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ホンジュラス・
貧困女性研修センター建設計画

1.評価対象プロジェクト名:貧困女性研修センター建設計画

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2. 国  名: ホンジュラス
実施機関名: アドラ国際援助機構
(米国NGO)ホンジュラス支部
3.援助形態:
 草の根無償資金協力 1999年 9,875,670円
4.評価実施機関名:在ホンジュラス日本国大使館
5.現地調査実施期間:2002年2月14日、24日
6.プロジェクトの分野:社会配慮
7.政策目的又は政策の方向性:
 ホンジュラスの発展のためには貧困国からの脱却が必要であり、その問題の根幹となる貧困削減を草の根レベルの援助を通じて推進していく。
8.プロジェクトの目的:
 ホンジュラスにおいて女性の社会的地位は歴史的、文化的に低く、また貧困層を占める大部分は未婚の母が家計主である、もしくは父親が不在である家庭である。本プロジェクトは、貧困女性研修センターを建設し、貧困層の女性や未婚の母親など、社会的に弱い立場にある女性に適切な啓蒙教育、職業訓練、治療活動を実施することで彼女たちの生活向上を計り、社会的、経済的自立を実現させることを目的としている。
9.評価結果:
 わが国の援助による施設建設は計画通り終了したが、施設に設置する各国、機関からの機材供与が遅れたこともあり、半年程度施設の利用開始が遅れた。そのため、調査時においてはまだプロジェクト開始から6ヶ月程度しか経っておらず、長期的な効果はまだはっきりと出ていない。なお、2000年末より識字、算数等の教育、洋裁や調理等の職業訓練プログラム、栄養管理、母子保健に関する啓蒙教育、零細企業経営、貧困層に対する歯科医療等の各プログラムが開始された。
 本案件で建設された研修センターでは、年間予測で延べ約2,000人の貧困女性に対する歯科治療、800人に対する職業訓練などが開始されており、毎日多くの貧困女性が同センターを訪れている。また同センターへのプログラムには、貧困地域の働く意欲があり読み書きのできる女性であれば、信仰宗教・政治・民族の一切を問わず誰でも参加できる。(参加資格を読み書きが出来る女性に限ったのは、各訓練が終了した後、参加者自身が自分の集落に帰り、訓練を受けていない、または受講出来ない女性達へ、ボランティアとして講師となって教えるために読み書き能力が最低限必要であるため)。
 調査時には、ボランティア講師養成セミナーが実施されており、テグシガルパ市周辺部のハリケーン・ミッチ被災者が移住しているグループが受講生となっていた。アドラは彼女たちが受講終了後、ボランティア講師となるためのノート、鉛筆などの支援も行なっており、実際に元受講生が間接的裨益者を増加させるシステムが機能していた。また、プログラムの参加は無料ではなく、自助努力を求めるために講習別に数ドルを徴収していたが、それは各講習の自己回転資金として運用するとのことであった。
 ホンジュラスでは歯科治療が高額のため、貧困層の人々は治療が受けられず、隠れた貧困問題の1つとなっている。しかし、アドラは歯科医療も平日は毎日受け付け、貧困女性に対して1回20レンピーラ(約1.25US$)の治療費だけを徴収し、それを回転資金として運用していた。低額の治療費を提供できるのは、ホンジュラス医大生のソーシャル・サービス制度(1年間のボランティアの医療奉仕義務)を利用していたからであった。
 算数・識字教育については、元受講生が集落に帰ってボランティア講師として活動する際の識字テキスト等はホンジュラス教育省からの支援を受けている。また、料理講習等は貧困女性に限らず誰でも参加できるようにし、富裕階層からは高額の受講料を徴収する事によって不足分の回転資金をまかなっていた。
 これらにより貧困女性の生活環境改善、社会的経済的自立が図られるものと見られ、またプログラム自体が上記のような自己回転システムを持つため、自立発展性も確認できた。
10.提言:
 貧困層の多くが女性であるため、女性の社会的経済的自立はホンジュラスの貧困削減問題にとって極めて重要である。ホンジュラス貧困削減戦略ペーパー(PRSP)や現政権での変革への取り組みにおいても人間開発は重要な課題の一つとされている。本案件が今後、上記戦略、政策に沿った形で都市部はもちろん、地方部へも拡大されることが期待され、本件の経験が活かされるようなフォローアップが必要であると思われる。


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