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レバノン共和国・
シューフ・レバノン杉保留地における貯水池造成計画

1. 評価対象プロジェクト名:
 シューフ・レバノン杉保留地における貯水池造成計画

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2. 国  名: レバノン共和国
実施機関名: シューフ・レバノン杉協会
3.援助形態:
 草の根無償資金協力、1998年度、US$54,998
4.評価実施機関名:在レバノン日本国大使館
5.現地調査実施期間:2002年4月18日
6.政策目的又は政策の方向性:自然保護及び地域開発
7.プロジェクトの目的:
 レバノン杉群生地を含む保留地内での生態系の均衡を保つため、貯水池を造成し、保留地内での野生動物の定着を図る。
8.評価結果:
 レバノン杉はレバノン国旗の中心に描かれレバノンにとっては国の象徴とも言うべき樹木である。シューフ郡及びベカー郡に跨る自然保護区「シューフ・レバノン杉保留地(総面積550km2)」は、当国有数のレバノン杉群生地を有し、これまで哺乳類27種(狐、山猫類で世界的に貴重とされるものが12種)、鳥類104種、植物124種の存在が確認されてきた。
 保留地を管理するNGO(シューフ・レバノン杉協会)は、最近の恒常的な水不足により既存の生態系の均衡が失われる危険性を指摘した上で、標高1,000~2,000メートルのカルスト地形の高地にあり地質調査では地下水脈を利用することが困難であることから、わが国草の根無償資金協力により、山頂付近の丘陵地を掘削し雪解け水を1年中利用する貯水地を建設する計画を策定した。
 このように、本計画は同保留地管理NGOより保留地内の生態系、自然環境に対する綿密な調査を経た後に協力の要請があったものであるが、コスト及び社会的インパクトの面からみて妥当なものであった。
 同計画実施により、レバノンでは絶滅されたとされてきたガゼルをはじめ赤狐等貴重な野生動物が貯め池に水を求め訪れていることが確認され、現在池の外縁には自然植物が徐々に繁殖しつつある。この人工池の成果はメディアでも数回報じられ、年間4万人の保留地訪問者(エコ・ツアー参加者)の人気スポットになりつつある。元来の目的である動植物の保護に加え、副次的な裨益効果も見られ、高い援助効果が得られた。(2001年度には新たに、草の根無償資金協力によりシューフ保留地での学童のエコ・ツアーのための自然教育センター整備計画を実施した。)
9.提言等:
 本案件は、レバノンの水事情(10月~5月にかけては山岳部での降雪を含め降雨量が多いが、標高差が激しく降雨を十分に利用できていないため、夏期(5~9月)には水不足に悩まされている)を十分考慮した妥当性の高い支援であった。従って、同国における水供給案件は今後とも実施検討に値する。
10.外務省(本省)からの一言:
 中東地域において水問題は重要であり、環境問題についてもその重要性の認識は高まっています。レバノン人が誇りとするレバノン杉に関わる案件で注目度も高く、草の根無償資金協力を活用したこのような案件は非常に有意義だと考えられます。


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