実質GDPの変化を見ると、インドネシア、タイでは通貨危機が経済に与えた影響が大きく、経済的安定を取り戻すこと、具体的には雇用を確保することと社会的弱者の生活を守ることが大きな課題であった。一方、フィリピンは通貨危機が経済に与えた影響は2国ほど大きくはなかったが、慢性的に高い失業率を記録していることと他の2国よりも経済成長率が低いことを踏まえた、中長期の経済成長軌道の上昇を目指した支援が必要であった。
3ヵ国の共通点はアジア通貨危機後の経済成長率が通貨危機前よりも低い水準で低迷していることである。タイはすでに2000年末には短期的な経済不安定の状態を脱し、インドネシアも2002年の現地調査実施時には短期的な経済困難を克服したと考えられるが、実質GDP成長率はアジア通貨危機前のほぼ半分に水準に低迷している。また、フィリピンはもともと2国に比べてGDP成長率の水準は低く、失業率の低下や貧困問題の解消が課題である。中国がアジア経済におけるプレゼンスを急速に高め、同国への海外直接投資が集中する困難な国際環境の中で、3国とも経済発展軌道を回復・上昇させることが求められている。