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第4章  他の援助国・国際機関の援助動向



4.1 対バングラデシュ援助の概況

1990/91年から1998/99年の間にバングラデシュ国が受取った海外からの援助受取額(実行額)の推移を、図4-1-1および図4-1-2に示す。年平均1,560百万ドルの海外援助がバングラデシュ国に対し供与されている。タイプ別に見ると無償援助と有償援助の割合はほぼ拮抗しており、平均では無償援助47.4%、有償援助52.6%である。1997/98年以降は、有償援助の割合が無償援助を上回っている(図4-1-4)。ちなみに1971年の独立から1999年6月までにバングラデシュ国が受取った援助受取額の累計は、34,757百万ドルであり、そのうち48.2%が無償援助、51.8%が有償援助であった。

図4-1-1 対バングラデシュ援助受取額の推移(タイプ別)

図4-1-1 対バングラデシュ援助受取額の推移(タイプ別)
出典:バングラデシュ国財務省


目的別では、プロジェクト援助が最も多く平均69.4%、次いで商品援助20.5%、食糧援助10.1%の順となっている。バングラデシュ国は食糧自給体制が充分でなく慢性的な食糧不足に悩んでおり、海外からの食糧輸入に頼らざるを得ない状況であった。加えて度重なる洪水・サイクロン等の自然災害や気象条件の悪化による農業生産部門へのダメージもあり、これまで多くのドナーがバングラデシュ国に対して食糧援助を行ってきた。1971~1999年までの食糧援助の累計額は5,831百万ドルであり、累計額全体の16.6%を占めていた。1990年代に入ってバングラデシュ国の食糧自給率の改善に従って、食糧援助の割合も下降傾向にあったが、1998年の大洪水の影響で再び増加した。

商品援助の目的は、(1)バングラデシュ国の国際収支赤字の改善、および(2)供与を受けた商品を国内で売却することにより得られる現地通貨を国内の開発事業資金として利用することである。1971~1999年までの商品援助の累計額は10,089百万ドルであり、累計額全体では29.0%であった。食糧援助と同様に商品援助も1990年代前半から後半にかけて減少傾向にあったが、1998年の大洪水による大きな被害を受けた国内経済の救済のため1998/99年には上昇している。

プロジェクト援助の1971~1999年における受取累計額は18,834百万ドルであり、累計額全体の54.4%を占めていた。

図4-1-2 対バングラデシュ援助受取額の推移(目的別)

図4-1-2 対バングラデシュ援助受取額の推移(目的別)
出典:バングラデシュ国財務省


バングラデシュ国に供与されたプロジェクト援助のセクター別1内訳(1990/91~1998/99年までの累計額)を示したものが図4-1-3である。金額配分が多い順では、(1)運輸交通1,932百万ドル(19.8%)、(2)電力1,481百万ドル(15.2%)、(3)水資源開発1,118百万ドル(11.5%)、(4)教育782百万ドル(8.0%)、(5)住宅・施設、上下水道整備681百万ドル(7.0%)、(6)農業603百万ドル(6.2%)、(7)家族計画582百万ドル(6.0%)、(8)農村・組織開発557百万ドル(5.7%)、(9)石油、ガス、天然資源開発501百万ドル(5.1%)、(10)保健医療408百万ドル(4.2%)などとなっている。

上記セクター別内訳をさらに大まかなグループ分けをすると、経済社会インフラ関連(運輸交通、電力、住宅・施設、上下水道、通信)が全体の44%、続いて社会セクター関連(教育、家族計画、保健医療)が18.2%、農業セクター関連(農業、農村・組織開発)が11.9%である。

図4-1-3 プロジェクト援助のセクター別内訳

図4-1-3 プロジェクト援助のセクター別内訳
出典: バングラデシュ国財務省、なお1990/91~1998/99年のプロジェクト援助受取額の累計額


1990/91~1998/99年までの援助受取累計額(実行額)の、ドナー別割合を整理すると図4-2-1のとおりとなる。

図4-1-4 対バングラデシュ援助受取額に占める各ドナー占有率

図4-1-4 対バングラデシュ援助受取額に占める各ドナー占有率
出典: バングラデシュ国財務省、なお1990/91~1998/99年の対バングラデシュ援助受取額の累計額


受取額で一番多いのは世銀グループで全体の20.8%、次いで順にADB 18.7%、日本18.0%、アメリカ5.1%、UNICEF以外の国連機関4.6%、ドイツ3.8%、欧州連合(EU)3.5%、カナダ3.2%、イギリス2.8%などとなっている。日本は二国間援助においては、第1位の供与額であり、第2位のアメリカの3倍以上の援助規模を誇っている。また世銀、ADB、日本の各占有率は約2割でほぼ並んでおり、上位3者で援助全体の約6割弱を占めている。対バングラデシュ援助の特徴としては、金額面でみると世銀、ADB、日本が3大ドナーとして存在し、次に欧米ドナーおよび国連機関がほぼ均衡した小規模の割合で支援を行っている。以下の表4-1-1は各年の主要ドナー別の援助受取額をまとめたものである。

表4-1-1 主要ドナー別援助受取額(単位:百万ドル)

