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相手国政府との合同評価

1.テーマ:インフラ分野における被援助国との合同評価
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2.国名:バングラデシュ
3.評価者他:
日本側
吉井幸夫 外務省開発計画課上席専門官
田辺 信 外務省開発計画課事務官
紀谷昌彦 在バングラデシュ日本大使館参事官
鶴田晋也 在バングラデシュ日本大使館二等書記官
安西尚子 コーエイ総研研究所主任研究員
下村暢子 コーエイ総合研究所主任研究員
高橋 恵 コーエイ総合研究所研究員
バングラデシュ側
Mr. Md. Wahidhur Rahman, Superintending Engineer, LGED
Mr. Md. Zahangir Alam, Project Director, LGED
Dr. Mohammad Jahirul Islam, Deputy Chief, LGD, MLGRD&C
Mr. Subhash Chandra Gosh, Chief, IMED, Ministry of Planning
Mr. Bazlur Rashid, Deputy Director, IMED, Ministry of Planning
Dr. Krishna Gayen, Senior Assistant Chief, Economic Relations Division (ERD), Ministry of Finance
Dr. Omar F. Chowdhury, Verulam Associates
4.調査実施期間:2005年10月~2006年3月

5.評価方針
(1)目的
 バングラデシュでは2005年に貧困削減戦略文書(PRSP)が完成をむかえたことから、貧困削減に直接的に関係する分野への日本の支援に焦点を当て、日本、バングラデシュ両国政府による評価を実施することとした。(1)日本の国民及びバングラデシュの市民に対する説明責任(アカウンタビリティ)を確保すること、及び(2)ODAの効果的・効率的な運営のため両国援助関係者にフィードバックを行うことを目的としている。
(2)対象・時期
 地方政府・農村開発組合省・地方政府技術局(LGED)が農村インフラ分野において高いプレゼンスを有してきたことに鑑み、1980年代後半より現在に至るまで同局(LGED)によって実施されてきた日本の経済協力案件を評価対象とした。
(3)方法
 近年の日本の対バングラデシュ支援は国別援助計画(2000年策定)に基づいているが、LGED所掌案件は同計画上「農業・農村開発」及び「災害対策」の2つの重点分野に対応する。これら2分野にはバングラデシュ政府他機関も関与するが、日本の支援に占めるLGEDのプレゼンスの高さに鑑みて、本評価はLGEDの所掌活動のみを対象とし、バングラデシュ国別評価(2004年実施)を通じて確認された目的及びサブ分野を評価基準として実施した。
 日本の支援内容を把握し易いように対象事業・取組を以下のグループに分類・整理し、目的、結果、プロセスの3つの側面から成る枠組みを設定した。
1)農村開発
 (a)農村道路網及び関連施設
 (b)簡易橋
 (c)小規模水資源開発
 (d)能力開発
2)災害対策
 (a)多目的サイクロンシェルター
 (b)洪水適応型生計向上
 また本評価はプログラム・レベルの評価であるため、個々の事業や取組ではなく、日本の対LGED支援の全般的傾向と総合的結果、ODAスキーム間の関係、バングラデシュ政府や他ドナーとのパートナーシップの度合い・内容等に焦点を当てた。

6.評価結果
(1)「農村開発」分野における日本の対LGED支援は、主に道路・橋梁などの「農村インフラ整備」に貢献をしてきた。既存調査やインタビュー結果によると、農村道路網整備により、輸送・移動の時間とコストの軽減、交通の増加、学校や公共サービス施設へのアクセス向上、所得・雇用の増加等数々の効果が生み出されている。JBIC・JICA連携による一ユニオンでの支援は、現在他4箇所にてLGEDがその手法を展開中であるが、ユニオンの機能強化と政府サービス向上のための有効なアプローチを提示し、「地方行政強化と参加型開発農村開発」に貢献した。小規模水資源開発への日本の関与はこれまでマスタープラン策定だけであるが、対象地域において県毎に参加型手法を導入し、「参加型農村開発」推進の一躍を担った。更に、種々の技術協力がLGEDの技術力強化を支え、「農村開発」の全体の目的に間接的に貢献してきている。今後の支援においては、1)他ドナーとの情報交換と調整、2)道路・橋梁(含む簡易橋)の維持管理に更なる重きを置く必要があるだろう。
(2)「災害対策」の分野では、日本の対LGED支援は主に多目的サイクロンシェルター整備に貢献してきた。1991年のサイクロンでは甚大な被害が出たが、1996~1998年のサイクロン襲来時にはシェルターと警告・避難システム整備により被害は最小限に留められた。シェルターの存在で、沿岸部の住民は安心感を抱き、就学率向上や地元コミュニティ活動の機会提供にも役立っている。サイクロンシェルターへの支援は、国別援助計画の「基礎的インフラとサービス提供」目的に合致する。洪水適応型生計向上のJICA開発調査は、「コミュニティの災害対応能力強化」も目的としていたが、調査後の具体的支援段階では「基礎的インフラ」にのみ焦点を当てることとなった。今後の課題としては、1)バングラデシュ政府側の実施体制の一貫性を確保するためドナー間で対話・調整を進めること、2)全体の資金配分を考慮した多目的サイクロンシェルターのコスト再検討が挙げられる。

6.提言
(1)メインテナンスの重視
 農村開発技術センター(RDEC)技プロや債務救済は技術的な能力向上や機材調達を通じて農村道路のメインテナンス強化に貢献してきた。LGED及び他のバングラデシュ政府関係機関は、特に簡易橋や多目的サイクロンシェルターのメインテナンスに注意を払うことが重要である。
(2)多目的サイクロンシェルター支援の受入機関の見直し
 他ドナーは初等大衆教育省(MoPME)を通じて支援を実施している。多目的サイクロンシェルター実施責任の所在は、メインテナンスの観点から、包括的災害管理政策(CDMP)の枠組みの中で再検討することが必要であろう。
(3)能力開発
 LGEDの優位性を維持し、将来のLGED幹部を育ててゆくために、組織、運営、技術の各面にわたる能力開発を、LGEDのオーナーシップの下、ドナー間でより密接に調整を進めつつ支援してゆく必要がある。
(4)プロジェクト間及びセクター間の連携
 特定のプロジェクトやセクターの境界線を越えた課題も捉えた、プロジェクト及びセクター横断的なアプローチに基づき支援を行うことはODA資源の有効活用と開発効果の向上にとって重要である。特に複数分野に関与するLGEDのような組織を支援するにあたってはそうしたアプローチが重要である。
(5)「LGEDモデル」の展開
 LGEDの役割は、その優秀な実施能力と、LGEDを実施機関としたいドナー側の希望との相乗効果よって拡大してきた。諸分野におけるLGEDの役割を総合的に捉えた上、類似分野で他機関と競争することによる効果と、重複や混乱を避け調整を進める効果との間のバランスを確保してゆくアプローチが望まれる。長期的には、LGEDが過度の負担を負わず「中核業務(コア・コンピタンス)」に集中できるよう、他のバングラデシュ政府機関に「LGEDモデル」を導入していくような支援が望まれる。
(6)情報管理・情報共有の向上
 LGEDのモニタリング・評価システムは、モニタリング、評価、新計画へのフィードバックというサイクルを機能させるため、更なる強化が必要である。バングラデシュ政府レベルでもモニタリング・評価制度の改革が検討されているが、将来的には政府システムとリンクさせてゆくことも重要である。同時に、日本側でも、関係機関・関係者間での情報共有の向上を目指したデータベース整備が望まれる。

注) ここに記載されている内容は評価実施者の見解であり、政府の立場や見解を反映するものではありません。


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