1. 評価対象プロジェクト名: 北西辺境州における教育向上支援 |
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国 名: |
パキスタン・イスラム共和国 |
実施機関名: |
北西辺境州 |
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3. 援助形態:
一般プロジェクト無償 1994年度~1996年度
1994年度: 4.06億円 1995年度: 7.86億円 1996年度:2.24億円 |
4. 評価実施機関名: 在パキスタン日本国大使館 |
5. 現地調査実施機関: 2002年4月8日~9日 |
6. プロジェクトの分野: 人的資源 |
7. 政策目的又は政策の方向性:
未就学児童の救済を図り、就学率の向上に寄与するとともに、充実した施設によって初等教育の質的な改善向上に資する。
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8. プロジェクトの目的:
北西辺境州にモデル小学校(男女共学校)30校を建設し、約6,000人の児童を就学させ、特に供与した理数科教材を使ってより質の高い教育を実施する。
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9. 評価結果:
本計画は1996年度までに当初の予定通りモデル小学校30校を建設し、1997年3月施設等の引渡を実施したもので、今回訪問した小学校は都市部のハヤタバードと農村部ニュートゥルランディの2校であったが、小学校の運営は対照的であった。
1.ハヤタバード
全校生徒は211人(男子113人、女子98人)で、各クラスに担任教師がおり、また一週間の授業予定表も確実に作成されており、訪問時にはパソコン教室の開所式が行われた。また、供与した理数科用教材を使用して授業も行われていた。
2.ニュートゥルランディ
全校生徒は54人(男子12人、女子42人)で、校長は3ヶ月前から不在、一週間の授業カリキュラムも整っておらず、供与した機材については、村の催しに机、椅子等を貸し出した際、破損して戻ってきたものがあった他、教材の一部(コンパス、分度器等)は高学年の児童の登校実績が悪いことから、あまり使用されていなかったが、概ね活用されていた。
○訪問後、州の教育局との面談において、日本が供与したニュートュルランディ校の現状を訴え、校長の早期就任、授業カリキュラムの作成、機材の有効利用について要請を行った(後日、当館が修教育局に確認したところ、ニュートゥルランディ校に対して、校長は当面の間、現在の教師のうちの1人を代理として就任、カリキュラムついては作成に取りかかっている。また、破損機材等については修理などの必要な措置を講じた上で使用していくように指示を出したとの回答があった。)
一般にパキスタン国内では、都市部と農村部との修学格差は大きく、都市部では住民は比較的豊かで子供を学校に通わせることができ、教師も応募が多いが、農村部では収入がほとんどなく(ニュートュルランディ地域では月にRS.70(約140円)の月謝すら払えない。)、子供は家の仕事を手伝うのが当然で、とてもとても小学校へ通える状態になく、また、治安上の問題から、農村部で教師(特に女性)として働くと言うことは困難を極めるということが背景としてあるとのことであった。
就学率の向上(特に農村部)はパキスタンでも重要課題(Education For All政策)となっており、これに基づき担当部署では地元の有力者とも面談を行うなどして、就学に対しての理解を求めているのが現状である。
本プロジェクトで建設したモデル小学校は都市部においては当初の目的を十分果たしているが、農村部においては就学阻害要因(貧困、父兄の無理解、男女共学への不信感等)も強く、州の教育局との連携の下、その運営について注視していくことが必要不可欠であると考える。
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10. 提言:
北西辺境州の就学率は都市部が約60%、農村部が約30%に留まっている現状もあり、本プロジェクトで建設したモデル小学校全てが十分に活用されるためには、まだ時間を要すると思われるが、農村部の意識改革、授業料の低廉化等を図り就学率を向上させていくことで、モデル小学校の就学者数も増えるものと期待できる。
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