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イエメン・教育放送機材整備計画

1.評価対象プロジェクト名:教育放送機材整備計画

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2.国  名:イエメン共和国
3.援助形態:一般プロジェクト無償 1993年度 7億9,800万円
4.評価実施機関名:在イエメン日本国大使館
5.現地調査実施期間:2002年3月
6.プロジェクトの分野:通信・放送
7.政策目的又は政策の方向性:
 国民に対する情報の伝達強化と教育水準の向上
8.プロジェクトの目的:
 テレビ放送局の既存の老朽化した放送機材・設備を改善することにより、教育番組制作の強化・拡充を行い、貧困のため教育へのアクセスを十分確保し得ない当国国民に対し、国民の日常生活に必要不可欠な情報の伝達強化と国民の教育水準向上を図ること。
9.評価結果:
 当国の一人当たりGNPは約400ドルで、国民の47%が貧困レベル以下での生活を余儀なくされている。社会基盤が未整備であり、教育の機会も限られていることから、当国国民の非識字率は全人口の55%と極めて高く、学齢期にある児童の就学率は64%と極めて低いレベルにある。イエメン政府は、第1次開発5カ年計画(1996-2000年)、第2次開発5カ年計画(2001-2005年)及び貧困削減戦略書(PRSP)を策定し、人材育成への取り組みを政策面での重要な柱の一つとしており、国民の教育水準の向上を目指して真剣に取り組んでいる。
 こうした中、イエメン政府は、テレビが広く全国に普及しテレビ送信ネットワーク内に国民の80%以上が居住していることに着目し、テレビ放送を国民の日常生活上必要不可欠な各種情報及び教育・教養水準向上のための情報源として有効活用を図る計画を策定した。しかしながら、既存の放送機材・設備では性能面に限界があり、緊急に番組制作設備を整備することにしたが、財政難による外貨不足で自己資金では必要な機材が調達できなかったことから、わが国に支援要請がなされたものである。
 本件は、上述のイエメン政府の重点政策に合致するとともに、開発途上国の社会基盤の整備と人造り支援に貢献し、広く一般大衆に裨益する効果がある点でわが国の援助政策とも合致したものである。
 評価調査の結果、放送機材・設備はすべてにおいて行き届いた維持・管理がなされており、かつ、有効に活用されていることが確認された。また、本件計画により、週2-3本の教育番組が制作され、1日平均1.5-2時間は確実に教育番組の放送時間が延長された。従って、テレビ番組による教育放送番組の強化・拡充という観点からアウトプットは具体的に現れている。また、現在の番組編成の内容をみると、政治、経済、文化、保健・医療、教育など幅広い番組が制作・提供されており、国民の啓蒙と一般教養・知識を高める工夫は十分なされているものと判断される。しかしながら、テレビ番組は視聴者にとっては受動的なものであり、どれだけ国民の教育水準の向上に効果的であったかという点を、数値として評価することは困難である。従って、視聴者から寄せられる番組に対する意見・反響をモニターする制度を導入することで効果を測る等の工夫が必要であろう。
 当国は人口増加率が全国平均で3.5%と世界でも極めて高いレベルにあり、人口は年々増加し生活区域も急速に拡大している。一方、イエメン政府による学校教育制度改革はようやく緒についたばかりであり、制度が確立されるまでには今後相当の年数を要することを考慮すると、テレビ番組による国民への啓蒙と教育は不可欠であり、わが方支援による本件計画は今後とも当国の国民生活に必要な情報を提供し教育水準の向上に重要な役割を演じるものと考えられる。
10. 提言
 今回の評価においては、将来的に必要となる機材のスペアパーツの確保と日進月歩である番組制作の技術レベルの維持・向上が懸案事項として認められた。前者については、イエメン側はしっかりとした計画をもって必要な予算手当をすることが必要であるし、後者については日頃の研鑽が必要であり、この点でわが国として継続して支援していくことが望まれる。
 本件計画は、テレビ番組により国民の日常生活上必要不可欠な各種情報及び教育・教養水準向上のための情報提供を図るという目的に適う成果を上げつつあるが、学校教育が充実してこそ相乗効果をもたらすものであり、この点でわが国としても当国の学校教育への支援を今後も継続していくことが有益である。

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