アドバイザー:藤田 護
  (東京大学教養学部ラテンアメリカ分科教務補佐/
  ボリビア外務省外交アカデミー客員研究員)
(3)コンサルタント:
  株式会社 三菱総合研究所
=現地調査団メンバー
4.調査実施期間:2010年9月~2011年3月

5.評価方針 

(1)目的
  ボリビアは,天然ガスや鉱物,希少金属などの天然資源に恵まれながら,国民の60%が貧困層に属する南米の最貧国である。このような状況の中,ボリビアに対する日本のODAは,「貧困削減のための社会開発支援」及び「持続的経済成長のための支援」の二本の柱を基本方針とし,(a)社会開発(教育,保健・医療,水と衛生,地方開発),(b)生産力向上(生産・経営技術向上,持続可能な鉱業,経済インフラ整備),(c)ガバナンス強化の3点を重点分野として実施されている。本評価は,日本の対ボリビア援助の意義を踏まえ,ボリビアの政治・経済・社会状況および開発政策を分析した上で,日本の対ボリビア援助政策を全般的に評価し,今後の対ボリビア援助政策のための教訓や提言を得て,今後の政策立案・実施に役立てることを目的としている。

(2)対象・時期
  本評価では,日本の対ボリビア国別援助計画を対象とし,主に「政策の妥当性」,「結果の有効性」,「プロセスの適切性」の観点から評価を行った。第一に,「政策の妥当性」については,2009年4月に策定された,「対ボリビア国別援助計画」を主な評価対象とした。但し,国別援助計画が策定されてからまだ日が浅いことから,必要に応じて国別援助計画策定以前の対ボリビア援助政策に遡り評価を行った。第二に,「結果の有効性」については,2009年の「対ボリビア国別援助計画」及び,それ以前の対ボリビア援助政策などで決定した重点課題を踏まえた援助が行われているかについて評価を行った。第三に,「プロセスの適切性」については,援助方針の策定と実施のプロセスにおいて,被援助国政府,実施機関,他ドナー(NGO,国際機関など)との協議がなされ,情報が共有されていたかを検討した。

(3)方法
  本件評価では,「政策の妥当性」,「結果の有効性」,「プロセスの適切性」という3視点により,対ボリビア援助に向けた日本の取り組みを総合的に評価分析した。

 「政策の妥当性」については,我が国の対ボリビア援助政策の援助目的・重点分野等の「妥当性」について,主として(a)相手国の開発ニーズとの整合性,(b)日本及び相手国の上位政策との整合性,(c)国際的な優先課題との整合性,(d)他ドナーとの関連性,(e)我が国の比較優位性などを評価した。
  「結果の有効性」については,我が国の援助のインプット・アウトプットを確認した上で,当初設定された目標がどの程度達成されたか,また,当初設定された重点課題である,(a)社会開発,(b) 生産性向上,(c) ガバナンス強化という3分野毎に結果の有効性を分析し,最終的に同国における貧困削減のための社会開発支援及び持続的経済成長のための支援に与えたインパクトを評価した。
  「プロセスの適切性」については我が国の対ボリビア援助政策の立案・実施において適切な協力・協議・確認等があったかどうか,それらが効率的になされていたかどうかを確認した。

6.評価結果:

(1)「政策の妥当性」に関する評価
  日本の対ボリビア援助政策の二本柱の根幹となる「人間の安全保障」の考え方は,ボリビア政府の「国家開発計画2006-2010」の上位目標である「よく生きる(Vivir Bien)」と合致する概念であり,日本の対ボリビア援助計画は,ボリビアの国家開発計画の理念と整合性を有する。また,モラレス政権第2期では,第1期に掲げた「国家開発計画」を具体化するためのセクター別開発計画の策定が進められており,これらの開発計画と日本の「対ボリビア国事業展開計画」は概ね整合的といえる。

(2)「結果の有効性」に関する評価
  日本が掲げる対ボリビア国別援助計画の援助重点分野のうち,「社会開発」分野では教育,保健,安全な水の供給など,貧困削減のための社会開発支援を実施しており,ボリビア政府関係者,メディアなどに認知され,高く評価されていることが確認できた。一方,「生産力向上」については,「社会開発」セクターより比重が少なく,本評価においてその有効性を評価することは困難であった。また,「ガバナンス強化」については,地域に根ざした草の根レベルでの援助を実施しており,プロジェクトを通じた援助実施機関の行政能力強化に貢献しているといえる。

(3)「プロセスの適切性」に関する評価
 対ボリビア国別援助計画の策定にあたっては,新政権による開発計画策定のタイミングを考慮した上で国別援助計画が策定された。現地ODAタスクフォースではODAの実施に向けた活発な協議がなされ,また,ボリビア政府機関と現地日本大使館や,プロジェクト担当レベル間でも定期的に協議が行われている。ボリビアの主要ドナー会合である「GruS」にも日本大使館及びJICA現地事務所が出席しているが,日本は教育,保健分野のリーディングドナーとして認識される一方で,一部のドナーからは日本のより積極的な情報共有への要請もあった。

7.提言

(1) 対ボリビア援助戦略における二国間の経済関係強化の視点の強化
  「人間の安全保障」に加え,特に「持続的経済成長のための支援」を考える際の視点として,「二国間の経済関係の強化」を対ボリビア援助計画に加えることにより,ボリビアの持続的成長と日本の産業発展の双方に寄与するような援助の推進を,対ボリビア援助戦略の中により明確に位置づける。

(2)社会開発支援の継続的な実施
  農村部を中心に依然として存在する貧困に対応するため,「重点地域プログラムの設定」,「帰国研修員の有効活用」,「地域レベルのグッドプラクティスを政策に反映させるための取組」を通じ,更なる社会開発に向けた支援を行う。

(3)鉱工業開発への支援の強化
  ボリビア政府の重点開発課題である鉱業分野及び工業分野における開発ニーズにこたえるべく,日本の有する技術を活用しボリビアの鉱工業の育成に貢献する。

(4)他ドナーとの更なる情報共有・連携の促進
  ドナー会合や省庁主導のセクター別会合の場を積極的に活用し,日本の情報発信,他ドナーとの情報共有を徹底させる。また,近年欧米ドナーを中心にバスケットファンド設置の動きが進んでいることを受け,バスケットファンドのメリット・デメリットの両者を考慮しつつバスケットファンドへの参加も検討することが望ましい。

(5)援助プロセスの改善
 案件の審査状況等について,ボリビア政府側と適宜情報共有を行い,コミュニケーションの緊密化を図ると同時に,ボリビア政府側との協力により,審査期間の短縮に努める。

注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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