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II タイ現地調査結果

II-1 支援の全貌

II-1-1 支援の実績

タイに対する日本の支援は、2つに分類できる。第1の支援は、短期的な経済の不安定性(経済状況の悪化、タイ政府の流動性の不足)を克服するための支援であり、以下を挙げることができる。

  • 緊急無償(対日留学生派遣支援)(1億円、タイ政府が実施していた留学生派遣事業を資金面で支援)
  • 既往案件内貨融資事業(364億円、1998年7月31日に借款契約、すでに実施されている円借款事業4件におけるタイ政府の負担の一部分を日本側で負担)
  • 社会投資事業(134億、1998年7月31日借款契約、事業の詳細は後述)
  • ノン・プロジェクト無償(20億円、1998年7月3日に交換公文、ノン・プロジェクト無償は世銀やIMFの構造調整計画を実施する途上国に対して供与するもの、この無償資金協力では、供与品のエンドユーザーはタイ政府省庁、公立病院で、供与品の大半は医療機器、見返資金は各省庁、公立病院で医薬品の購入など使用に使用
  • 経済復興・社会セクター・プログラム・ローン(300億円、1999年3月12日借款契約、事業の詳細は後述)
  • 農業セクターローン(360億円、1999年9月29日借款契約、ADBと協調融資を行う部門別構造調整融資借款、見返資金は農業セクター構造調整計画の実行のために使用、これまでに50パーセントの支払いを完了

第2の支援は、タイ経済の中長期的な確実な経済成長を支えるものである。具体的には、産業競争力を高めるための技術協力や通常の円借款からなる。また、2つのツーステップローン事業では、JICA専門家との連携した支援が計画された。

  • 中小企業振興策のためのJICA専門家派遣(1999年1月から7月、中小企業振興法の制定に貢献)
  • 産業競争力強化、家内工業振興、ガバナンス向上のための研修事業
  • 通常の円借款(第23次年次供与(通常分)7件677億円1998年9月30日借款契約、第24次年次供与5件1,157億円1999年9月29日借款契約)
また、特別円借款に関して、タイ政府から日本政府への要請は行われていない。

II-1-2 日本・タイ関係者へのインタビュー

タイでは日本の援助の窓口となる国家経済社会開発委員会(NESDB、国家プロジェクトの実施の決定に関与)、大蔵省(MOF、円借款事業の決定や実行に関与)、首相府技術経済協力局(DTEC、技術協力の決定に関与、また、援助の評価も行う)に対してインタビューを行った。その結果は以下のとおりである。

タイ政府側の評価は、2つの円借款事業(社会投資事業、経済復興・社会開発セクターローン)に偏っている。その理由は、金額や効果の大きさ、結果が短期で現れること、目に見えやすいことなどが影響していると考えられる。

  • 日本の支援を高く評価している。特にJBICの円借款案件(社会投資事業、経済復興・社会開発セクター・プログラム・ローン)はタイ政府の資金が不足する中で公共投資増加計画の資金を補填し、雇用の確保と景気悪化を食い止めることに貢献した(NESDB、MOF、DTEC)
  • アジア通貨危機支援に対する日本の支援は大変素早いものであった。要請から事業の開始までに時間がかかったものもあるが、それらはタイ政府側に原因がある(MOF)
  • 社会投資事業、経済復興・社会開発セクター・プログラム・ローンによって整備されたインフラが十分に利用されていないケースもある(MOF)
  • 特別円借款を申請しない理由は、特別円借款は限られた競争者により入札価格が上がり、低金利・長期返済期間以上のコストを発生させること、タイ企業を利用したいタイ政府の政策に反すること、タイ政府が公的債務を増やしたくないことなど様々である(NESDB、MOF)
  • アジア通貨危機支援として円借款だけでなく、無償資金協力、技術援助などあらゆる手段を実行した(日本側関係者)
  • タイ政府が実施した公共支出増加策によって数千の小規模プロジェクトが実施されたが、このようなプロジェクトが全て「ミヤザワプロジェクト」呼ばれ、この名前が広く知られることとなった(日本側関係者)


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