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「ネパール・インフラ整備分野」評価報告書

■日本貿易振興会アジア経済研究所研究コーディネーター
 井上恭子

I はじめに・調査の対象プログラムとその概要・調査の内容

1.経緯・プログラムの内容

 ネパールのカトマンドゥ国際空港(Tribhuvan International Airport)空域で1992年に、7月31日にタイ航空機が墜落(113人死亡)、また、9月28日にはパキスタン航空機が墜落(157人死亡)と相次いで航空機墜落事故が発生し、日本人を含む多数の犠牲者がでた。連続して発生した航空機墜落事故を契機に、カトマンドゥ国際空港の安全性が問題となった。それまで同空港では、無線連絡と目視による航空管制が行われていたが、航空安全性を向上するためにレーダーによる航空管制を導入することが検討され、ネパール政府から日本政府に、カトマンドゥ国際空港の整備計画策定の要請が出された。

 これを受けて日本政府は1994年に、レーダー関連施設、レーダー管制訓練設備、レーダー機器の設置に対して無償資金協力実施を決定した(「カトマンドゥ国際空港整備計画」)。E/N供与限度額は34.53億円、内容は、調達機材・建設施設として、空港監視レーダー、2次監視レーダー、航空管制官訓練用のレーダー管制シミュレーター、レーダー保守要員訓練用の整備実習教材、通信施設、電源施設などである。工事は1995年6月に始まり、1997年8月に終了した。これと並行して、JICAによる技術協力としてネパール管制官・管制技術官の訓練事業が開始された。航空保安長期専門家は1994年から2000年の間に計3名が派遣され、レーダー管制長期専門家は1994から通算4名で現在4人目が派遣中である。また、両分野合わせて19名の短期専門家を派遣している。

 工事終了後、カトマンドゥ国際空港の既存機器の老朽化などに起因するトラブルが発生した。そのことによる新規施設への障害を除去し効果を高めるために、空港航空管制設備改善計画(「トリブバン国際空港近代化プログラムにおける航空管制設備改善計画」)が実施された。これは無償資金協力12億7200万円(供与限度額)で、対空通信施設設置等の改善のために、飛行場管制関連機材と、航空路管制関連機材、気象関係情報装置、電源関連機材の調達と設置である。工事は2001年3月に終了した。

 なお、1997年11月頃から、UHF通信システムに混信、通信機材障害が発生し、レーダー管制業務への障害となったことから、フォローアップ事業によりUHFリンクが設置された。

 カトマンドゥ国際空港は、1998年1月にレーダー試運転を開始し、1998年9月9日にレーダー管制業務が開始された。

 このプログラムのネパール側実施機関は、カトマンドゥ国際空港を含む国内空港を管轄下に置くネパール民間航空公社(Civil Aviation Authority of Nepal:CAAN)である。CAANは旧民間航空局(Civil Aviation Department、Ministry for Culture, Tourism and Civil Aviation)で、1996年立法で公社に組織改編された。公社発足は1998年12月31日で、公社としての活動開始は2000年2月1日である。


2.調査の方針

 今回の調査では、カトマンドゥ国際空港への無償資金協力と技術協力により導入されたレーダー管制システムの、(1)必要性・緊急性、(2)航空安全性への貢献、空港利用効率への貢献、管制システムの管理・運営の自立性、(3)技術移転、(4)ネパール経済への効果を検討することを検討事項とした。そのため、日本における情報収集・分析に加え、現地カトマンドゥを訪問し、プログラムに関する基礎的情報・資料を入手し、カトマンドゥ空港施設ならびに関連施設を視察、さらにプログラムの担当者・担当機関、関連機関を訪問し、事情聴取、質疑を行った。調査は2002年2月に開始し、国内での基礎資料・情報収集、専門家との意見交換を行い、2002年3月11日(月)から3月15日(金)に現地調査を実施(現地調査の訪問機関・面会先は別紙参照)、帰国後、追加情報収集・分析作業を行った。


II 個別検討事項

1.プログラムの必要性・緊急性

 航空機墜落事故という惨事を経験したことによる、速やかな航空安全強化の緊急必要性があり、レーダー施設導入による航空管制の改善による安全性の確保が対策として取り上げられた。このプログラムによって、まず、カトマンドゥ国際空港の信頼性・安全性・効率性がどのように高まったかを検討した。

