1. テーマ:バングラデシュ国別評価 |
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2. 国名:バングラデシュ |
3. 評価者他:
川上 照男 オフィス・あさひ代表取締役 公認会計士(評価主任)
山形 辰史 アジア経済研究所 開発スクール(IDEAS)教授
粟野 晴子 アイ・シー・ネット株式会社 シニアコンサルタント
百田 顕児 アイ・シー・ネット株式会社 コンサルタント |
4.評価実施期間:2004年8月~2005年3月 |
5.評価方針:
(1) 目的
- 今後のわが国援助の効果的かつ効率的実施に向けての教訓や提言を得ること。
- 本評価結果を公表することにより、援助の透明性および説明責任を確保すること。
(2) 対象・時期
バングラデシュ国別援助計画 (2000年3月策定)および、この国別援助計画の下で2000年4月~2004年8月に実施された日本のODAを対象とする。
(3)方法
「ODA評価ガイドライン」に準拠し、評価対象を1)目的の妥当性、2)過程の効率性、適切性、3)成果(有効性、インパクト)の3点から検証した。
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6.評価結果
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目的の評価
「国別援助計画」の目的について、旧ODA大綱などの日本の基本的な経済協力政策、相手国の主要開発計画などに見られる開発ニーズ、他ドナーが捉えていた開発ニーズや援助政策と整合したものかどうかについて、分析を実施した。
国別援助計画の内容は、旧ODA大綱、旧ODA中期政策が掲げる内容、重点分野、またIPRSPなど、バングラデシュの開発計画で示される重点分野や援助の方向性とも概ね整合し、他ドナーが捉えていた開発ニーズや援助政策ともバランスが取れており、妥当であったと言える。しかしながら、1)ガバナンスの改善やジェンダー格差の解消などの横断的課題への言及が限定的であったこと、2)援助計画の内容について、何を目指しどのようなアプローチで援助を実施するかが明確でないことなど、今後改善すべき点も見られた。 |
(2) |
過程の評価
過程の評価では、国別援助計画の1)策定過程、2)実施過程について、それぞれ適切性、効率性の観点から検証した。
1)策定過程
国別援助計画は、開発ニーズ、他ドナーの支援状況などを検討した上で策定され、概ね適切な過程が取られたと言える。しかし、我が国援助実施機関、バングラデシュ政府などの関与が低かったと見られる点、策定後に見直しが行われず、ニーズの変化に対応できなかった点、策定期間が2年に及んだ点は、改善または検討が必要であると考える。
2)実施過程
案件は、援助計画の内容を反映したJICA/JBICの国別実施計画や国別業務方針、現地ODAタスクフォースのセクター別援助方針に基づいて形成されており、全体に援助計画に沿った協力が検討・実施されている。スキーム間の連携や援助協調・ドナー連携、NGOとの連携にも、現地ODAタスクフォースを中心に活発に取り組んでいる。これらの取り組みは、現地ODAタスクフォースの活動に負うところが大きい。セクター別援助方針の策定など、これらタスクフォースの活動は、効果的な援助実施のための現地化のモデルとして高く評価できる。今後はこれらの取り組みを強化するため、現地体制の強化や柔軟なスキームの適用などを検討すべきである。
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成果の評価
国別援助計画策定後の我が国の援助実績について、「有効性」と「インパクト」の観点から分析した。ただし、本評価業務の対象期間が約4年半と短く、特に最近の案件に関しては援助効果の発現に至っていないものが多数存在するため、これらの実績とバングラデシュ全体のマクロ指標動向との直接的な関連性を検証することはほとんどできなかったが、保健医療分野など、一部地域での関連指標の改善が確認できる分野も見られた。
このように、地域レベルでは高い効果が発現している事業も見られるため、今後は援助効果を点から線につなげるための取り組み、普及モデルの確立、バングラデシュ政府や他ドナーへの成功例の発信、持続性・自立発展性への一層の配慮が必要になると考えられる。
この他、今後インフラ分野では大規模橋梁の整備による物流の改善など、マクロレベルの効果が期待されるものもある。また、電力部門や農村インフラ整備のように、技術協力などにより相手国実施機関の能力向上から得られる効果やインパクトも期待される。
成果の評価については、個別の実績に焦点を絞るアプローチだけではなく、援助協調という大きな潮流の中で、どのように援助の成果を評価していくかの検討が必要と考えられる。
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7. 提言
(1)国別援助計画・セクター別援助方針における目標の体系化
次期援助計画、および現地ODAタスクフォースが策定を進めている、セクター別援助方針の目的を、2005年度から実施されるバングラデシュ貧困削減戦略文書(PRSP)への支援に置き、PRSPの目標達成(貧困削減)への貢献を上位援助目標に置いた目標体系を作成すべきである。
(2)国別援助計画・セクター別援助方針のモニタリングと評価
バングラデシュ政府のPRSP実施のモニタリングと連携して、国別援助計画とセクター別援助方針の進捗や目標の達成状況をモニタリング、評価する仕組みの構築を検討すべきである。
(3)横断的課題への一層の配慮
バングラデシュで依然として大きな課題であるガバナンスの改善、ジェンダー格差の解消などの横断的課題について、関係の専門家の意見聴取などを通じて十分な配慮を払う必要がある。
(4)現地機能の強化
援助計画の実施とモニタリングの中核となる現地ODAタスクフォースについて、人材の充実(政策アドバイザー型の専門家派遣、現地NGOの積極的な活用)、現地での機動的な意思決定などの機能強化を検討すべきである。
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