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2 アジア通貨危機支援の全体像

2.3 新宮沢構想

2.3.1 支援理念・制度内容

1998年10月、通貨危機に見舞われたアジア諸国の経済困難の克服を支援し、国際金融資本市場の安定化を図るための政策(新宮沢構想)が表明された。これには、

  • 実体経済回復のための中長期の資金支援(円借款・輸銀融資等150億ドル)
  • 経済改革過程の短期資金需要に備える短期の資金支援(150億ドル)
の2本立ての資金支援を準備すると同時に、別枠として保証・利子補給等のためのアジア通貨危機支援基金(約30億ドル)をアジア開発銀行に創設したものである。

中長期の資金支援フレーム

アジア諸国における資金需要としては以下を想定している。

  • 民間企業債務等のリストラ策および金融システム安定化
  • 健全化対策
  • 社会的弱者対策(ソーシャル・セーフティ・ネットの拡充・強化)
  • 景気対策(雇用促進的な公共事業の推進等)
  • 貸し渋り対策(貿易金融の円滑化支援、中小企業支援)

これら資金需要に対する支援の方法として以下を準備した。

  • 日本からの直接的な公的資金協力による支援(旧輸銀融資、円借款の供与等
  • アジア諸国が国際金融資本市場から円滑に資金調達できるようにするための支援(保証機能の活用、利子補給)
  • 国際開発金融機関との協調による資金支援
  • 技術支援(金融部門や中小企業の強化のための専門家派遣・研修員受入・現地研修など)

短期資金支援

アジア諸国が経済改革を着実に推進する過程で、貿易金融円滑化等の短期の資金需要が生じた場合に備え、スワップ等を用いた総額150億ドルの短期資金を用意した。

2.3.2 実績

2000年2月2日現在、総額、210億ドルの資金支援が表明・決定されており、保証分約23億ドルと合わせて約233億ドルの資金供給がなされることになっている。

資金支援210億ドルの実績内容のうちODAに含まれる中長期の資金支援は表2-2に示すとおりである。中長期の資金支援分が135億ドル、短期の資金支援分が75億ドルと、64パーセントが中長期的資金需要への対応であった。

表 2-2 新宮沢構想のうち中長期資金支援の進捗状況

  国際協力銀行(国際金融等勘定)*1 国際協力銀行(海外経済協力勘定)*2
インドネシア ・IMFの拡大信用供与措置との並行融資10億ドル相当円程度
・電力部門改革プログラム・ローン(ADB協融)4億ドル相当円程度
・政策改革支援プログラム・ローン(世界銀行協融)1億ドル相当円程度
・ソーシャル・セーフティ・ネット借款452億円(3.8億ドル程度)
・保健・栄養セクター開発プログラム・ローン(ADB協融)3億ドル相当円程度
・ソーシャル・セーフティ・ネット調整借款(世界銀行協融)6億ドル相当円程度
韓国 ・アンタイドローン23.5億ドル相当円程度
・韓国産業銀行向けツーステップローン10億ドル相当円程度
 
マレイシア ・輸出産業支援ツーステップローン5億ドル相当円程度
・マレーシアインフラ開発銀行向けツーステップローン480億円(4億ドル程度)
・円借款7案件1,141億円(9.5億ドル程度)
フィリピン ・電力部門改革プログラム・ローン(ADB協融)3億ドル相当円程度
・銀行システム改革プロジェクトローン(世界銀行協融)3億ドル相当円程度
・フィリピン開発銀行を通じた民間部門育成ツーステップローン5億ドル相当円程度
・メトロマニラ大気汚染改善プログラム・ローン(ADB協融)3億ドル相当円程度
・円借款13案件1,357億円(11億ドル程度)
タイ ・経済金融構造改革融資(世界銀行協融)最大6億ドル相当円程度
・製造業支援ツーステップローン7.5億ドル相当円程度
・経済復興&社会セクター・プログラム・ローン2.5億ドル相当円程度
・農業セクター・プログラム・ローン(ADB協融)3.0億ドル相当円程度
・円借款5案件1,158億円(9.7億ドル程度)
合計 82.0億ドル 53.0億ドル
135.0億ドル
注:2000年2月2日現在の値
*1 旧日本輸出入銀行による支援。ODAには含まれない
*2 旧海外経済協力基金(OECF)による支援。ODAに含まれる
*3 調査チームが調べたところ、実際には実施されていない
出典:財務省ウェブサイト(http://www.mof.go.jp/daijin/1e041a.htm)


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