 直接的な目標と期待される成果は、レーダー施設等の整備、無線施設・電源等の改修により、レーダー管制が有効に実施され、カトマンドゥ国際空港の安全性・信頼性が確保され、維持され、向上することである。レーダー管制・保守訓練施設の設置と専門家派遣によるネパール航空管制官・管制技術官の質的・量的な改善により、カトマンドゥ国際空港レーダー管制が有効に運営され、また、管制・保守技術が自律的に保持・改善されることにより継続的で安定的な航空管制体制の実現が可能となった。

2.安全性・信頼性・効率性

 ネパール唯一の国際空港であるカトマンドゥ国際空港は、3100メートルの滑走路1本を持つ。同空港はカトマンドゥ盆地のなかにあり、標高は1338メートルである。航空機は、盆地の周囲にある2000~3000メートルの山を越えて空港に離発着する。従来の無線連絡と目視による航空管制に加えて導入されたレーダー管制は、捕捉空域を飛躍的に広げ、航空機の運航と航空管制を容易にし、空港の信頼性を高めた。

 カトマンドゥ国際空港の利用時間帯はレーダー管制導入により拡大した。それまで空港は旧機器では日中のみの稼働で、午後5時頃には運行停止となっていたが、レーダー導入により運営時間帯が広がり、運行スケジュールの乱れが減った。実際には、後で述べる空港の地形的条件により、空港運営時間には制限があるが、「技術的には24時間稼働が可能」(Civil Aviation Authority of Nepal, Civil Aviation Report 2000, p.1)で、運行スケジュールの過密化も可能となった。

 カトマンドゥ国際空港の利用度も高まった。永くRoyal Nepal Airlines(RNAC)がネパール唯一の航空会社であったが、1992年にネパール政府が国内路線に民間の参入を認め、ネパール民間航空会社設立が相次いだ。カトマンドゥ国際空港は、これらの民間航空会社による定期・不定期航空路の運行やヒマラヤ遊覧飛行などの観光飛行のために利用されるようになった。空港のレーダー管制による円滑な離発着操作は、これら民間航空会社の参入と、それによる小型機やヘリコプターを含む多様な航空機の運航を容易にしている。

 なお、レーダー稼働後にカトマンドゥ国際空港空域で航空機墜落事故が2件(1999年7月ルフトハンザ貨物便が離陸直後に墜落、5人が死亡、1999年9月にネパール民間航空会社NECON AirのHS-748が着陸の途中でタワーに接触墜落、15人が死亡)発生したが、これらはレーダー管制の責任範囲外の事故とされている。

 表1から表5は、カトマンドゥ国際空港の利用状況を示している。

 表1はカトマンドゥ国際空港の国内線・国際線別の発着回数、表2は同旅客取扱数である。発着回数と国際線旅客取扱数は1999年をピークに減少し、2001年には国内線、国際線とも発着回数は前年比で減少している。旅客取扱数は、2001年には国内旅客数が若干回復したものの国際旅客の減少により、旅客数合計は前年を下回った。表3で見るように貨物取扱数も減少している。

 表4はカトマンドゥ空港を利用する国際航空会社の路線と機種、表5はカトマンドゥ空港を利用するネパール航空会社の路線と機種である。ネパールは現在31の国際航空会社と運行協定を締結しており、表4はカトマンドゥ国際空港を利用する外国航空会社と機種および路線である。これらの国際航空会社のうちQatar Airwaysは1996年から、さらにTransavia Airlines、Gulf Air、Austrian Airlinesの3社は1998年に運行を開始している。

 残念ながら、これらの表からは、カトマンドゥ国際空港の利用状況がレーダー導入以降改善されたと言うのは困難である。ただし不振を示すこれらの数値の背景には、国際経済不況による貨物輸送の減少、外国人旅客の減少、国内治安悪化の影響、ネパール経済不振、さらに2001年9月のアメリカでの同時多発テロ以降の情勢の悪化で旅行を控える人が多い、などといった、カトマンドゥ国際空港管制施設整備とは無関係の要因がある。今後、これらの要因が改善ないし解消されれば、状況は好転しうると考えられる。状況が悪化する以前には、僅かながらも上向きが見られる数値もあり、状況の改善が進むならば、その際にはカトマンドゥ国際空港のレーダー施設の利用による各面への貢献が発現するであろう。

