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草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームの評価
(アフガニスタン)

1.テーマ:
「草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームの評価(アフガニスタン)」
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2.国名:アフガニスタン
3.評価者他:
(1)アフガニスタン政府経済省
(2)アフガニスタンNGO調整機構(コンサルタント)  
4.調査実施期間:2007年1月~2007年3月

5.評価方針

(1)評価の背景・目的

(イ)草の根・人間の安全保障無償資金協力は、日本政府がアフガニスタンの復興及び開発を支援することを目的として提供している協力であり、事業の実施はアフガニスタンの援助機関が担当している。草の根・人間の安全保障無償資金協力は、2002年以降、保健衛生、初等教育、厚生、環境改善、貧困削減、所得向上、女性に対する支援及び教育や職業訓練を通じた障害者への支援等の分野で優先的に実施され、これらのプロジェクトは元兵士及び帰還民の定着及び農村復興に資すると共に、アフガニスタンの復興及び開発を支援しているものである。日本のアフガニスタンに対する支援プログラムの中でも、草の根・人間の安全保障無償資金協力は、地域住民からのニーズに応え、長期的に問題を解決する手段として重要であり、また、最も成功している支援スキームである。

(ロ)アフガニスタンNGO調整機構は今般、アフガニスタン・イスラム共和国経済省の要請を受け、被援助国による草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームの評価を行った。本報告書は、草の根・人間の安全保障無償資金協力のインパクトを評価し、受益者を含むすべての関係機関からの反応を聴取し、アフガニスタンにおける草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームのより良い実施のための方策を提言することを目的とする。

(2)評価の対象と手法

(イ)カブール、ナンガルハル及びバルフの3県における30の草の根・人間の安全保障無償資金協力プロジェクトを対象とした。

(ロ)フィールド調査は、自由質問方式を採り、地方政府関係者、地域住民及び受益者に対し行った。評価は、(a)目的の妥当性、(b)実施過程の適切性、(c)実施過程の効率性、(d)有効性、(e)インパクト及び(f)持続性の6つの項目により行った。

6.背景説明

 2002年以降、国際社会はアフガニスタンに対し、205億ドルの支援を行ってきた。トップ・ドナーは米であり、それに続いてADB、世銀、EC及び日本が支援を行っている。日本はドナーの中では5番目に多くの支援を行っている。これらの支援は、地雷除去、アフガニスタン復興信託基金、NSPNational Solidarity Program)及びMISFAMicrofinance Investment Support Facility for Afghanistan)等のプログラムを通じ、アフガニスタンにおける数々の問題を解決しつつあるところである。

 それと同時にアフガニスタン政府は、開発プロジェクトの効果を持続的なものとするために更なる努力をしなければならない。現在、アフガニスタンの予算の90%はドナーによってまかなわれており、アフガニスタン政府は財政面でも管理面でも自立して機能することは現状大変難しく、アフガニスタンのこのような状況をいかにして改善していくかは開発に関係するすべての人々にとって重大な関心事項である。非効率的な予算運営によって、何百万ドルもの援助予算がまだ使用されていないのである。このため、ドナーは現地もしくは国際援助機関に直接資金を投入し、プロジェクトを実施する方法を選好している。多くの援助予算はアフガニスタン政府の予算を経由せずに使用されるようなシステムとなっているのである。そうしたこともあり、アフガニスタン政府は政府の機能及びキャパシティーをなかなか構築できない状況にあると言える。ドナーは政府の中に援助資金が有効に活用されるシステムを構築し、政府の自助努力をサポートするような役割を担うことが望ましい。

 アフガニスタン復興にとり、暫定版アフガニスタン国家開発戦略及びアフガニスタン・コンパクトが策定されたことは良いことである。暫定版アフガニスタン国家開発戦略は、農業、鉱業、地域貿易、国家資産を生産的に活用すること等を開発上の重点戦略として策定されたものであり、(イ)治安、(ロ)ガバナンス、法の支配及び人権、(ハ)経済及び社会開発の3つの柱で構成されている。

7.評価結果

 このように難しい状況にあるアフガニスタンではあるが、日本の草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームはアフガニスタンの開発における成功例のひとつと言える。すべての利害関係者は当該スキームに関し、前向きかつ建設的なコメントを述べた。

 まず、目的の妥当性に関し、特に高い評価を得ているのは、ニーズに対する迅速な対応及び持続的な成果の2点である。これらの2点は他のドナーの支援にはあまり見られないことからも評価が高い。草の根・人間の安全保障無償資金協力の実施過程についても高い評価を得ている。事業の実施主体は、地域住民をはじめとする利害関係者と協力しつつ、効果的にプロジェクトを実施している。地域住民、地域政府及び受益者は、草の根・人間の安全保障無償資金協力により建設された建物のみならず、その過程で利害関係者が共に協力し実施していくことができるところに満足している。このような観点からも、草の根・人間の安全保障無償資金協力は地域の基本的なニーズに応えていると考えられる。

 次に、実施過程の適切性については、プロジェクトは地方政府と共に実施主体が適切に選択をしており問題はないと考える。実施過程の効率性、有効性、インパクト及び持続性については、当国経済省もその実施過程に関与しており、地域住民のみならず、アフガニスタン政府も、これらプロジェクトの成果は大きく、またアフガニスタンが経済社会開発を進展させていく上でインパクトをもっていると評価している。

8.提言

 草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームに向けた提言としては、まず、アフガニスタンでは、地域住民及び帰還民からの、教育、保健及び灌漑等に対するニーズが大きいということである。またインフラ整備及び農業も引き続き支援の継続を検討すべき分野であると言えよう。草の根・人間の安全保障無償資金協力は効果的であると高い評価を得ており、アフガニスタン政府は今後も当該スキームの実施をサポートしていきたいとしている。当該スキームはアフガニスタン政府の開発プログラムと整合的に実施されている、本報告に基づき、日本政府及びアフガニスタン政府の双方が今後も草の根・人間の安全保障無償資金協力スキームのよりよい実施に向け努力し、その結果、アフガニスタン国民の生活が改善していくことを期待する。

注)上記は、評価者が作成した英文の評価報告書を元に要約して大使館にて日本語訳したものですが、記載されている内容は、評価実施者の見解であり、日本政府の立場や見解を反映するものではありません。

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