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バングラデシュ運輸セクターにおける日本のODAに対する評価
(被援助国政府・機関による評価)

1.バングラデシュ運輸セクターにおける日本のODAに対する評価
2.調査対象国/現地調査国:バングラデシュ
3.評価実施者:インフラ投資促進センター(IIFC)コンサルタント
カジ・アブドゥル・カディル氏(Mr. Quazi Abdul Quadir)
S.A.S.M. タイフル氏(Mr. S.A.S.M. Taifur)
4.調査実施期間:2011年2月~2011年3月

5.評価方針

(1)目的
 本評価の目的は,日本が運輸セクター(2000年~2010年)において実施したODAの妥当性,効率性,有効性及び持続可能性について評価するものである。また本評価では,セクタープログラムにおけるODAプロセスの適切性についても考察する。

(2)評価の範囲
 本評価は,2000年から2010年までのODAによる運輸セクター関連案件を対象とするもので,ジャムナ橋アクセス道路,及び合計全長2.4キロメートルの2橋梁が主要な案件である。

(3)評価方法
 本評価は,日本国外務省の「被援助国政府・機関によるODA評価ガイドライン」に基づき,目的,結果,およびプロセスの3つの視点から行われた。本評価にあたり,ガイドラインに基づき,(a)トップダウン,及び(b)ボトムアップの2つのアプローチを採用した。評価手法としては,(i)机上レビュー,(ii)フォーカス・グループとの議論,(iii)調査,(iv)関係者に対するインタビュー等を実施した。

6.評価結果

(1)「妥当性」に関する評価
 評価対象のプロジェクトはいずれも国別援助計画の目的,日本ODAの諸目標及び重点項目に非常に合致したものであった。また,貧困削減戦略ペーパー等に言及されている被援助国であるバングラデシュの目標,重点項目にも合致。インフラ開発は,国別援助計画,第五次五カ年計画,貧困削減戦略ペーパー等において開発問題の核心となっている貧困削減,経済成長および開発の重要な柱といえる。

(2)「有効性」に関する評価
 本件対象プロジェクトは,西部および南西部地域において極めて効果的にそれぞれ成果を出し,望ましい変化をもたらした。建設された橋梁の質は非常に高いものである。アクセス道路も良質なものであるが,定期的メンテナンスの欠如や,最近,バングラデシュ運輸省道路局が取り組んでいる同道路への過負荷問題等により,状態は悪化している。これらのインフラにおける交通量の増加は,これら施設が生み出す利益を示すものである。

(3)「適切性」に関する評価
 これらプログラムの実施時のプロセスは適切なものであった。大使館,JICA,JBIC(旧OECF),バングラデシュ政府および他の開発パートナーの間においても,良好な調整が行われ,情報の共有,プログラム開発における共同アプローチ,及びプログラム改善のための視点の統合等がなされている。プログラムの持続可能性に対するアプローチも適切であった。

7.提言

(1) ジャムナ河東岸国道の改善
 運輸セクタープログラムは,大幅な交通量の増加に直面している。ジャムナ橋アクセス道路はすでにそのキャパシティーを超えて利用されており,息の詰まるような渋滞を引き起こしている。ボンゴボンドゥ橋(ジャムナ橋)は東部地域国道におけるキャパシティーをはるかに超えた交通量となっている。このことは,今後輸出や産業に悪影響を及ぼすこととなる。国道の拡張,およびダッカ・チッタゴン間を結ぶ代替ハイウェーの調査を優先的に行うことが不可欠である。

(2)バランスの取れた複合的交通手段の開発
 バングラデシュでは,道路,鉄道,内水路等の複合的交通手段につき不均衡な開発が行われている。道路網の負荷を軽減し,バランスの取れた効率的な交通システムを構築するためにも,道路以外の他の2つの交通手段(注:鉄道,内水路)についても開発を進めることが急務である。

(3)道路交通の安全に対する配慮 
 バングラデシュは深刻な交通安全問題に直面しており,その状況は悪化傾向にあり,交通事故死者数も増加している。バングラデシュは,車両1万台につき事故死亡者数100名以上という,交通事故による死亡率が最も高い国の一つである。また,交通事故は,約500億タカ(約8億5000万米ドル),すなわちGDPの約2%ものコストをバングラデシュに課していることとなる。右は,交通安全問題が深刻な国家的課題であることを示している。

(4)モングラ港の開発
 モングラ港の開発の成果に鑑みれば,事業の実施は効果があったといえる。パクシーおよびルプシャの二箇所の架橋は長年必要とされてきたが,その架橋が実現したことにより,効果的な道路交通が達成された。また,両橋は国内の北西部と南西部をつなぎ,モングラ港へのアクセスを容易にしている。道路網を有効に活用するためにも,地域の輸出入を促進するモングラ港の開発は不可欠である。

(5)厳格なPQおよび徹底的な調査の必要
 パクシー橋に関しては,第一落札者が建設契約に署名できなかったことから,プログラムの大きな遅れを招いた。アクセス道路およびルプシャ橋建設の土壌調査も不十分で不適切な面があった。建設契約に先立つ事前調査は入念に実施することが重要である。また,入札業者による「受注取りやめ」といった事態を回避するためにも,入札業者に対して,より厳しい資格審査(PQ)を予め行うことが必要である。

(6)契約実施のための事前計画
 パクシー橋の完成時期は6ヶ月半遅れているが,これは作業用地を予定通り引き渡すことが出来なかったためである。実施団体(バングラデシュ運輸省道路局)が詳細な事前計画を怠り,その結果,貴重な時間と予算に損失を与えるものである。

(注) ここに記載されている内容は外部第三者である評価実施者の見解であり,政府の立場や見解を反映するものではありません。


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