 このような状況に加えて、次のようなネパール固有の航空事情、カトマンドゥ国際空港の所与の条件があることから、空港レーダー施設の利用は、現時点では限定的にならざるをえない。

 まず、現在、レーダー誘導による計器飛行方式(IFR)の航空機は1日10~15便であり、残る8割の航空機は国内43の地方空港離発着機で、これらは有視界飛行方式(VFR)をとっている。従って運行は昼間が中心となっている。レーダー施設は、技術的には24時間の稼働が可能であるが最大限利用されているとはいえない。

 また、カトマンドゥの地形は盆地で、盆地の周囲を山が囲んでいるため、レーダー覆域が限られている。稜線の外側の低空域が現在のレーダーで捉えられず、低空域を飛行するVFR航空機をレーダー・モニターで完全に補足するのは困難である。

 さらに、地形、自然条件では、カトマンドゥ盆地を川が横切るという地形から、冬季の午前中に濃い霧が発生し、その間は、レーダーの使用でIFR航空機の発着は可能であるが、IFR計器が装備されていないVFR航空機の離発着が困難となる。

3.技術移転の効果(航空管制・完成設備保守の人材育成・技術普及)

 JICA専門家によるレーダー管制官・管制技術官の育成は、レーダー管制官16人、レーダー整備技術者20人が計画された。JICA専門家による、訓練シラバス作成、レーダー管制訓練・レーダー管制業務方式の策定、ネパール人管制官へのレーダー管制訓練教授・指導官育成などが進められてきた。航空管制は、JICA専門家(1代、2代)によるレーダー運用に向けた訓練・資格試験で15人にレーダー管制官の資格が与えられ、レーダー運用開始後は、JICA専門家(3代、4代)による管制官訓練教官の育成が進められ、ネパール人管制官による訓練・資格試験が実施され、12人がレーダー管制官の資格を得た。航空保守技術では、管制技術官としての訓練・資格付与、レーダー技術官資格制度・技能証明制度の確立、保守・システム管理の体制構築などが進められた。CAANに要請して各空港から管制官を募り、リフレッシャー訓練も実施している。

 管制官・管制技術官の育成は、航空アカデミー(Civil Aviation Academy:CAA、旧Civil Aviation Training Centre (CATC)) で実施されている。CAAN、CAAでは、レーダー導入にともなう航空管制人材育成がJICAの専門家の貢献により順調に伸展していることについて、高い評価が聞かれた。CAAはさらに、「人材育成の国内化(ネパール人による管制官訓練体制)が進んでいる」とし、CAAの将来構想として「外国から訓練生を受け入れて、国際航空管制訓練センター化する」などの積極的な意見が出された。現在、航空管制官は本年度訓練計画で14人が訓練を受けており、この14人がレーダー管制官となれば当面レーダー管制官の人員不足はなくなる(3月14日、CAA、Mr. Ram Bahadur Mali)ことも、このような将来構想の根拠となっているのであろう。

4.観光開発ほかネパール経済への影響・貢献

 レーダー導入による空港施設整備で、航空運輸が拡大し、ネパールの重要産業である観光業および観光関連産業が発展し、ネパール経済の発展に貢献することが期待された。

 ネパールの観光外貨収入は、1997/98年度13,104万ドル、1998/99年度17,140万ドルと伸びたが、1999/00年度には16,985万ドルに下がった。その理由は、上述のカトマンドゥ国際空港利用状況で述べたものと同じく、ネパールが対処困難な問題による。ネパールが期待する観光業は、治安の回復と国際経済の回復を待っており、カトマンドゥ空港の有効利用も同じである。ネパール政府は、観光振興策として2002年から2003年には「Destination Nepal Campaign」、そのなかで2003年5月29日には、1953年のエヴェレスト初登頂50周年を記念して「Mount Everest Golden Jubilee Year」を計画している。また、査証料引き下げ、トレッキング地域をあらたに6地域開放、未開放峰を新たに103峰開放し全263峰とし入山料を大幅に引き下げ、といった措置もとり、観光客招致努力をしている。外国人旅行者の87%が利用する(Mr. Shanker P. Koirala ( Department of Tourism)より、3月14日)カトマンドゥ国際空港の安全性・信頼性の向上が、キャンペーンに貢献することが期待される。


