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バングラデシュ
小規模金融(マイクロ・クレジット)
を活用した貧困緩和への支援



1.評価対象プロジェクト名
 (1)マイクロクレジット計画(2)農村開発信用計画

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2. 国名: バングラデシュ
実施機関:
(1) 特定非営利活動法人
「シャプラニール=市民による海外協力の会」
(本邦NGO)
(2) 「グラミン銀行」
3.援助形態:
(1) 草の根無償資金協力 1999年度 7.8百万円
(2) 有償資金協力 1995年度 29.86億円
4.評価実施機関名:在バングラデシュ日本国大使館
5.現地調査実施期間:2002年3月31日~2002年4月1日
6.プロジェクト分野:農業(小規模融資(マイクロ・クレジット))
7.政策目的又は政策の方向性:
 我が国は、農村部と都市部との地域間格差是正や貧困緩和を目的として農村インフラ整備を重点的に援助を実施してきている。貧困率は低下傾向にあるものの、依然として貧困率は高い状態にあることから引続き援助ニーズは大きい。したがって、今後とも農業・農村開発のためのインフラ整備、農業技術の普及、農業研究等により、農業生産性向上を図るとともに、農村における貧困層(特に土地なし農民等)の雇用創出・所得向上を目指す必要がある。
8.プロジェクトの目的:
 貧困緩和は、バングラデシュの最大の開発課題であり、小規模金融(マイクロ・クレジット)は貧困対策における有効な支援策として、グラミン銀行をはじめ、現地で活躍するNGOが実施している。本プロジェクトは、バングラデシュにおけるグラミン銀行による農村開発信用事業、および、現地NGOによるマイクロクレジットプログラムへの融資を通し、土地無し農民を中心とした貧困層への生活改善、また農村における生産活動の活性化と所得の向上、ひいては農村経済全体の成長を目的とする。
9.評価結果:
 貧困緩和はバングラデシュの最大の開発目標であり、その有効な支援策として、現地NGO、グラミン銀行が実施している小規模融資(マイクロ・クレジット)への我が国の支援は、貧困農民の社会開発への参加を促し、農村における生産活動の活性化と所得の向上に大きく貢献したものと評価される。またマイクロ・クレジットの受益者は女性が多く、女性たちは以前より積極的に社会活動に参加し、家庭内での地位の向上に大きな貢献をした。
 マイクロ・クレジットのおもな使途は、「建家」「井戸」「農業」「家畜」「土地」「ビジネス」といった生産的投資であり、家畜の増加、現金収入の増加、住宅環境の改善、生産資産(灌漑用小型ポンプ等)の増加およびビジネス(リキシャや荷車等の運送業、家具、手工業、商業等)への雇用機会が大きく改善された。さらに、マイクロ・クレジットを通じて貧困農民たちの貯蓄への取り組みが促進され、農民による内発的な金融活動が活性化された側面がある。このような、マイクロ・クレジットを使った投資活動は、農村全体の経済の活性化に貢献した。また、融資の返済率も高く、この返済資金をリボルビング・ファンドとし引き続き利用する取り組みもおこなわれるなど、持続性の観点からも評価ができるものと考えられる。
 従って、マイクロ・クレジットは、経済的な機会の改善、社会的な参加(女性のエンパワーメント)の促進に大きく貢献したものと評価される。
10.提言:
<今後のフォローアップ>
 一般論として、全ての貧困農民がマイクロ・クレジットをうまく活用し収入増加につながるわけではなく、また、生産的活動への投資であっても、稲作や牛の肥育など利益を生み出すために時間を要する活動への投資は、利益が発生するまでの間に毎週の返済金を調達できないケースもあり、牛が死んだり品物が盗まれたりといったアクシデントで利益が上がらない場合もある。
 今回調査したシャプラニールのマイクロ・クレジット計画では、利子の低減、初期返済の猶予、牛への保険等、失敗を減らす対策を講じており、これらの対策による効果をフォローアップし、今後のマイクロ・クレジット計画に反映させることが望ましい。
<社会的条件の配慮>
 道路や橋梁のインフラ整備とそれに結びついた市場の活性化が、マイクロ・クレジットの成功の外部条件となっている。農業あるいは、どんなビジネスにおいても、市場と市場を結ぶ道路等は重要であり、経済・社会インフラ整備を併せ支援していくことが不可欠である。
<女性のエンパワメント>
 マイクロ・クレジットにより、女性たちは積極的に社会へ参加する機会が増えたが、女性の参加度はまだまだ低い。特に女性の経済活動への参加の機会は希である。今後、女性の参加をより推進するための支援が望まれる。
<自立性>
 ある程度成熟した村落においては、住民自らがおこなう融資・貯蓄の取り組みの強化が不可欠である。今後、住民の自立を促す取り組みを強める必要がある。


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