広報・資料 報告書・資料



III フィリピン現地調査

III-3 LRT1号線増強事業(フェーズ2)(222億円、2000年4月7日借款契約)

III-3-1 事業の内容

この事業は1984年にベルギーの援助により整備され、運行を始めたLRT1号線(全長15.4km)の輸送力を、現行の1時間あたり27,000人(増強事業フェーズ1終了時)から1時間あたり40,000人に、ピーク時の運行1時間あたり24本から1時間あたり32本に増強することを目的に実施されている。具体的には信号・通信システムの改良、駅施設の改良、車庫の改良などを行う。1996年から98年までの間、円借款によって増強事業フェーズ1(新車両の導入など)が実施されていた。

メトロマニラでは現在2号線が日本の円借款により建設中であり(1号線との交差は1ヵ所)、また、3号線が運行を開始している(1号線との交差は現在1ヵ所、将来2ヵ所)。現在のピーク時の利用者数1時間あたり35,000人であるが、2号線、3号線の整備によって1号線の利用者もさらに増加すると考えられる。

この事業は特別円借款案件として実施されており、本体部分は金利1パーセント、返済期間40年(うち据置期間10年)で、総事業費の85パーセントまで円借款で借りることができる。しかし、主契約者は日本企業(1次下請は2国間タイド、2次下請は一般アンタイド)、円借款部分で購入される資機材・サービスのうち50パーセント以上は日本調達でなければいけない。

III-3-2 事業実施機関へのインタビュー

事業を実施しているLRTA(Light Rail Transit Authority)へのインタビュー結果は以下のとおりである。

  • LRT1号線増強事業(フェーズ2)は2002年2月にコンサルタントの業務が始まったところである。1996年から1998年まで増強事業(フェーズ1)を実施しており、フェーズ2の開始と特別円借款が同時期に決定されたために、このスキームを利用することになった
  • 特別円借款に関する情報はNEDAと日本大使館から十分に提供された。特別円借款の申請から実施までの時間は、要請が随時受け付けられているためにフェーズ1よりも早くなっている。フェーズ1で円借款を活用した経験があるので、スムーズに事業実施に繋げることができたと考えている
  • 投資計画やドナーへの支援を検討するNEDAや投資調整委員会(ICC5)で他の分野の要請と選別されることはなかった。しかし、フィリピン側の負担分を確実に支出できるかどうかのチェックがあった
  • これから発生が予想される問題は、原産地ルール「円借款により調達される全ての資機材・サービスのうち日本からの調達部分は、全体で50パーセント超」に関することである。例えば電車など組立機械の調達を考えた場合、部品は海外のものが使われている可能性があり、日本調達をどのように考えるかを明らかにしなければいけない。現在の特別円借款のガイドラインは日本調達について詳細に定義していない

5 ICC(Investment Coordination Committee)は内閣の下に設置された委員会で、投資事業の実施スケジュールやその資金調達先などを大統領に提言する機関である。




このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る