III 総合評価

1.全体評価

 空港レーダー導入により、カトマンドゥ国際空港の安全性が向上し、管制への信頼性が高まった。ネパール当局からの本プログラムへの評価は高い(CAAN、CAA、文化・観光・民間航空省、カトマンドゥ国際空港、大蔵省での聞き取り)。

 カトマンドゥ国際空港の安全性・効率性改善にともなう効果は、前に述べたような、レーダー管制導入と関係ない事情があるため、見えにくい。しかし今後、これらの諸事情が改善されれば、空港が有効に活用され、ひいてはネパール経済への貢献度も高まると考えられる。

 レーダー管制に関する技術移転・人材育成は、JICA専門家による訓練、資格付与制度の構築を経て、ネパール人教官による訓練・資格付与体制構築の段階に進んでいる。

2.いくつかの問題

(1)保守に関する問題
 レーダー施設の維持・保守についてネパール側から不安が示された。CAANでは、技術要員育成の不足が指摘され、「日本人専門家のさらなる派遣」の希望が表明された(3月11日、Mr. Sharma)。また、文化・観光・民間航空省では、緊急課題として保守管理への不安があるとして、日本側によるオーバーホールと部品調達の希望が表明された(3月11日、Mr. Yagya Prasad Gautam)。CAAでも同様の要請が出された(3月14日、CAA、Mr.Ram Bahadur Mali)。
 レーダーによる航空管制という高度技術を伴う技術移転の定着には、多くの課題があり、中長期で見ていく必要がある。レーダー施設導入に付随して、その高度技術に対応した保守・管理技術体制の確立が必要である。この点についてネパール側に、設置機器の操作、保守・管理への不安と懸念があるのであろう。しかしこれには、とくに二つの点に注意して見ていく必要がある。
 まず、故障発生への対応体制と事故予防体制は確立されつつあるのかという点である。ネパールでは高度技術に対応した事故予防・チェックの習慣に乏しい。そのため、レーダー技術に対応した事故予防体制の確立には時間を要するのではないだろうか。JICA専門家の森氏が指摘するように、「事故防止・予防的点検作業体制の定着が課題」(3月12日、森氏との面談)であろう。このことは航空管制の人材育成全般にも深く関係する。航空技術官・管制官の技術レベルの維持と向上は可能となったのか、という点は重要である。過去3名の航空保安専門家が作り上げた、ミスの発生を確認し調査し、その調査結果を積み上げてミス防止体制を構築し維持していくには、基本的な作業の重要性を認識し、作業を継続することが必要である。本報告者は、カトマンドゥ国際空港施設で無停電施設を見学した。作業室の机に記録帳が置かれ、朝と夕の定期点検を行った都度、担当者が点検結果を記すようになっている。日時と名前、簡単なメモが書かれているだけであるが、このような作業記録を維持しつづけることの重要性の認識から始まる保守・事故予防体制の確立と定着には、担当者個人のみならず組織的な意識改革が必要で、これには時間を要するであろう。在庫管理、定期点検、保守手順の確認と徹底といった、レーダー導入に必要な対応は、過去に派遣した航空保守専門家の指導内容に基づき、今後、ネパールが自律的に取り組む必要がある。レーダーという高度技術の利用・定着のためには、ネパールが自ら細心の注意と努力を払い続ける必要がある。
 もう一つの問題点は、ネパール側が保守管理を自己負担することを了解のうえで本プログラムは実行されているのであるが、現実問題としてレーダー施設の保守・点検・部品交換・修理をネパール自身が独自に行うことは、技術的にも資金的にも困難なのではないかという懸念である。とくに問題となるのは、部品調達・定期保守に要する多額の資金が財政的に確保されているのかという点である。この点で、ネパール側の、レーダー管制制度を維持していく上での自律性・自立性の確立が重要である。
 カトマンドゥ国際空港は、CAANに属する国内空港の一つである。財政・経営の最終決定権はCAANに委ねられている。そのCAANで「機材の保守に不安がある、JICA専門家がさらに必要である」との発言があった(上述、CAAN、3月11日)。この発言は、CAANが、レーダー施設の今後の管理に要する予算の確保に不安を持っていることを示しているのではないだろうか。この点に関しては、CAANの組織体制に、この問題解決を困難とする事情があるのではないかと考える。端的に言うと、CAANの財源調達能力の不安と、決定力の欠如という問題である。カトマンドゥ空港のレーダー施設の運営・保守に、必要な資金を充てる意思と力がCAANにあるかどうか、確証を得られなかった。
 一例を挙げると、たとえば、CAANは、公社化されたことで、財政的自立を要求される。CAANの最大の収入源は、カトマンドゥ国際空港の各種使用料金である。収入増を期して2001年3月には空港使用料金を改正した。しかし空港使用料金の回収が進んでいない。使用料金の多くは未払いのまま次年度に繰り越され、未払い金が積み上がっている(表6)。未払い金の種類は多岐に渡るが、そのうち航空会社の未払い金の額が最も大きい。なかでもRNAC、NECON Airなどが大口の未払い金を抱えている。これらの未払い金を回収する能力がCAANにあるのだろうか。RNACの未払い金累計額は1999/2000年度時点でCAANの未回収金累計額の約6割を占めているが、RNACは、1992年以来民間航空会社の参入による価格・サービス競争の結果、採算割れの路線がでており、業績が急激に悪化、2001年には従業員への給与支払いが一時的に滞るといった事態も生じており、支払い能力に疑問を抱かせる。また、RNAC、NECON Airは、CAANの最高決定機関である理事会(Board of Directors)に代表を送っている。大手顧客であるこれら航空会社からの理事会参加は、CAANの事業運営の改善・効率化に貢献しうるが、一方、CAANの自律的な運営に不安を抱かせる。この不安を払拭させるような、また、カトマンドゥ空港のレーダー施設の円滑な運営を保証する方向でCAANの企業努力を感じさせるような発言は、得られなかった。


