II-3 経済復興・社会セクター・プログラム・ローン(300億円、1999年3月12日借款契約)
II-3-1 事業の内容・効果
タイ政府は、IMFへのLetter of Intent(1998年12月)で公共支出を増加させる計画(GDPの1パーセント程度)を表明した。この公共支出増は全て借り入れによって実現することを想定していた。それに対し、旧OECFが300億円(約2億5000万ドル)、世界銀行が6億ドル、旧日本輸出入銀行が6億ドルの資金援助を行った。
この借款は、円資金を国際赤字の改善に利用し、円資金によって発生する見返り資金を雇用創出効果の高い労働集約的な公共事業の実施に用いたものである。借款額のうち約1.2パーセントはコンサルタントの調達(タイのコンサルタントを雇用)に用いられた。2001年9月までに見返り資金によるプロジェクトは全て終了した。
公共投資増は以下の4つのプログラムからなる。円借款ではこの4プログラムの20事業を実施した。
この公共支出増の事業評価をタイ企業が実施している。その報告書によれば、増額約540億バーツ(うちセクターローン部分は93億バーツ)の支出によって、1999年と2000年のGDPが、それぞれ0.8-0.9パーセント、0.3-0.5パーセント押し上げられたと推定されている。また、年間8万人相当の熟練労働者の雇用、年間37万人相当の非熟練労働者雇用を発生させた。その他にも、40万人の高齢者への生活費、44万人の子供の給食、96万人分の学校の制服などを支給することができた。
また、事業評価で実施されたオピニオン調査によれば、雇用機会の創出、所得の増加、社会的弱者への支援、インフラの整備に対する満足度が高かった。
II-3-2 現地踏査
現地踏査では生活の質改善プログラムの貧困緩和プロジェクトを訪問した。このプロジェクトは貧困村(村民全体の30パーセント以上が年収15,000バーツ(4万円程度)以下)の村民に対し無利子で資金を供与し、1年で返済するものである。内務省地方開発局が事業実施機関である。
この事業は、1993年より1996年までタイ政府が自己資金で実施していた事業のフェーズ2に位置付けられている。計画段階では28,000村を対象にしていたが、アジア通貨危機のためにタイ政府の資金が枯渇し、この円借款の資金を利用して4000村を対象に実施することとなった。
事業は、対象村に対して29万バーツを配分し、うち1万バーツで3日間の講習会を行った。次に、村民から構成される委員会が資金を管理し、個別融資の要請内容の審査を行った。実施状況の支援、監理は内務省地方開発局が行った。
現地踏査を行ったパヤオ県メージャイ郡では、実際に貸付を受けた農民にインタビューを行い、彼らの事業を視察した。以下にこの村での事業の進められ方と農民の意見について記す。