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ボリビア
草の根・人間の安全保障無償資金協力評価

1. テーマ:草の根・人間の安全保障無償資金協力評価
写真
2. 評価対象国名:ボリビア
3. 評価者:
 マリア・エウヘニオ・フラド ボリビア国大蔵省公共投資次
 官室(ボリビア国政府援助窓口)
 フリオ・セサール・マジョン他(コンサルタント)
4.調査期間:2005年1月~2005年3月
5.評価の目的:
 評価対象期間(2001~2003年度)に我が国が取り組んだ、ボリビアへの草の根・人間の安全保障無償資金協力の136案件の内、教育、保健医療、生産性分野の代表的な11案件を通して、草の根・人間の安全保障無償資金協力のスキーム評価をおこなうこと。具体的には、地域住民等(評価会参加者数456名)とのワークショップやアンケート調査の形で客観的に評価し、今後、同分野での開発援助をより効果的・効率的に実施するための教訓と提言を得る。また、評価結果を公表し、ボリビア及び日本の国民に対する説明責任を果たす。
6.評価結果:
(1) 評価の視点
 本評価調査では、日本の草の根・人間の安全保障無償資金協力(教育、保健医療、生産性分野)について、目的、結果、プロセスの3つの観点から総合的に評価対象案件を検証する。特に次の人間の安全保障の実現のための6つのアプローチに対して参加型評価を行った。
(イ)人々を中心に据え、人々に確実に届く援助、
(ロ)地域社会を強化する援助
(ハ)人々の能力強化を重視する援助、
(ニ)脅威にさらされている人々への裨益を重視する援助、
(ホ)文化の多様性を尊重する援助、
(ヘ)様々な専門的知識を活用した分野横断的な援助
(2) 評価結果
(イ) 草の根・人間の安全保障無償資金協力の目的の妥当性
 草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームが主として対象とする基礎生活分野は、ボリビア政府の開発戦略及び保健、教育等の各分野を担当しているボリビア政府関係者の開発課題と整合しており、また、日本のODA大綱、ODA中期政策との整合性も確保された。
(ロ) 結果の有効性・インパクト
 中期政策に記載されている人間の安全保障の6つのアプローチに対する評価は次のとおりである。
(a) 人々を中心に据え、人々に確実に届く援助
 人々のニーズに基づいた人間と地域住民への支援は、裨益者の安全性と快適性の確保を可能とした。案件対象地域住民等に対して行った。アンケート結果によれば教育分野では72%、保健分野では76%、生産分野では84%の達成率となった。
(b) 地域社会を強化する援助
 共同体への支援は、組織強化を可能とし、共同体が現地の開発促進者となる成果を得た。特に生産部門への援助では、農民組織、生産者組織の参加プロセスが強化された。アンケート結果によれば、教育及び保健分野では60%、生産分野では76%の達成率となった。
(c) 人々の能力強化を重視する援助、
 プロジェクトの策定、実施決定メカニズム及び建設時の共同作業及び案件管理などの経験を通じ、エンパワーメント強化に結びついた。アンケート調査結果によれば、教育及び保健分野では60%、生産分野では76%の達成率となった。
(d) 脅威にさらされている人々への裨益を重視する援助
 脅威(欠乏と不安)に直面している都市部や農村部の社会層を対象としており、生活、生存、尊厳などが危機に晒されている共同体を優先した支援もしている。アンケート調査結果によれば教育、保健及び生産分野で各80%の達成率となった。
(e) 文化の多様性を尊重する援助
 種族や文化の多様性を認め尊重し、共同体の建設に貢献した。アンケート調査結果によれば、教育、保健及び生産分野で各80%の達成率となった。
(f) 様々な専門的知識を活用した分野横断的な援助
 案件地域に位置する地方自治体及び関連省庁との連携は部分的であり、特に地方自治体との連携が望まれる。アンケート調査結果によれば教育、保健及び生産分野で各60%の達成率となった。
(g) 住民へのワークショップ、アンケート調査プロセスを通じて、本件プログラムへの地域住民への認知度が高まったばかりでなく、住民がプロジェクトを再認識することにより、エンパワーメントが強化された。
(ハ) 草の根・人間の安全保障無償資金協力の計画及び実施プロセスの適切性
 案件形成段階:実施団体は一般的な目標設定だけが期待されており、個別案件に特定した目標や戦略の策定がなされていないため、効率的な案件実施のために特定な目標設定を行う必要がある。
 実施過程:的確に実施されているが、建設・改築案件等では、設計の変更が随時発生するため、柔軟な対応が求められる。
7. 提言:
 草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームについて、その目的、プロセス、結果について、特に中期政策に記載された人間の安全保障の6つのアプローチの有効性に対して、以下の提言が得られた。

提言1 参加型の評価を通じ、本スキームの枠組み及び「人間の安全保障」の6つの視点を広報できたばかりでなく、地域住民への案件実施後のエンパワーメント強化に結びつくことが可能となった。今後も定期的に参加型評価を実施していくことが望まれる。

提言2 保健・教育分野への援助に重点が置かれているが、一部で生産分野への同援助は住民組織強化に結びつく傾向にあると考えることから生産分野への案件形成を検討する必要がある。 

提言3 案件能力策定及び実施機関の管理能力の問題もあるが、交通の不便なより脆弱な地域である農村部への案件形成を計画的に実施する。

提言4 教育、保健及び生産などで指標を取ることが可能な場合には、特定的な指標をシステム的に管理することが必要と考えられる。この場合、申請者の負担増が高まるが、評価の際に役立つものと考えられる。

提言5 ボリビア政府内の大蔵省等の一部機関では、「人間の安全保障」の概念が認知されていたが、経済開発省等他の各関係機関においては、必ずしも認知されていないため、「人間の安全保障」の概念の具体化した草の根・人間の安全保障無償資金協力の情報交換及び普及を行う。

提言6 草の根・人間の安全保障無償資金協力の貢献度を明確にするために、案件対象地域の経済社会指標などのベースライン調査を実施することが望まれる。

提言7 政府関連省庁、各県行政府、地方自治体政府などと適宜調整を行うメカニズムを定め、持続性を確保する。
注) 上記は評価者が作成した西語の評価報告書を元に要約して大使館にて日本語訳したものであり、記載されている内容は、評価実施者の見解であり、日本政府の立場や見解を反映するものではありません。


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