IV 結論と提言

1.本プログラムに関して

 全体として肯定的評価(空港管制の安全性・信頼性の改善、カトマンドゥ国際空港の効率性の改善、人材育成・保守管理体制の現地化の進行など)が下せる。

 ただし、(1)器材保守・部品調達に資金面の不安が示された点、(2)「第2基レーダー導入」の扱いが不明な点、が問題として存在する。第2基レーダー導入については、CAAN、大蔵省、文化・観光・民間航空省で、その必要性を強く訴えられた。本報告者は、第1基レーダー設置に続く第2基レーダーの導入は、カトマンドゥ国際空港のレーダー管制体制を強化し安全性・信頼性を高めるために必要であると考えるが、ネパール側の要求に早急に対応して実施に移すべきではないと考える。その前にまず、過去のJICA専門家が指摘してきたとおり、「カトマンドゥ国際空港整備計画」により実施されたレーダー管制とレーダー保守・管理の実情を把握し、計画目標に及ばない、もしくは不備な点があればその是正をネパール側に求め、レーダー管制体制の運営面でのネパール側の自律性・自立性の確立を確認したうえで、以降の計画を進める必要があろう。

2.本プログラムに関連して考えられる日本の対ネパール経済援助に関して

 航空管制レーダーと管制技術という、高額で高度技術移転を伴う性格の援助は、着手した以上は今後も日本が継続して関与する必要があるのではないだろうか。ネパールの財政事情を考えると、機器の保守と修理、部品調達に不安が残り、その不安が増大すると空港の安全性と信頼性を損ないかねないからである。しかし日本の関与が必要とはいえ、安易に援助供与を進めるべきではないと考える。カトマンドゥ国際空港へのレーダー管制の導入と維持・運営には、CAANの経営的・資金的な自律性・自立性の達成(もしくは達成努力)が重要である。CAANの自律性・自立性の達成を厳格に確認したうえで、進めていく必要があろう。

以上


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