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ベナン・第二次漁業用資機材整備計画


1.評価対象プロジェクト名: 第二次漁業資機材整備計画

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2. 国  名: ベナン共和国
実施機関名: 農業・畜産・漁業省水産局
3.援助形態:
 無償資金協力(水産無償)/1994年度/3,82億円
4.評価実施機関名:
 在コートジボワール日本国大使館
5.現地調査実施期間:2002年3月8日
6.プロジェクトの分野:水産
7.政策目的又は政策の方向性:零細漁業の開発・振興
8.プロジェクトの目的
(1) 漁民を対象とした漁具、船外機等の生産機材の供与により、海面漁業の動力船による年間漁獲量7,000トンを維持し、更に約700トン漁獲量を増大させると共に、水産関係者の雇用を確保する。
(2) 漁業資源調査・管理の視点から、漁業調査・実験船を供与すると共に、既存の漁業調査・実験船の機能を強化し、沖合の底・浮き魚及び甲殻類資源調査により漁業生産の増大に貢献する。小型ボート(小型FRP船)の供与により内水面での漁業資源調査・監理を強化する。プレハブ建物、訓練機材及び保冷車、技術支援車の供与により漁民の生産性の向上、漁船機関運転・整備技術の向上、漁家婦人グループに対する加工技術の普及、啓蒙を図る。
9.評価結果:
<妥当性>
 要請時、農村開発省は、動物性タンパク質の適正な供給、雇用の促進等を目的とする計画を策定しており、右を受け同省水産局では零細漁業部門の振興による漁業生産量の増大を骨子とした水産振興の計画を遂行していた。本案件は、漁民を対象にした生産資機材供与、管理・指導支援、調査用資機材及び施設の供与による零細漁民開発振興を目的としたものであり、ベナン国家計画に沿った案件となっている。
 わが国のベナンに対する水産分野の援助は、1988年度に漁業機材整備計画、94年度に本件評価案件である第二次漁業用資機材整備計画が実施された。更に技術移転及び案件のフォローアップという観点から、専門家も水産無償とリンクする形で派遣され、供与資機材の効果的な活用に非常に貢献している。
 更に、わが国は水産分野の研修員を現在までに21名受け入れており(水産局長もその1人)、研修参加者の全てが水産局のキーパーソンとして現在勤務している。また、水産無償と専門家派遣との相乗効果により、水産局においては、96年に日本プロジェクト室が組織され、ベナン水産関係部局全体が非常に親日的な雰囲気となっている。このように、わが国との水産分野での友好・協力関係はかなり良好となっており、右は日・ベナン友好関係全般にも無視し得ない影響を与えている。
<目標達成度・成果>
 本案件にて供与された漁民を対象とした漁具、船外機等は販売促進価格(ベナン国民零細漁民組合連合会との合意に基づいた価格)で販売され、右販売資金は見返り資金として積立てられ、船外機、漁網などの生産資機材の再購入等に使用されている。
 本件機材の引渡式は96年6月に行われ、海面漁業(零細規模)による漁獲高(うち、動力船による漁獲高は不明である)は、供与以前の95年の6,344トンから供与後は96年7,290トン、97年10,321トン、98年9,548トンと増加した。また、海面漁業者数は、供与前の94年の3,237名から供与後99年には3,793名と増加している。なお、漁獲量は気象状況にも大きく左右されること、漁業者数に関しては人口増加の影響が考えられること、また船外機の耐用年数は一般的に約3年、漁具の耐用期間は約6~12ヶ月とのことから、これらの数値のみをもって評価することは難しい面があるものの、本件供与品が海面漁業振興に寄与したことは間違いないものと考えられる。
 漁業資源調査にはベナン政府から運行・管理費が一部充てられ、水産局技術者と零細漁民の中から選ばれた船員により行われた。水産局は国民海洋学委員会の協力を得て調査要領を作成し、右に基づき調査が実施された。引き網の漁種サンプル結果としては、イワシ類が74%、サバ類が7.9%、アジ類が7%等の割合が確認された。また、大陸棚にある岩石で覆われた水底や珊瑚礁が豊かな漁場として認知されると共に、商売上重要な底魚の種類も確認される等の結果が得られており、漁獲高の増大にも寄与したものと思われる。更に、漁業資源調査を行うことによって、30名の船員及び6名の船長が養成された。なお、保冷車は調査船で獲得された漁獲物の移送等に有効に活用された。
 小型ボート(小型FRP船)は水産局脇に配置された1隻の調査を行った。右場所は当初の配置予定場所とは異なるが、ベナン最大の湖であるノコウエ湖で禁止漁具を使った漁が後をたたないとの事情により、取り締まり強化のために移設されたとのこと(水産局は大西洋とノコウエ湖を結ぶ天然水路3kmの海側開口部岸に面しており、湖面へのアクセスが便利な位置にある)。禁止漁具は目の小さい網で、稚魚までもが捕獲される。水産局取締官が頻繁に湖上を巡回し、啓蒙活動を行って禁止漁具を使用しないよう呼びかけている。日々の生活に貧窮している漁民には一朝一夕には理解は得られないが、地道な啓蒙活動の結果、徐々に理解が得られ始めている。なお、FRP船及び船外機の状態は良好であった。他のベナン国内に配備されたFRP船については、今回確認できなかったが、ベナン共和国専門家が国内出張した際に確認したところ有効に活用されていたとのことであった。
 研修センターは船外機の維持管理や修理方法、ディーゼル船内機の仕組み、延縄製作等の漁業技術に関する研修、そして零細漁村女性リーダー研修等にも頻繁に活用された。これらの研修活動では、専門家の存在が大きく、第一次漁業機材整備計画については、専門家1名が、また、本件評価案件との関係では別の専門家1名が船体機関保守、漁船整備において活躍し、本件供与機材を活用しつつ、様々な研修や講義そして技術指導を行い、水産局技術系職員の漁船及び船外機の維持管理能力は飛躍的に向上した。また、多くの船外機と船内機の指導者も育成された。2000年10月からは、水産開発アドバイザーとして専門家1名が引き続き第二次漁業資機材整備計画で建設された水産局内のプレハブ建物において執務を行っており、案件のフォローアップにも努めている。
 ベナンに対する漁業分野でのわが国の協力は、前述したとおり、無償、専門家派遣、研修員受入などの成果が有機的に絡み合って効果を生み出している。案件供与以降、水産局より報告書も定期的に提出されており、供与品の販売、在庫、整備等の管理状況も素晴らしい。また、第一次整備計画での調査船ドーファン号が供与後13年以上、本件評価案件での調査船コベ号も供与後6年以上経っても稼動状況は良好であり、かつ多々起こりうる高価な航海計器類等が盗まれるといった例もないこと等の事例により、供与品を非常に大切に使う心が伝わってくると共に、水産局の努力と管理能力の高さを感じることができた。このような受入体制のしっかりしたかつ親日的な水産局に本件案件を供与したことは非常に有効かつ効果的であったと思われる。
10.提言:
 本件で供与された船外機やスペアパーツを売却して得られた見返り資金は、充分積み上がっており、水産局の業務管理能力は高いと評価することができる。しかし右使用状況については、現在まで船外機等の生産機材の再購入等には充てられていたものの残額も多いため、今後積極的な活用が望まれる。
 また、本案件は上述のベナン国家計画に沿って計画されたが、最近のベナン政府の方針では、主に漁業管理及び養殖をはじめとする代替収入をもたらす産業育成に力を入れる傾向が強まっているので、今後の案件実施にあたってはこれらの方針とも充分整合性をとって行う事が必要となってくると思われる。


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