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7 結論と提言

7.2 経済危機に対する支援のあり方

インドネシアとタイで実施されたプログラム借款が成功した背景には、日本がこれまでこれらの国の援助に深く関わってきたことを挙げることができる。インドネシアでは以前から、道路、灌漑、住環境インフラ、保健分野のセクター・プログラム・ローンや地方インフラ整備など、同様のスキームを用いた円借款事業が行われおり、政府やコンサルタントに事業を発掘・選別・実施監理するノウハウが蓄積されていた。また、タイではタイ政府が自らの手で社会的弱者支援事業や地方インフラ整備事業を行い、政府内に事業実施体制・実施方法が確立していた。日本のプログラム借款を実施する際にも、これらの事業実施体制やノウハウがそのまま活用することができ、これが事業の素早い実行とスピードと柔軟性につながった。

経済のグローバル化や金融の自由化が世界的規模で進んだ現在、アジア通貨危機に類似した経済危機はこれからも発生する可能性がある。その時、経済の安定化を回復するために実施する、足が速く柔軟性が高い支援は、日本が普段から援助において重要な役割を果たしている国(例えば政策対話を行っていたり、その国がどのような開発を行っているか熟知したりする国)に実施して初めて有効なものになる。従って、これらの国に対する調査研究や政策対話を継続していくことが、経済危機への素早く柔軟性の高い支援につながることとなる。逆に、日本が援助において重要な役割を果たしておらず、調査研究や政策対話に資源をそれほど投入できない国に対しては、その国の経済危機に対して日本が素早く柔軟性の高い支援を行うことは困難である。このような国に対しては、日本が直接経済安定化のための支援を行うのではなく、世界銀行などの国際機関を通じた支援を行うことが適切である。

一方、経済成長軌道の回復・上昇のための支援はいずれも実施中であり、この評価の中ではその効果や経済へのインパクトについて分析することはできなかった。これらの支援についても事業が完成し、運用が始まるにつれて個々に事業評価が行われると思われるが、それらの評価を行う際に、「最終的に被支援国の経済成長軌道の回復や上昇に貢献したか」という視点を加えること、また、これらの支援の組み合わせが最終的に被支援国の経済成長軌道の回復や上昇に貢献できたかどうか評価することを提案したい。



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