  1990/91 1991/92 1992/93 1993/94 1994/95 1995/96 1996/97 1997/98 1998/99 総額
世界銀行
(IDA)
333.557
(19.3%)
240.393
(14.9%)
329.639
(19.7%)
378.455
(24.3%)
285.951
(16.4%)
225.635
(15.6%)
313.813
(21.2%)
331.599
(26.5%)
476.965
(31.1%)
2,916.007
(20.8%)
アジア開発銀行
(ADB)
290.096
(16.7%)
421.295
(26.1%)
274.241
(16.4%)
308.447
(19.8%)
336.808
(19.4%)
279.032
(19.3%)
254.887
(17.2%)
240.426
(19.2%)
217.505
(14.2%)
2,622.737
(18.7%)
日本 345.113
(19.9%)
153.002
(9.5%)
264.003
(15.8%)
293.712
(18.8%)
356.533
(20.5%)
331.114
(22.9%)
368.195
(24.9%)
171.910
(13.7%)
235.033
(15.3%)
2,518.615
(18.0%)
アメリカ 102.503
(5.9%)
139.249
(8.6%)
68.704
(4.1%)
107.473
(6.9%)
114.616
(6.6%)
51.269
(3.6%)
35.311
(2.4%)
26.273
(2.1%)
69.388
(4.5%)
714.786
(5.1%)
国際連合
(UNICEF以外)
99.176
(5.7%)
107.868
(6.7%)
71.170
(4.2%)
52.733
(3.4%)
64.381
(3.7%)
37.467
(2.6%)
27.111
(1.8%)
73.981
(5.9%)
118.084
(7.7%)
651.971
(4.6%)
ドイツ 55.253
(3.2%)
85.023
(5.3%)
60.492
(3.6%)
32.517
(2.1%)
111.727
(6.4%)
64.077
(4.4%)
33.847
(2.3%)
48.581
(3.9%)
36.680
(2.4%)
528.197
(3.8%)
欧州連合
(EU)
52.698
(3.0%)
28.279
(1.8%)
47.347
(2.8%)
54.087
(3.5%)
64.295
(3.7%)
90.904
(6.3%)
61.951
(4.2%)
56.824
(4.5%)
39.198
(2.6%)
495.583
(3.5%)
カナダ 112.224
(6.5%)
61.766
(3.8%)
93.475
(5.6%)
31.834
(2.0%)
47.094
(2.7%)
24.847
(1.7%)
30.443
(2.1%)
14.478
(1.2%)
26.844
(1.7%)
443.005
(3.2%)
イギリス 55.032
(3.2%)
58.818
(3.6%)
52.149
(3.1%)
39.167
(2.5%)
53.453
(3.1%)
33.257
(2.3%)
20.607
(1.4%)
34.805
(2.8%)
52.138
(3.4%)
399.426
(2.8%)
国連児童基金
(UNICEF)
7.610
(0.4%)
32.568
(2.0%)
15.169
(0.9%)
11.771
(0.8%)
50.372
(2.9%)
20.875
(1.4%)
60.180
(4.1%)
21.941
(1.8%)
19.207
(1.3%)
239.693
(1.7%)
サウジアラビア 27.351
(1.6%)
46.229
(2.9%)
59.594
(3.6%)
25.304
(1.6%)
18.662
(1.1%)
30.764
(2.1%)
10.077
(0.7%)
13.727
(1.1%)
4.229
(0.3%)
235.937
(1.7%)
デンマーク 33.217
(1.9%)
40.466
(2.5%)
9.575
(0.6%)
22.290
(1.4%)
30.849
(1.8%)
13.627
(0.9%)
22.723
(1.5%)
18.589
(1.5%)s
32.621
(2.1%)
223.957
(1.6%)
ノルウェー 20.204
(1.2%)
26.540
(1.6%)
34.538
(2.1%)
33.522
(2.2%)
34.065
(2.0%)
29.818
(2.1%)
16.724
(1.1%)
18.677
(1.5%)
9.547
(0.6%)
223.635
(1.6%)
スウェーデン 21.850
(1.3%)
25.481
(1.6%)
43.548
(2.6%)
19.170
(1.2%)
12.651
(0.7%)
5.158
(0.4%)
22.077
(1.5%)
26.507
(2.1%)
22.195
(1.4%)
198.637
(1.4%)
フランス 22.871
(1.3%)
28.297
(1.8%)
17.032
(1.0%)
20.306
(1.3%)
30.330
(1.7%)
9.730
(0.7%)
27.048
(1.8%)
31.150
(2.5%)
10.733
(0.7%)
197.497
(1.4%)
イスラム開発銀行
(ISDB)
13.353
(0.8%)
3.158
(0.2%)
9.320
(0.6%)
8.493
(0.5%)
5.949
(0.3%)
11.026
(0.8%)
19.356
(1.3%)
14.339
(1.1%)
12.282
(0.8%)
97.276
(0.7%)
国際農業開発基金
(IFAD)
7.444
(0.4%)
23.149
(1.4%)
8.848
(0.5%)
5.541
(0.4%)
7.511
(0.4%)
6.171
(0.4%)
9.265
(0.6%)
12.905
(1.0%)
10.903
(0.7%)
91.737
(0.7%)
石油輸出国機構
(OPEC)
10.925
(0.6%)
2.872
(0.2%)
3.578
(0.2%)
2.507
(0.2%)
5.649
(0.3%)
15.916
(1.1%)
17.455
(1.2%)
10.799
(0.9%)
3.497
(0.2%)
73.198
(0.5%)
その他ドナー 122.098
(7.0%)
87.015
(5.4%)
212.586
(12.7%)
111.314
(7.1%)
108.195
(6.2%)
163.063
(11.3%)
130.160
(8.8%)
83.862
(6.7%)
139.008
(9.0%)
1,157.301
(8.2%)
総額(10年間) 1,732.575 1,611.468 1,675.008 1,558.643 1,739.091 1,443.750 1,481.230 1,251.373 1,536.057 14,029.195
出典: 財務省、なお括弧内は総額に対する各ドナーの受取実行額の割合を示す。



1 ここでは、バングラデシュ国開発計画書のセクター分類に沿って整理した。




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