本章ではフィリピンのアジア通貨危機による影響を確認した後、支援スキームの組み合わせ、世界銀行・アジア開発銀行の支援と日本の支援の役割分担、個別事業の国別援助方針における位置付け、フィリピン政府関係者の意見などを分析する。最後に、政策に基づいて実施された個別の支援がどのように進捗したか確認する。
フィリピンは、インドネシア、タイに比較すると経済の不安定化は限られたものであった。1998年の実質GDP成長率はマイナス0.5パーセントとインドネシア、タイに比べてはるかに小さい水準であった。しかしアジア通貨危機後のGDP成長率は3パーセント台であり、アジア通貨危機前の4パーセントから5パーセント台の水準より低下している。
一方で、フィリピンは、インドネシア、タイのような「東アジアの奇跡」の時代を経験せず、また、失業率が7パーセント台から9パーセント台と、他の2国よりもはるかに高い水準に位置し、中長期的な経済成長軌道をいかに上昇させるかがこれからのフィリピン経済の課題である。